第7話 6人目 男子高校生 影山茂 異世界人を妹にする
最初の1週間は夢のようだった、と影山茂は思い出す。
非モテ、陰キャ、童貞という彼が転生すると、美少女の妹がふたりもできた。正確には異世界人のメンターである。
ちゃんと彼の趣味を反映して、ひとりはひたすらかわいく、ひとりは眼鏡のツンデレだった。彼女らの話は正直よくわからないし、おもしろくはなかったが、かわいい妹が話しているだけで幸福な気分になれた。
「なんで妹なんです?」
「多様性確保のための実験のひとつです。あなたの感情をより強く刺激する容姿にしてみました」
方法はわからないが、自分の好みがばれているということだ。エロゲやエロ動画の好みもばれているのかと思うと恥ずかしい。もしかして、この妹とそういうことができる?
生活は保障されているし、なんでも好きなことをしてよいという話だったので、3日目で茂は思いきってさりげなく妹の手を握ってみた。妹が茂のリクエストに応えて日本からマンガを取り寄せてくれた時のことだ。
「ありがとう!」
と感激しているふりをして手を握った。顔が真っ赤になって、心臓が'破裂しそうなくらいドキドキした。
「なるほど」
手を握られていない方、眼鏡の妹がうなずいたので、茂は見透かされたと思ってはっとした。
「したいことをしてかまわないですよ」
手を握っている妹が茂の目をじっと見た。
「え? なに言ってんの?」
抱きしめてめちゃくちゃにしたいが、相手は高度な知能を持つ異世界人だ。そんなことできない。
「セックスしたいんですよね? 私たちはかまいませんよ、お兄ちゃん」
妹たちは茂のことをお兄ちゃんと呼ぶ。おそらく茂の感情がそれで激しく反応することも調査済みなのだろう。
茂は数日間、妹たちを帰さず、部屋でずっとイチャラブセックスを繰り返していた。反応が薄いのが気になるが、それも教えるとぎこちなく声を出したり、抱きついたりしてくれるようになって改善されてきた。
「今さらだけど、妊娠しないのか? 科学力でどうにかしちゃってるの?」
ある日、茂はずっと疑問に思っていたことを訊いてみた。それまでは中出し禁止にされるのが嫌で訊いていなかったのだ。
「私たちに生殖機能はありません。あなたにも」
「あなた? オレのこと?」
「転生の際に100人全員生殖機能を除去しました。あなたがたの言葉で言うと去勢しました」
「なんで?」
「勝手に繁殖されては困ります。私たちは100人の枠しか受け入れません。現在は自殺した者の分は追加で受け入れられます。その際は全員の遺伝子情報をコピーしてありますので、そこから合成して製造できます」
「はあ?」
驚いたが、まあ言わば動物園の動物あるいはペットのようなものだから、仕方がないのかもしれないと茂は納得した。
それからまたイチャラブの日々が続いたのだが、だんだんと感情が不安定になってきた。妹たちがいつまでたっても自分のことを好きになってくれない。そもそも恋愛感情など持たない異世界人なのだから仕方がないのだが、それがひどくいらだたしく感じるようになった。
「好きって言って」
おす頼み、思うような感情のこもった「好き」が言えるまで何度もでも言い直させ、気に入らないと暴力を振るうようになった。それでも異世界人は平気で茂の言うことをきいてくれた。暴力はエスカレートし、ひっぱたくくらいだったが、殴るようんいになり、棒や椅子で殴りつけるようになった。
異世界人が血を流しているのを見て興奮して犯したことも何度もあった。そのうちナイフで異世界人を刺して血まみれになったところを犯すようになった。血だらけで「お兄ちゃん」と呼ばれるとたまらない。
ある日、いかついプロレスラーのような異世界人がふたりやってきた。
「貴重な実験データをありがとうございました。充分データはとれましたので、今後は新しいメンターの容姿をお楽しみください」
そう言われて茂は怒り狂った。妹たちとの日々でメンターがこちらに暴力をふるわないことを知っていたからだ。
しかし暴力を振るわない代わりにメンターたちはその場からすぐに消えてしまった。怒りのやり場をなくした茂はものに当たった。その時、ふとした拍子にテレビのスイッチがオンになった。
消そうと思ってリモコンを手にした時、画面に映っていたのは血だらけの妹を犯している自分の姿だった。お笑い芸人が、「こいつ鬼畜やで!」と突っ込みを入れて笑っている。
茂は妹に夢中でテレビも観なかったし、外にも出ていなかったのだ。こんなものが放送されている? ウソだろ? そう思ってメンターを探して部屋を飛び出した。廊下には誰もいない。そのままマンションの外に出る。
しばらく歩くと、自警団という札をつけた老人たちに囲まれた。
「ちょっといいかな?」
茂は要注意人物、いやほとんど犯罪者扱いになってしまった。あんな映像を観たら誰だってそう思うだろう。あまり外に出ないでくださいと言われたが、なんの権利があってそんなことを言うのかわからない。君を見て怖がる人もいるのですとも言われた。相手は異世界人なんだから勝手にさせろよ! あいつらだって勝手にオレを転生されたんだから! 最後まで面倒見ろ!
だが、翌日から茂の部屋の周囲には交代で自警団が監視するようになった。もう外に出られない。たまに来るのはごついメンターだけだ。メンターに自警団をなんとかしてくれと言っても、相手にしてくれない。妹を帰してくれと言ってもダメだ。
部屋の中で悶々としていると、ドアの隙間から紙が差し入れられた。
「怖がる人がいるので大声を出さないようにしてください」
かっとなってドアを開け、目の前にいた自警団の老人に殴りかかった。一発殴ったところで、近くにいた別の自警団員に警棒で何度も殴られ、廊下に倒れたところを蹴飛ばされた。
「死ね! 変態野郎!」
気がつくと、人数が増えている。茂が這うようにして自分の部屋に入ると、5人に増えた自警団員たちはそのまま着いてきた。
「なあ、外で見張るよりここで見張った方が椅子もあっていいんじゃないか?」
バカなことを言うな! 茂はおそろしくなったが、自警団員たちはすっかりその気で勝手に茂の部屋のベッドや椅子でくつろぎだした。
「出てけよ!」
茂が怒鳴ると蹴飛ばしてくる。抵抗してもムダだった。
もう、どうでもいい
夜中に目覚めた茂はベッドで寝ている自警団員数名をナイフでめった刺しし、気持ちをすっきりさせると自分の首にナイフを突き立てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます