祈り

「ふぅ……」


 お風呂からあがって髪を乾かす。

 周りの女の子達よりは決して長くないその髪を、丁寧に拭いた後に寝間着に着替えて自室に入る。

 あとは寝るだけの状態にして先ほど拝借したお宝を部屋のテーブルに置き、祈りを捧げ始めた。


「父よ、あなたの慈しみに感謝して、この食事パンツをいただきます。ここに用意されたものを祝福し、私たちの心と体を支える糧としてください。アーメン」


 目の前で十字を切り、カノンは下着の匂いを嗅ぎ始めた。


「匂い濃度……75%、少し品質が落ちている……」


 様々な翔太の匂いを嗅いだ結果、カノンは目視したものの匂いを測定できる特殊能力が身についた。

 結果を見ると品質はまあまあと出た。おそらく時間を置きすぎたために、本体から離れた下着の匂いが外に漏れたのだろう。


「でも、これしゅごい……翔太と、お……男の人の匂いがする。父なる神に感謝を……」


 勝手に持ち帰ったお宝に恍惚しつつ再び神に感謝を捧げる。偶に本体から直接嗅ぐことはあるが、この特に濃い匂いの発生源には絶対に近づく事が出来ない。

 初体験をしたカノンの身体はかなり熱を帯びていた。


「んはぁ……もうそろそろかな」


 ある程度時間が経ったので、カノンは時計を確認した。気づけば時刻は二十三時、時間も頃合いなので下着を返却する為に窓を開けて、翔太の部屋に侵入すべく屋根を足を乗せて外に出る。


「この感じなんか久々」


 小さい頃お互いの部屋に行き来する手段として屋根伝いを覚えた。なるべく音を殺し、翔太の部屋の窓を開けて中に入った。

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