夕食
「美味しいです、優華さん」
「お口にあってなによりよ」
翔太がシャワーから戻り、三人で食卓を囲む。今日は翔太の父親は残業で帰りが遅いらしいので、先に頂くことになった。
佐藤家のすき焼きの割り下は少し甘めで、とても好みの味だ。牛肉は勿論美味しいが白滝や椎茸、それに少しクタクタになった長葱も見逃せない。
カノンが来ると聞いた優華は腕に縒りを掛けた料理を振る舞ってくれた。
「牛肉が違うと結構味変わるのな」
「それはそうよ、今度おじさんに会ったらお礼言うのよ?」
「わかってる、これで明日からは学業に専念できそうだ」
「家で勉強してる姿なんて見たことないけど?」
二人の会話を聞きながら食事しているカノンだが、そんなことよりもポケットの翔太の下着に意識が向かう……実はまだ下着は嗅いでいない。
おそらく匂いの濃度が最も高いであろう部分のそれを、カノンは最後に嗅ぐと決めていた。昔から好きな物は最後に食べる派の人間で、その影響か今回もその癖がでた。
(でもこれじゃあ泥棒だよね…どこかのタイミングで戻さないと)
考え事をしていると翔太が声を掛けてきた。
「どうした、何か苦手なものが入ってたか?」
「ううん、ただちょっと考え事してただけ」
「何かあれば直ぐ言ってちょうだいね?」
「はい、ありがとうございます」
二人に心配されるが、夕食に問題など何一つない。寧ろ翔太に誘われた事にとても感謝している
こんなに美味しい物を共に共有させてくれる二人には感謝しきれないのだが……今はその事よりも翔太の下着の事で悩んでいた。
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