序章 ~11~
線路に
列車というのは、停車時が一番、
「
襲われたら
(そういえば
いや……というよりは、襲われても襲われなくても、盗賊集団を
(……どうやって……?)
なんだか
「ルキア、オレも手伝うぞ!」
「ありがとうございます」
素直に感謝の言葉を
なにか考え込むような
この後、ドナ山脈に入り、しばらくして……ブルー・パールは停車を
*
ブルー・パール号が急停車したのは、トリシアがハルに呼び止められて医療車両へと案内をしている最中だった。
彼は貧血気味だと
確かに元々色白い。帝国人とは違う肌の色をしているが、それでも彼の肌の色は白めだった。もしかしたらあの小瓶の中のものは、乗り物酔いのための酔い止め薬だったのかもしれない。
思い当たり、トリシアは素直に
「きゃあ!」
衝撃に
「おい
どうなってる? と問おうとしたのだろうが、彼はすぐ近くの
「なんだ……?」
ばたばたと足音がし、どこかのドアがこじ開けられる
トリシアもハルの背後から外を
(あ、あれは……!)
見るからに同じマークをつけたスカーフを首に巻いている。仲間、同志だと意志表示をしている彼らはおそらく……山賊、つまりは盗賊集団だ。
(本当に出た……)
「チッ。後ろにもいやがる」
面倒そうに言うハルは
「だ、大丈夫ですか、お客様!」
「……うるさい。声がでかい」
「申し訳ありません……」
「……あのちびっこ軍人とセイオンの坊主はどうした。こういう時こそヤツらの出番じゃないのか」
憎らしげに
すでに外は茜色に染まっている。もうすぐ夜になるのだ。
「ミスター、どこかに……近くの部屋で構いませんから、避難していてください。様子を確かめて参ります」
「バカか、てめぇは。どこに隠れたって、見つかるに決まってるだろ」
心底馬鹿にした口調で言い放ったハルは、耳を
「……なるほど……。誰かが手引きしたか。乗務員と客を
「? 聞こえるんですか?」
会話が。
(ありえない……なにこの人。トリッパーって、特殊能力を持ってるって聞いたことはあるけど)
戸惑うトリシアを
「なっ、なんだその顔は! 僕が嘘を言ってるとでも!?」
「え? い、いえ、そんなことは思っておりません」
「な、ならいいんだ……」
フンと鼻を鳴らすハルは
「……無抵抗のセイオンの坊主は殴りつけられてるな。ちびっこのほうは……手出しができないから
「見えるんですか?」
「いや、見えない。音でわかる」
不可思議なことを言い、ハルは突然トリシアを
「え?」
目を見開く。そこはトリシアたちが立っていた真上……車両の上だったのだ。
列車を取り
オレンジ色の景色に
「誤解するなよ! つい、だ。つい。
ヤツらの足音が聞こえたから、
「……あの、今のどうやって……」
「関係ない」
ぴしゃりと言い放たれ、トリシアはそれ以上問うことができなくなってしまった。
見張りの者たちは自分たちの視界より上の様子は気づかないようで、トリシアとハルの存在に気づく素振りはない。
「…………」
無言になるハルをうかがい、トリシアは不安になって
乗務員の仲間が心配だ。先輩のエミリは大丈夫だろうか? 同じ添乗員のシスカだって……。
今までこんな集団に囲まれたことがないので、トリシアは動揺していた。
(ラグ……ルキア様も……)
どうしても、頼れる人物を思い浮かべてしまう。
それより、護衛のギルド『雲わた』は何をしているのだ?
時間だけが過ぎていく中、列車内では騒ぎにはなっていてもガラスや物が壊れる音はしない。
(みんな……無事かしら?)
すっかり
車両の上に座り込んでいるハルは何かに気づいたようで
「ブルー・パール号が……」
発進した?
そんなばかな。
身を乗り出すトリシアは、進路方向を見遣る。線路に
「機関室が乗っ取られたか……。確かにこの列車はいい金になるが……軍が動けば終わりだろうに」
面倒そうに言うハルだったが、ふいに気づいて
「……そうか。ドナ山脈を出るまでに荷物を奪う気なんだな。それまでは、通常通りに動いているように見せかけるってことか」
「なんでそんな面倒なことを……」
「フン。ヤツらもバカじゃないってことだろうな。エキドの街であのちびっこは正式に盗賊退治を
「うわさ……?」
背後のハルを
「あのへんに山賊が出るらしい。あのあたりで列車が襲われるらしいってことで、確証は得られていない段階。
ヤツらは口止めをする
「口止めって……」
真っ青になるトリシアから視線を
「ま、おまえの考えてるようなことじゃないだろうよ。暴力を振るうような連中なら、もうとうに捕まってるさ」
「じゃ、じゃあ……」
薬、だろうか……。それとも、
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