幼馴染と匂いフェチ

 ※ラストの話を分けるのが難しかったので一つに纏めました。なので少し長めです




「ど、どうして?」

「カノンがいないからな」

「!」


 それを聞いた瞬間、沸騰したように真っ赤になるカノン。顔は茹でタコのようだ。そんなカレンを見て翔太は笑いながら口を開く。


「助っ人で頑張ってるお前をほったらかして……遊びになんて行けねえよ」


 少し照れくさかったのか目を逸らした翔太のその言葉に嬉しさを感じるも、罪悪感も湧いていた。


「その、実は……」

「今日の助っ人、行かなかったろ?」

「!」

「お見通しだ、そして俺に嘘を二回ついたこともな」

「……」


 バレていた。

 人は嘘は一度つくと、真実を隠そうと別の嘘をつく。そうやって嘘まみれになった者の末路は酷いものだ。それを知っていたカノンは顔を再び翔太の胸に埋める

 翔太はカノンに違和感を感じ、嘘を見抜いていた事を明かした。


「でもそれは翔太が悪い!」

「なんだよそれ……」

「あたしの夢に出てきて、昼間に他の子と話して……私を不安にさせてばかり!」

「……」


 言っている事が支離滅裂なカレンに苦笑しつつも話を聞く翔太に、カノンは顔を向けた。


「これから言う事を守ってくれないと口聞かないから!」

「んな横暴な……」

「いいから!」

「はいはい、言ってみな……」


 ゆっくりと深呼吸してカノンは告げる


「常にあたしのことを考えなさい」

「……」

「常にあたしを優先しなさい」

「……」

「常にあたしの……側にいなさい」

「……」

「困っているあたしを……必ず助けに来なさい!」

「……」

「以上の四つの約束を必ず守りない!」

「多っ!」

「うるさい、答えは?」


 上目遣いで心配そうにカノンは問う。自分でもわかるくらい無理難題を押し付けているが、これが通らなければ安心できないカノン。

 そんな告白紛いのことを言われた翔太は顔を赤くし、ぽりぽりと頬をかいてまたも視線を逸らして答える。


「……わかったよ」


 それを聞いたカノンはやっと笑顔を見せる。いくら翔太でもこんな約束結んでくれないと思っていた。やはり翔太は自分を大切に思ってくれていると確信したカノンは今日一番のとびっきりの笑顔を翔太に向けた。

 その顔をみた翔太は更に顔が赤くなるが、冷静を装ってカノンに聞く。


「やっと元気になったか」

「翔太が機嫌悪くさせた」

「はいはい」

「何その反応!」

「いいから帰るぞ、みんな心配してる」

「……うん」


 時刻は九時をまわっている。早く戻らなければお母さんが警察に連絡を入れて大事になるかもしれない。そう思い二人は公園をでた。

 並んで帰っている途中で翔太がそわそわしながら聞いてきた。


「今日はその……嗅がないのな」

「!」


 それは反則だ。いつもは絶対にそんな事は言わないくせに、今このタイミングでそれはかなり効いた。そう思ったカノンは翔太にまたも約束を増やした。


「も、もう一つ約束追加!」

「え?」

「翔太は自分の匂いを他の女子に嗅がせないようにする!」

「いや無理だろ、それは俺の意思だけでどうこうできる話じゃない!」

「聞き分けが悪いとジップロックに入れてあたしの部屋に保存するよ?」

「怖っ、メンヘラじゃねぇか!」

「め……メンヘラじゃなああああい!」


 今の発言に走り出した翔太を慌てて追いかけ捕まえるカノン。

 声を大にして否定するが、その手は翔太を掴み、汗で湿っている服を顔に近づけていた。お望み通りに嗅いでやると言わんばかりにカノンは激しく嗅いた。


「やめろ、くそ……こんなになるなら言わなきゃよかった!」

「ンフー! やっぱりコレ最高だぁ……」


 ドリップしてしまったカノンは、いつものクールさなど微塵も感じさせない残念な娘に豹変した。


(やっぱり今回も来てくれた、ありがとう翔太……大好きだよ)


 苦しい時に一番に見つけてくれる翔太をカノンは王子様のように感じた。今回の件で翔太の様々な気持ちが少し解り、更に深い関係になれたカノンはその幸せを噛み締めていた。

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