終章【それはいつか見た現実、いつか訪れる未来】

 ――空は穏やかで、風も心地よく、王都は人々の笑顔で溢れている。


「あーあ、途端に暇になっちゃったなぁ。どこかで戦争でも起きないかなぁ」

「不謹慎すぎッスよ。せっかく平和になったんスから、少しは平穏に過ごしてくだせーッスよ」

「今まで戦争の中でしか生きてこなかったから、どうやって生きればいいのかよく分からないや。――あ、お姉さん。紅茶のお代わり」

「あ、ボクも同じもの。――つーか、大体アンタが働きすぎなんスよ。もー少し落ち着いたらどーッスか」

「冬眠でもしようかなぁ」

「今は春ッスよ」


 燦々さんさんと陽光が降り注ぐ中、王都の大通りに面した小洒落た喫茶店にて、黒髪紫眼の青年と赤い髪の青年が紅茶のカップを片手に、他愛ない会話に花を咲かせていた。


「この前、本を買ってたじゃねーッスか。話題の推理小説」

「あんなのもう読み終わっちゃったよ」

「早ッ。結構ページ数あったはずッスけど……」

「ページ数なんて僕には関係ないね。――あ、そうだ。読む物語がなければ、僕自身が書けばいいんだよ。幸いにも、材料は揃ってるんだからね!!」

「……それ、ボクらッスよね」

「そうだよ。僕たちの、僕たちによる、僕たちが体験した実話には聞こえないけれど実話と戦いの物語を!!」


 ――だって空から女の子じゃなくて、怪物が降ってくるんだよ。これ以上ない題材でしょ?

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