帰宅

「優華さん今日はありがとうございました、ご馳走様です」

「お粗末様でした、食事はみんなでした方が楽しいものだからね、翔太送ってあげなさい」

「わかった」


 階段を降りて帰り際に優華に挨拶をするカノン。すると自宅前まで付いていくように優華が翔太に指示する。

 直ぐ隣だが時間も遅い為、防犯も兼ねて翔太に送ってもらうことにした。


「今日は誘ってくれありがとね」

「母さんも言ってただろ、食事は人数が多いと楽しいものだ」

「うん、そうだね」

「おう」


 放課後にあんな事があったのにも関わらず、夕食に誘ってくれる翔太にカノンは感謝する。


(やっぱり優しいなぁ……)


「それじゃあおやすみ」

「うん、おやすみ」




 翔太に別れを告げカノンは自宅に入ると、またもや恵美が玄関元に居た。


「ただいま」

「おかえり、翔ちゃんとの食事は楽しかった〜?」

「……まあ」

「ほんっと素直じゃないわね、土産話でも無い訳?」

「頑固で結構です」

「この調子だと他の子に取られるのも時間の問題ね」

「……」


 それは嫌だ。翔太の隣にあたし以外がいると想像すると、なんだか悲しい気持ちになる。

 だから今でも一緒にいられる時間は極力共にして、他の女の子を近づけないように動いているのだ。


「でもまあ今日の顔を見る感じ、何かいいことでもあったみたいね?」

「え、うん……」


 今日は翔太の濃厚な体臭を嗅いだお陰でとても気分が良い。

 更に勝手に持って帰ってしまったとはいえお宝もある。後で返すつもりだが一度だけ堪能する予定だ。

 至高の一品である事は間違いないので後のことを考えると自然と口角が上がっていた。


「それよりも、お風呂沸いてる?」

「沸いてるから入っちゃいなさい」

「ありがと」


 学校が終わってから時間がかなり経っていた。興奮して少し汗もかいたので、早くお風呂に入りたい。

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