享禄4年(1531年)

享禄4年(1531年)の方針

享禄4年(1531年)


 年が明けて、享禄4年(1531年)を迎える。

 今年は、土岐頼芸様の元へ養祖父たちと新年の挨拶をしに行ったが、特に不穏な雰囲気も無く、養祖父曰く戦は無いそうだ。



 兼山に戻り、重臣たちと今年の方針を話し合う。


 家宰の案件としては、今年は塩水選別や正条植を拡大させ、収穫量を上げることや交易の拡大などについてを取り決めた。


 琉球までの航路を二つに分けたことで、かなり効率良く琉球の交易品が入ってきている。

 美濃の頼芸様方の国人たちから購入する産物も、他国に持って行くことで、利益を出していた。

 そろそろ、琉球の交易品は、伊勢湾内だけで無く、他家とも交易をしたいのだ。伊勢湾内は津島などでも取引しているしな。

 今のところ、金銀が欲しいので、甲斐の武田家と越後の長尾家と交易をするつもりである。

 中国地方にも手を広げたいところだ。

 大内は寧波の乱以降、遣明船を派遣出来ていないから、需要も高そうである。

 そのため、黒田下野守の伝手で、備前長船の福岡の商人に声を掛けたところ、阿部善定と言う商人が興味を持ってくれたらしく、黒田下野守が対応してくれている。

 畿内とは関わりたくないので、取引があるとすれば津島が対応するだろう。


 また、馬路正頼から、年が明けたら、アチェに交易に行きたいと言われていた。

 倭寇狩りも上手くいっている様で、船も増えたらしく、アチェへ船を出すことも可能な様だ。

 なので、馬路正頼と武家官僚、東天竺屋の商人を乗せて向かわせるつもりである。

 馬路正頼がアチェから戻って来れたら、琉球に馬路宮内を派遣し、琉球王へアチェ王へ使節を出すことを提案するつもりだ。



 平井宮内卿は軍事について報告をし、各種の提案をしてきた。

 その中で大きいのは、常備軍の主力を志摩に移すことである。

 美濃では訓練の地積が少なく、養祖父から預かっている2000の兵もいることから、美濃に軍事力を集中するよりも、ある程度好き勝手出来る志摩に主力を移し、訓練させたいそうだ。

 また、志摩の統治も大分落ち着いた様だが、志摩に常備軍の主力を移し、訓練させることで、より志摩の支配力を強め、治安を安定させることも目的の一つの様である。

 そのため、兼山に常駐する常備兵は親衛隊の様な位置付けとし、大島甚六に指揮をさせ、坂倉にも常備兵による守備隊を配置することにした。

 美濃内での常備兵の募集は、兼山と坂倉の二ヶ所で行い、新兵は志摩へ送られ、訓練を受けることとなる。志摩でも常備兵を募集するつもりだ。

 志摩に常備軍の主力を移して、訓練をすると、北畠辺りを刺激しそうだが、そこは神宮を通じて対処するしか無いな。


 また、年が明けたら、山田式部少輔有親たち薩摩の仕官希望者たちが来ることになっているので、半年程は志摩で当家の訓練を受け、当家の武官として必要な資質を身に付けてもらう。

 薩摩武士たちは台湾に派遣し、現地への入植の尖兵を担ってもらうので、特に山田式部少輔には将校としての教育だけで無く、軍事行政官としての教育を受けてもらう必要がある。

 現代の様に理論やら実例などある訳でも無いので、実施要領や方針などについて説明し、現地で応用してもらうしかない。

 現地での参謀や訓練教官の様な立場の者も必要になると思われるので、そう言った素質のある神代勝利を山田式部少輔の配下につけるのも良いかもしれない。

 薩摩武士に帯同する形で、武家官僚や神宮の神官も派遣するつもりであり、準備を進めてもらっている。

 伊作家からは、口減らしの奴隷を売りたいと申し出があるので、台湾へ送り込み植民する予定だ。



 外交関係では、上杉憲政方と島津への傭兵斡旋関連だろうか。

 上杉憲政方の戦況はなかなか厳しい状況の様であり、安中氏たちに雑賀衆を雇うことを提案した。

 安中氏たちからは、雑賀衆への仲介を頼まれ、雑賀孫市に話したところ、応じてくれたので、年明けには派遣されるだろう。


 島津家についても、伊作家は日置や頴娃を攻略したものの、出水・鹿児島・加世田の三方に囲まれているため、勢力伸長が難しい状況である。

 そこで、昨年に園田清左衛門実明殿に持たせた書状に、伊作家方の国人と繋がりのある根来衆を雇ってはどうかと書いておいた。

 根来衆を雇い、薩州家の南薩最大の拠点である加世田の攻略してくれれば、伊作家の背後を脅かす拠点も無くなり、伊作家の薩摩攻略が進むだろう。

 伊作家の勢力が伸びるほど、薩摩の人材や口減らしの奴隷を手に入れる機会が増えるので、伊作家には頑張ってもらいたい。


 情報関係だと、九州に派遣した大林菅助や忍たちが情報収集している様である。

 実父の近衛稙家を通じて、父の和歌友である明石正風を紹介してもらい、やり取りをする様になったので、中国地方の情報も手に入る様になった。


 人材関係では、特筆すべき人材は見つかっていない様である。

 九州で菊池武包や相良長定と言う、元当主たちを見つけたらしいが、当家に仕えないだろうし、来られても困るので、勧誘は行わないものの、将来的に大義名分になるかもしれないので、接触はしてもらうことにした。

 菊池武包なんて、菊池の本流の遺児が、肥後の米良に逃げ延びているので、そちらに移れば良いのにと思う。


 その他、産業関連だと、領地領民が増えたので、分蜂の時期に合わせて養蜂を始めたいと思っている。

 冬の間に、蜂の巣箱を作らせてあるので、領内の住民に蜂の巣の情報などを求めて、設置するつもりだ。


 志摩の答志島の工事も、新しい工具のおかげで予想より早く進んでおり、造船所は殆ど完成しているので、そろそろ船を建造させるつもりだ。

 海軍基地は引き続き建設と強化をさせていく。


 坂倉の鍛治師たちに作らせている土工具や大工道具も落ち着き始めており、新規作成分は台湾へ運ぶ予定だ。

 また、坂倉正利には、ネジを作るための工具のダイスとタップを作ってもらうつもりである。

 ダイスやタップの絵や構造を説明するので、何とか作ってもらいたい。

 以前に、父稙家に送ってもらった、明の鳥銃も坂倉正利に渡して、構造の研究や再現などしてもらおうと思う。

 ネジと鳥銃作りの目処が立てば、ポルトガル船から銃を手に入れても、なるべく早く作れるだろうからな。

 無理をして坂倉を攻略し、鍛治師たちを手に入れて良かった。


 今年は戦は無いだろうが、新たな人材を獲得したことで、出来ることの幅が増えている。

 当面は内政を充実し、富国強兵に努めるべきだろう。

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