第3話魔女の抱擁
気持ちのいい晴天の5月の頭、ゴールデンウィークもあと僅か。
「いらっしゃいませ、ではカーネーションを二束ですね498円になります」
ニコニコとしながら黒髪の美少女は働く、そんな少女を空は見る
中村ミオリに告げられた魔女という事実、姉の死亡、葬儀の手配、式の執行
ドタバタしながら、4月は終わってしまった。
残虐な事件だった、正直事件直後はどれだけ家で泣いたのか分からない
復讐も考えていた。
それをこの魔女は、代わりに残虐な復讐をし、姉の言葉を
伝えてくれた。
ミオリが復讐してなかったら、俺は今頃檻の中だったな......。
中村ミオリ、この少女とは中学の時に一回別の中学校になった。
中学校の時から学年で一位だったのもあるし、それに両親がミオリの
家の両親と仲がいいせいもあり、僕はミオリが桜高を受けるのを知っていた。
だから僕も頑張ったんだ、中村ミオリの事が、だってずっと好きだったから
桜高に受かった時はとても嬉しかった、......まぁ今の今まで話す機会なんて
恥ずかしくて無かったけど。
小さい頃恥ずかしがり屋の僕は小林ミコという、殺された姉を介して
ミオリと良く遊んでいた、その時はミオリ位しかまともに喋れる友達が
いなかった。
小学校高学年になると、新しい友達ができ思春期に入り
俺が勝手に意識してしまい、少し距離を取ったが。
中学校時代は俺の家の近くの家から私立の中学校に毎朝登校する
ミオリをいつも見つめていた。
恥ずかしくて手を振るう事もできなかった。
大好きだった姉をなくした今、毎晩の寂しさから逃げる様にミオリの接吻を
思い出し、抱きついてきたミオリの体を思い出し、布団を抱きしめる
苦しくてたまらない、......愛が欲しい。
ミオリは何を考えている?、俺みたいなナヨナヨした男には興味無いのか?
姉が亡くなってこんな事考えるのは不謹慎か、でも今はただただ辛い。
「あ、薔薇の花束1つ698円になります」
僕は花束のやり取りをしている中性的な少年、空を見る.
空がどれだけ姉のミコちゃんを愛していたか分かる
だからこそ、今の気持ちも分かる。
苦しんでる空を抱きしめてあげれたらな、私が孤独を癒やしてあげれたらな
きっとその抱擁にはいやらしさも何も無い......なんて言ったらちょっと噓になるか。
僕は満月の夜、空にキスをした、けど相手が空だったからキスしたんだ
空なんかよりもカッコいいイケメンが同時に居てもきっと空を選んだ
空はとても優しい、少し強がってるけどね、俺なんて言っちゃたりして
まぁ僕も私なんて人前で言っちゃったりするけど、.....僕の場合それが普通か。
残虐な事件だった僕はミコちゃんの事で毎晩落ち込んでるし、
どうしても苦しい時には空の事考えちゃう、......なんかこんな事考えるのミコちゃんに悪いな
「ミオリちゃん、空少し休んだら?」
空の家に上がらせてもらう、空のお母さんからケーキと紅茶の差し入れを
貰う。
何を話したらいいのか分からず、困っていた。
空が口を開いた
「ミオリ夕方来るの?」
「うん、今日は丸一日働くよ、部活無いしね」
「俺も出るよ、父さんと母さん、姉さんの葬儀の残りの手続きとかあるし」
あ、と僕が口を止めたせいで少し気まずくなった
二人とも黙ってしまう、そうしてる内に休憩は終わった。
夕方になったバーに訪れる、高校生は10時まではバイトOK今は5時40分
空の両親らしい、クラシックな落ち着いたバー。
4時間のバイト、僕らの学校は原則バイト禁止だけど、家業の手伝いをしてた
と言えば済む話。
ミコちゃんの事には当然、魔女の事にも触れず2人で淡々と仕事
をこなしていく、......何を話したらいいのか分からない
たまに空の両親のどちらかが来る。
9時20分、空の様子がおかしい、仕事をする動作がぎこちない
ちらと空の顔を見る、あいつ泣いてる、涙ごまかしながら仕事してやがる。
ん......何でだ?、今日は満月でも無いぞ
僕は空を抱きしめていた。
「......泣きたいだけ泣きな、空」
と呟く、空の大きな涙の粒がまわした私の手のシャツにかかる。
空の嗚咽に......うん、大丈夫、僕がいるからと相づちを打つ
よしよしと頭を撫でる
5分程立ったか......空が少し動くから私は腕を振りほどく
またモクモクと私達は仕事をし始める。
着替え終わって帰る時、空は、ありがとうミオリと僕に言った
もう、可愛いなぁ空、普段からそんな素直にしてればいいのに
月を見る、新月に近い、まだ満月まである
今度の満月の日は、午前中でも絶対に空の近くに寄らない様にしよう
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