夜の公園と女の子


 街灯の無い公園のブランコでカノンは腰掛けていた。悲しい事があったり、悩みがあったりするとカノンは昔からこの公園でブランコに揺られにくる。

 未だに昼の事が気になっていた。


「お母さんからのメールいっぱいだ……」


 スマホを見ると気づけば夜の八時で、母親からは大量のメールが来ていたが、今は一人で居たかった。


「お母さん、心配してるだろうな」


 そう思いつつも、昼の一件が頭から離れずブランコから立ち上がれなかった。

 空を見ると雲が薄くかかる中、星が一つ輝いていた。しかしその輝きは誰にも気づかれないような弱々しい光。それはまるで雲に隠れ、一人になりたいといっているかのようだった。

 その星に自分を重ねるように、カノンは夜の闇に身を潜ます。


「お昼のこと教えてよ……あの子との関係を説明してよ……翔太」


 静寂に包まれた公園で、そこにはいない幼馴染に問いかける。当然だが、答えは帰ってこなかった。

 そこで初めて孤独が辛いことに気がつく。


「会いたい……」


――自身の肩を抱き、ポツリと呟く。


「会いたいよ……」


 ――ほろほろと涙を流して。


「会いたいよ……翔太ぁ」


 次第にそれは嗚咽に変わった。今すぐ会って話がしたい。この不安を翔太に溶かしてほしい。

 涙は止まらず真っ暗な公園にカノンの声が響いていた。


「翔太ぁ……翔太ぁ!」


 いつも隣に居た子。

 どんな時も側にいた男の子。

 小さい頃はよくこの公園で一緒に遊んだあの子。

 高校生になってからは口癖が悪化したあの人。

 そして…私が困ってる時に必ず来てくれる人。その想い人の名を呼ぶと、公園の入り口から声がした。


「見つけたぞ……カノン」

「!」

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