潜入
「zzz」
(良かった、寝てる)
窓の横にベットがあるので寝ている翔太にバレぬよう跨いで部屋に入る。
大体の翔太の動きは予測が立つ為、就寝するタイミング狙ってきたが上手くいったようだ。
(後は洗濯カゴに戻すだけね)
佐藤家の住人が全員寝ているからか、生活音が一切していない。
音という音を全て消して階段を降りる。
途中で優華や翔太の父親が寝ている部屋前を通る時は、緊張し過ぎて足音が出てしまったが、眠りが深い為か二人は起きなかった。
脱衣所に下着を置いて一息ついたら翔太の部屋まで来た道を戻る。
「zzz」
(寝てる翔太可愛いなぁ……)
寝顔を見て恍惚するカノンだが、そろそろ戻らなければと思い足を動かす。
ぐっすり寝っている翔太の上を通り、自室に戻ろうとする瞬間にそれは鼻先を通った。
「!」
それを嗅いだ瞬間に足が止まった。身体は急速に火照りだし、興奮し始める。生翔太の匂いに脳が訴えかけてくる。
嗅けと、今すぐ摂取しろと。
「ごくっ……」
寝てる翔太を見て生唾を飲み込む。先ほどまで濃厚な翔太エネルギーを堪能していた筈だが、身体はまだそれを要求している。
天下取っても二合半ということわざがある
あまり欲張るなという戒めの言葉で、今まさにその状況に相応しい言葉だ。
(ああ……どうすれば)
身体も脳も欲に支配された状態で、今は理性で抑えているところだ。
理性を手放せば三つの心は一つとなり、闇カノンが目の前の少年を襲うであろう。
それだけは絶対に阻止しなければないない
悶絶していたら、目の前に羽の生えた超自然的存在が現れた。
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