第3話 日本人といえば


「んあ…?」

気がつくと木刀と顔が返り血で真っ赤に染まっていた。


「確か、キスプエイプと戦う筈だったのは覚えてるんだがそれ以降の記憶が…」

頭が痛くなってきたので、考えることをやめキスプエイプの牙を剥ぎ取って持ち帰った。



「すみません、討伐の証ってこれで大丈夫ですかね?」


一瞬、驚いた拍子を見せたがすぐに元に戻った

「大丈夫ですよ。というか凄いですね…初クエストなのに倒してきちゃうなんて、これでDランクに昇格ですよ」


ギルドの登録カードがEからFという字に変わった。


「それよりも、その血落としてきて下さいね?地下に無料の銭湯がありますから」


「ありがとうございます。といっても替えの服がないのでまずは買ってきてからですけどね。手頃な服屋ってありますかね」


「そうですね、もしよければ私が買いに行ってきましょうか?」

申し訳無いし、サイズはどうするのかと考えていたところ


「私がやりたくてやっているのとサイズはその服を借りていきますので大丈夫です」


「ではお言葉に甘えて、お願いします」


「はい」


ギルドのお姉さんに任せて風呂に向かった。



「よお、狂気の新人」

風呂に入るといきなり傷だらけのおっさんが話掛けてきた。


「こんにちは、狂気の新人きょうきのルーキーって俺の事ですか?」


「なんだ、知らなかったのか?お前が木刀一本でキスプエイプを殺した所を見た奴がいてな…、狂気を感じたから狂気の新人って呼ばれてる訳だ。お前と同じくらいの新人からは恐れられてるぞ」


いや、まったく笑い事じゃないし覚えてないんだけど…

これが俺のスキルか、鍛えた筈なんだが記憶がないってのは不便だな


「その、噂ってどうにかならないですかね…?」

「ならんだろうなぁ、まあいいじゃないかw狂気の新人w」


「マジかー、恐れられるのは辛い…」

「大丈夫だろう、そのうち慣れてくるさ」


そんなもんかなあ?と思い湯船に浸かった。




あれから15分くらい経っただろうか…、余りにも気持ちよかった為逆上せるまで入ってしまった。


「うえっ…、キモチワルイ」


「大丈夫ですか?」

さっきのギルドのお姉さんが服を持ってきてくれた


「大丈夫では、ないですが少し休めば良くなります。あと、服ありがとうございます」

服の料金に少しだけ感謝料を付けて渡した。


「あの…」

「感謝料なんで、受け取って頂けません?」

「わかりました…、ありがとうございます」



「あの…?」


「はい?何でしょう」


「外に行ってもらえません?」

俺はタオルを腰に巻いて横になっているので早く外に出て行って欲しいのだが、それに他の冒険者が入ってきたらあまりよろしくないのでは?


「大丈夫ですよ、掃除中って看板立て掛けたので他の人は入ってきませんから」


「あの、そういう問題じゃなくてですね?着替えたいんですよ?」


「気にしないで下さい。私は大丈夫なんで」


「俺が大丈夫じゃないから出て行ってもらいたいんだけど!?」


「仕方ないですね〜、あんまりしつこくやって嫌われたくないですから今回は下がります」


そういうと、彼女は出ていった。


「ふぅ…、相手するの疲れたな」

買ってきてもらった服を着て近場の宿を聞いたところ、『暁月』という宿舎がオススメらしいのでチェックインを済ませ食事もせずに部屋で眠った。

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