黒田下野守たちの帰還と東天竺屋
黒田下野守と鵜飼孫六を都へ送り、黒田下野守は近衛家に関わりのある地下家出身の者たちを連れて帰ってきた。
困窮している公家たちにとって、当家で働く子弟からの仕送りは貴重な収入源となっているらしく、希望者が多い様だ。
父稙家に頼んだ志摩攻略の件は、主上から土岐頼芸様へ労いの書状が出されるらしく、却って大事になってしまった気がする。
九條稙通卿の件も、都の九條邸を通じて話をするそうで、時間がかかる様だ。
服部半蔵の引き抜きについても対応して貰える様で、大樹へは父が召し抱える形で雇用してから、こちらへ送ってくれるとのこと。
細工物の職人たちも斡旋して貰えるそうだが、これもすぐに連れていける訳もなく、後日、美濃へやってくるらしい。
思ったより話は進んだが、黒田下野守は父から、頻繁に頼みすぎだし、多すぎると御小言をいただいたらしい。
ちゃんと仕送りしてるのだから、問題無い気がするが。
暫く頼みごとをしないで、仕送りを止めてみようかな?
鵜飼孫六が都から連れ帰って来たのは、没落した商人たちである。
没落した商人とは言え、事情が様々にある。
そう言った没落した中でマトモな人物たちを連れ帰って来てもらったのだ。
没落した商人たちを連れ帰ってどうするかと言うと、当家直営の商家の従業員にするのである。
兼山は近隣から様々な物資が集まってきており、当家は志摩を獲得(名目上、神宮領の代官)した。
そして、薩摩や琉球と交易をしている。
当家の文官たちでは扱いきれなくなっており、交易は津島の大橋家頼みとなっている状況は、よろしくないことであった。
津島の大橋家や弾正忠家から、いきなり取引を止められたり、単独交易など出し抜かれたりすることは、そうそうは無いだろうが、可能性としてあるだけ脅威となる。
そして、津島の大橋家に取引を任せていることで、当家の懐事情がバレてしまっているのも不味いのだ。
そのため、領内に直営商家を設け、領内の産物を取り扱い、外から品を持ち込み領民に売ることで、領民のためにもなるし、当家も潤うと言う素晴らしい策である。
そして、薩摩や琉球との取引をする上で、当家側の商人として参加してもらう。
大橋家とはそれなりに長い付き合いであるし、世話になっている。
なので、全ての取引を止める訳では無い。大橋家と取引をして繋がりを持ち続けることは大切だ。
そもそも、当家だけでは物資を集めきれないから、どうしても大橋家の力は必要になるのだ。
津島で手に入れるものは引き続き大橋家に頼み、兼山を基点に美濃、鳥羽を基点に志摩で調達し易い物は直営商家で調達するつもりだ。
そして、商家の屋号は「東天竺屋」とした。
珍妙な名前であるが、ヨーロッパの東インド会社を参考にしている。
東インド会社はヨーロッパ各国が設立したアジア貿易の勅許会社であり、イギリスの東インド会社などは植民地経営すら行っていた。
将来的に、そんな大企業になって欲しいと言う思いを込めている。
取り敢えずは、兼山と鳥羽に店舗を起き、取引をしてもらうが、商人のことは商人にしか分からないので、方針を定めて、商人たちと話し合いつつ、運営して行くとしよう。
一応、当家所有と言うことで、わしが所有者でありつづけるため株を定め、株式商家とすることとした。
まだ制度や法律も定まってないけれど、一応、日本初の株式会社になるのかな?
この時代の商人の商売の仕方は分からないが、簿記の知識はそこそこあるので、帳簿は複式簿記でつけさせよう。
商人たちに説明すると、嫌そうな顔をされたが、帳簿を見れば金の流れが分かるから、経営状態を理解し易いので、わしが強制的に教えることとなった。
◆「東天竺屋(日本東インド会社)」について
正義が設立した商家「東天竺屋(後の日本東インド会社)」は、日本だけで無く世界初の株式会社となった。
正義の勢力拡大とともに企業規模を拡大させ、アジア全体やアフリカ、ヨーロッパなどとの交易を独占することとなる。
植民地経営にも協力的かつほぼ独占していたが、国内の企業から批判を受けたことや活動を問題視されたため、その後に解体される。
しかし、多くの利権は正義若しくはその子孫が設立した企業が引き継いでおり、市場開放されたとは言え、正義及び子孫が設立した巨大財閥を揺るがすものではなかった。
なお、利権を引き継いだ企業は、日本東インド会社とともに交易の独占を共有してきた企業である。
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