享禄4年(1531年)の内政まとめ
享禄4年(1531年)も終わりに近付き、内政の成果なども現れていた。
アチェ王国など、南蛮から取り寄せた植物たちも、志摩において試験栽培を始めている。
サトウキビの苗は植え付けの季節が合ったため、志摩で植え付けたところ、それなりに成長している様だ。
ヤシ類の苗の多くは、日本では育たないので、その殆どは高砂国に送っている。
ココヤシ、サゴヤシ、オウギヤシ、サラカヤシなど、食用や繊維、甘味などになるもので、高砂国で主に栽培するつもりである。
高砂国奉行の山田式部少輔からの報告を待つとしよう。
ナツメヤシは、関東以南であれば育つ耐寒性があるらしく、高砂国だけでなく、志摩にも運びこみ植えてみた。
今のところ、枯れることなく育っている。
ナツメヤシからはデーツが出来るので、食用になるので、積極的に栽培していきたい。
最も良いデーツはペルシャ産らしく、その苗を手に入れてくれる様に、アチェでイスラム商人に頼んでいる様だ。
ヤシ類については、薩摩と交易を始めた段階で、ワジュロを取り寄せて、志摩で栽培していた。
シュロ皮から取れる繊維を活用するためだ。
しかし、ワジュロが育つまで時間がかかるので、シュロ皮だけ取り寄せてみたが、余り割に合わない。
シュロ皮の繊維を取るためには、シュロ皮を煮沸し、硫黄で燻蒸した後、天日で干しす。
出来上がった物は「晒葉」と呼ばれ、そこから繊維を取る。
シュロ皮の繊維は、腐りにくく伸縮性に富むため、前世では縄や敷物、タワシ、ホウキなどの加工品にされたらしい。
当家では、縄や網を作ってみたが、自分たちで作るよりも、薩摩で作った物を買ったほうが良いのでは無いかと思っている。
原材料は全部薩摩にあるしな。
アラビア半島原産である無花果の苗も植えた。
日本の温暖、湿潤な気候に適合しており、挿し木で増やすことが容易であることから、特に西日本での栽培に向いている。
スイカ、カボチャ、トウモロコシ、ニガウリ、トウガラシなど、南蛮から取り寄せた種の殆どは、届いた時には種を撒く季節から外れていたので、来年に撒くことになる。
ナスは奈良時代に伝来したらしいが、貴重な野菜であったらしく、実家の近衛家を通じて種を手に入れて栽培を始めた。
また、南蛮から南方の品種のナスの種を手に入れているので、来年は栽培する予定である。
キュウリも早い段階から日本に伝来し、栽培されてきた。
しかし、完熟させてから食べていたため、苦味が強くなり、不味かったため、幕末にキュウリの品種改良が行われ、成長が速く、歯応えや味の良い品種が出来るまでは不人気の野菜であった。
わしが栽培を命じたところ、兼山や志摩の農民たちは案の定、嫌そうにしていたが、21世紀で当たり前の黄色くなる前に食べたら、それなりに食べれる物であった。
これには、農民たちも驚いていた。
わしからすると味はイマイチだったので、味を良くするには、品種改良するしかないな。
ミントとしてニホンハッカの栽培を始めており、日本の至るところで自生している和薄荷を、妻木で焼いてもらったプランターで栽培しているのだ。
ミントの繁殖力は凄まじく、そのまま栽培したら、大変なことになるからな。
今は薬草として栽培してるけど、蒸留器でも作って、薄荷油を作った方が良さそうだ。
南蛮から持ち帰った大型の山羊も、粗食で生きられる様なので、今のところは問題無い様だ。
秋になり、繁殖期を迎え交尾していたらしいので、今は妊娠しているらしい。無事に産まれてくれると良いのだが。
番で購入しており、二つの番の片方は志摩で、もう片方は高砂国に送っていた。
南蛮交易で交易する度に、番を購入してくる様に伝えてある。
領内の各地で、日本蜜蜂用の重箱式の養蜂箱を作らせ、養蜂箱に蜜蝋を塗って設置したところ、何ヵ所かは日本蜜蜂が住み着いたとの報告を受けた。
日本蜜蜂の養蜂箱は、重箱のように蜂枠を重ねて作られている。
この養蜂箱は、伝統的な洞の空間を形作っているそうで、巣の上部に貯蜜されるらしく、蜜が充分に溜まった季節を見計らって採蜜するらしい。
上部の貯蜜されている蜂枠を抜き取るため、幼虫を殺さずに済むらしく、重箱式養蜂箱は、日本蜜蜂に負担をかけない採蜜が可能だそうだ。知識チート様様である。
また、群れと巣の増殖に合わせて巣枠を追加し養蜂箱を大きくしなければならないらしい。
日本蜜蜂は巣を捨てて逃げる性質があるので、採蜜のタイミングを間違えると、逃げてしまうそうなので、注意が必要だな。
また、採蜜は一年に一度しか出来ないらしい。
とても貴重なので、自分と家族用、家臣への褒賞用にするしかないだろうな。
灰吹法で金・銀を取り出すため、当家では銅を買い集めていたため、銅がかなり余っていた。
