SMSにて
植木鉢たかはし
SMSにて
『久しぶり。元気? 進路決まった?』
高三の二月下旬、知らない番号から、SMSにそんなメールが届いた。うん、正直ビビった。だって知らない番号なんだもん。はじめは文章だけ見て、「あいつかな?」って思ったけど、番号が違った。
困った。久しぶり、ってことは中学のときの同級生かなにかだと思うんだけど、仲がよかった人はほとんどLINEにいるし、電話番号を渡した人は、だいたい連絡帳の中に入っている。入っていないのは……誰だ? 誰に電話番号渡した!? 私!
うーん、このままじゃ埒があかないなぁ。
そう思った私は、メールを返す。
『ごめん、連絡帳とかの番号と一致しなくて。誰なのか教えてくれる?』
正直に答えた。これで、知らない名前とかなんかが返ってきたら無視。知ってる名前だったら、そっかごめんねでオッケー。我ながら平和な解決策だ。そう自画自賛しながら、ベッドにぼふっと倒れ込んだ。
……5分もしないうちに、返信が来た。
『大越悠だよ。中学の』
それを見た私は、倒したいた体を急いで起こして、ベッドの上になぜかちょこんと正座して、両手でスマホを握りしめた。
「……あいつじゃん」
そんな声が、思わず漏れる。最初に「あいつかな?」って思った、あいつ、である。大越悠。中学の時同じクラスだった、あいつだ。
震える指で文字を打ち込み、三回くらい読み返したあと、送信ボタンを押す。
『あぁ! 悠か! なんだびっくりしたー。
進路は、私はセンターでなんとか決まったよ。そっちはどう?』
しばらくして、また返信が来る。
『今結果待ち。どこ受けた? 文系だっけ?』
『文系って言うか、栄養系? そっち理系だよね』
『そうそう。あ、それでさ――』
……あいつからのメールの内容は、ざっくり言うと、機種変更して、LINEとかのデータが消えたからID教えてほしいってことだった。LINEを交換しなおして、そのあともちょっとメッセージでやり取りをした。
一通送る度に、誤字はなかったかどうか、嫌なことを書いてないか、細かくチェックした。そして、5秒に一回のペースでスマホを開く。返信が来てるか、見るために。
返信が来てからも、あんまり早いと嫌われるからと、ちょっと間をおいてから送ろうとして、やっぱり我慢できなくて返信してしまって、あぁなにやってんだって思って……。
……中学卒業したら、もう、終わりと思っていたのに。
今、私はどんな顔をしてるんだろう。
『友達として好き』っていうの、本当だけど嘘だったって、あいつ、気づいてないんだろうな。
それにしても……はぁ、なんだこの行動。
「……乙女かよ」
『会いたい』の一言だけ胸に閉じ込めて、妙に火照る顔を隠すように、私は枕に顔を埋めた。
SMSにて 植木鉢たかはし @Uekibachi
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