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男はベッド脇に脱ぎ捨ててあった自分の上着を引き寄せるとその内ポケットから一枚の写真を取り出してそれを少女に見せた。その写真には一人の白衣を着た女性の顔が映っている。歳は男と同い歳、もしくは二、三歳下くらいに見える成熟した女性の顔だ。
「この人がどうかしたの?」
「探している。この街にいるはずなんだ」
「ああ、なるほどね。お客さんがこんな辺鄙な街に来た理由ってのがこの人なわけね」
少女はじろじろと写真を見ながらその細く引き締まった体をくねらせる。
「……この人、お客さんの奥さん?」少女は意味ありげな顔をしてにっこりと笑う。
「違うよ」男はすぐに否定する。
「でもそうなったらいいなって思っている人」
男は少女の真似をしてタバコの煙を天井に向かって吐き出した。少女は写真を手に持ちながら、ごろんとベットの上に転がった。
「ふーん。お客さん、この女の人に惚れているんだ。なるほどね。確かにすごく綺麗な人だけど、私はちょっと苦手かな?」
少女はとても長くなったタバコの灰を指を使って灰皿の上に綺麗に落とした。先ほどから右手にタバコを持ったまま器用に動き回る仕草やその動作を見る限り、少女はタバコを吸い慣れているように思える。少なくとも今月とか先月とかそれくらいからタバコを吸い始めた初心者というわけではないらしい。
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