銅銭の材料にするなどしていたが、当然それでも余ることになり、津島などに売っていたのだが、坂倉を手に入れて鍛冶師たちを抱え込んだことで、銅製品を生産出来る様になったのだ。
そのため、鉄製品から銅製品に代えられる物は代える様にしていた。
我が家にある鍋など、銅製品にしている。
今は鍛冶師たちに命じて小型の蒸留器を作らせているところだ。
南蛮から交易品と共に樽を持ち帰っているので、木工職人たちにミズナラで樽を作らせている。
国産ウイスキーを作りたいのだ。今から仕込めば、わしが良い年齢になった頃に、美味しいウイスキーが呑めるだろう。
国内の交易についてだが、家臣が東天竺屋とともに、越後長尾家と甲斐武田家に琉球の交易品を売りに行った。
長尾為景も武田信虎も交易品を喜び、金・銀、宝石払いでの交易を了承してくれたらしい。
しかし、長尾為景が結構な量を買ってくれたのに対して、武田信虎は思ったほど買ってくれなかった様だ。
長尾為景は直江津の湊を有し、日本海航路の交易で流せるからか、二回目以降は量を増やしてほしいと要望があった様で、佐渡の金・銀をかなり手に入れることが出来た。
反対に、武田信虎は自身や家族、重臣などが使用するのが主の様で、有力な交易路を有している訳でも無く、甲斐自体が貧しいので、需要はそう多く無い様である。
金・銀、翡翠を手に入れられ、有力な交易路を有する長尾為景は、我々にとってかなり太い客になりそうだ。
甲斐武田家での購入量が思ったより少ないため、交易品は関東に流しても良さそうである。
しかし、交易するにしても買う品は奴隷ぐらいしか思い付かないな。
奴隷は欲しいけれど、わざわざ関東まで交易品を持っていく手間をかけるほど欲しい品でもない。
関東の商人に奴隷を注文し、鳥羽まで持ってきてもらって、鳥羽で交易品を販売する方が良さそうだ。
関東の商人が鳥羽まで行けば、琉球の交易品が手に入ると知れば、自発的に奴隷を持ってきて交易してくれそうである。
まずは、関東の商人に奴隷を注文して持ってきてくれる様に頼むとともに、鳥羽にくれば琉球の交易品が手に入ると言う情報を流すこととしよう。
なお、伊勢湾や畿内の交易品流通は、織田弾正忠と津島に任せているので、鳥羽で琉球の交易品を買えるのは、その他の地域だけだな。
その地域についても、織田弾正忠と大橋殿と話し合う必要がありそうだ。
今年は鷹匠たちを召し抱え、鷹狩に挑戦することにした。
わしが欲しいのは、イヌワシとハヤブサだったのだが、鷹匠たちがイヌワシとハヤブサが欲しいと言うと、困惑していた。
見た目の美しさと扱いやすさから、貴人が飼うならオオタカが良いそうだ。
イヌワシは獲物を捕獲する能力は高く、それなりに評価されていたようだが、オオタカに比べると見た目は美しく無く、人間の子供を襲う可能性があり危険だからという理由で、鷹匠たちは鷹狩りに使わない様にしているらしい。
イヌワシが貴人に危害を加えてしまう可能性もあり、罪に問われたく無いと言う理由もある様だ。
また、クマタカなどに比べると、イヌワシの尾羽が矢羽としての価値が低いことから、イヌワシのイヌは「劣っている、下級の」の意で和名を付けられたらしい。
しかし、大きいイヌワシであれば、狐や野犬も狩れるので、個人的にはイヌワシを飼いたい。大きいは正義だ!
モンゴルなど騎馬民族ではイヌワシを鷹狩に使っているので憧れる。
ハヤブサは平地の少ない日本だと、その特性を活かしづらいことから、勧められない様だが、イスラム社会だと鷹狩りに使うのはハヤブサであり、イスラム国家とやり取りするなら、ハヤブサの扱いも出来なければならないだろう。
と言うことで、無理を承知でイヌワシとハヤブサを飼育してもらうことにした。勿論、オオタカも飼育してもらう。
雛を手に入れるのは大変だった様だが、雌の雛を何とか持ち帰り、育てている途中で、わしは動物好きなので、何度も見に行き、餌を与えたりしている。
九條稙通卿もオオタカを所望しているので、育てているオオタカの一頭を贈るつもりだ。
イヌワシとハヤブサを育てているのを観て、変わったことをしているなと言われたが、オコジョをペットにしている貴方には言われたくない。
因みに、九條卿はペットのオコジョを増やしたいらしく、猟師たちに子供のオコジョを見つけたら捕まえてくる様に頼んでいた。
飯綱の法だか何だか知らないが、オコジョに取っては災厄の様な男である。
九條卿のオコジョが増えたら、冬毛の時に毛皮にして、ヨーロッパの王様が纏うようなコートにしてやりたいものだ。
今年は南蛮との交易のお陰で、農業の作物の品種を増やしたり、収入が増えたことで、新たな事業に挑戦出来ている。
来年の内政はどうしようか悩みどころではある。
農具の開発をしたいが、農具開発をしたら更に悪目立ちしそうである。
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