二大組織の影 その2

「P.W.ヒルズ」――――――有栖摩武装探偵社「会長室」にて。


「こやっ、こやっ、こやっ、そうかそうか、もう終わりかいな。カンパニーが全力を挙げてつぶしにかかってきたとはいえ、あっという間じゃったなぁ!」


 有栖摩武装探偵社は、大幹部及び人員の大半を失った。

 特に「鬼牙」コロンボと「竜牙」奏が失われたのが致命的で、更に各コロニーの情報収集を統括していたルーチェまでやられた。

 おそらく、第2コロニーマスターのバンクシーは、早晩ここぞとばかりに武装探偵社解体指令を発することだろう。

 そして、大勢のハンターたちに、代表である姫木眞白を殺させる。おそらく★5はくだらないだろうし、姫木眞白はそこまで強くないという噂もあるので、あっという間に志願者が集まるだろう。

 今頃バンクシーは「邪魔者がいなくなって飯がうまい」とでも思っているだろう。



「で、そんなことを分かっているくせに余裕じゃないの。もっと、こう、ブラウザゲームで間違えてお気に入りのキャラがロストしちゃったくらい落ち込んでると思ったのに」

「こやっ、こやっ、本気でそう考えておるのだとしたら、心外じゃな」


 代表室にもう一人の女性が入ってきた。

 敵対しているはずの秘密組織「ウルクススフォルム」の代表、オリヴィエだ。


「おや、そういえばおかしいのう。セキュリティは厳重にしたはずじゃがな」

「少なくとも私の前には、現代のセキュリティは無意味よ。それより、今日は取引に来たのだけど」

「こやっ、こやっ、落ち目同士協力し合おうとな? じゃが断る」

「あのね、ちょっとは人の話を聞いたらどう?」

「お主の考えなど知れておるわ。どうせお主らが部下を庇護する代わりに、我らが持つ情報をよこせと言うのであろう? まったく足元をみおって」


 オリヴィエは背筋に一滴だけ冷や汗をかいた。

 この狐人は、自身が危機的状況に追い込まれているはずなのに、まるで遊んでいるかのように無邪気だった。


「あなた……自分の組織に愛着はないわけ?」

「存外お主も甘いのう。こやっ、こやっ、当然じゃな、おぬしも組織人の一人じゃ。その気持ちはわからんでもない。じゃがな、ワシにとってはすべて遊びじゃ。それとも、次の遊び相手は、お主がなってみるか」


 眞白の前面に、わずか5枚の札が展開される。

 そのうちの一枚が光り輝き、眞白とオリヴィエの間に空間断絶を作った。オリヴィエの攻撃はどうあがいても眞白には届かない。


「…………暗黒竜のブレスですら無傷の術防御力に加え、この空間断絶結界。言われなくても、貴方とこの場で喧嘩なんてしないわ。もし私と喧嘩したければ、私の家にいらっしゃい」

「こやっ、こやっ、そうするとしようか。帰るのじゃな? だったら…………せっかくじゃから送ってやるわい」


 4枚の札が輝き、強大な斥力がオリヴィエを吹き飛ばした。

 そしてついでにP.W.ヒルズの一角が消し飛んだ。



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カンパニー進出計画書 南木 @sanbousoutyou-ju88

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