中井戸村での新婚生活
栄子が尾張より嫁いできて、幾ばくか経った。栄子にとっては、驚きと戸惑いがあったかもしれない。
まだ、城も出来上がっていないしな。
ウチでは、猫や犬を飼っているのだが、勝幡では最近、弾正忠が譲り受けた猫がいるそうだが、籠に入れて飼っていて、触ったことは無いらしい。
猫は金持ちが飼うものらしく、勝幡の武士は飼っている者はいなかったそうだ。飼っているとしたら、津島の商人ぐらいだが、籠や紐を着けて飼っているそうだ。
栄子は当初は戸惑っていたが、わしが触って、栄子にも触らせると、栄子は顔を輝かせ、満面の笑みを向けてくれたのを思い出す。
今では、タマを抱き抱えている姿をよく目にする。妻に嫉妬の気持ちを向けてはいけないので、カイゼルだけで我慢することにしよう。
美濃柴の梅まで栄子のところに行ったからって、寂しくなんかないやーい。
当家の動物に慣れてきた栄子だが、ふと疑問に思ったようだ。
「そういえば、ウチの『たま』も『かいぜる』も籠に入れず、紐も着けていませんね」
「籠に入れたり、紐を着けては可哀想ではないか。ちゃんと餌をやって、可愛がっておけばいなくなったりはしないぞ。
猫は気儘な生き物だから、放っておいてやったほうが良い。鼠も取ってくれるしな」
まだ仔猫なので、鼠を取ったのを見たことないけどな。
栄子も寂しさを感じるかと思ったが、動物たちと戯れました側仕えの侍女がいるからか、すぐに慣れたようだ。
ウチは栄子たちが来るまでは男しかいなかったからな。侍女を雇うことを考える余裕も無かった。
栄子が嫁入りで持ってきた道具や衣類は見事な物が多く、弾正忠が奮発したことが伺える。
津島を支配しているだけあって、金持ちであるのだが、わしに対する見栄もあるのだろう。その辺りから将来の名古屋人の気質を見て取ることが出来た。
あと、木曽川があるので川魚は取れるが、ウチは猟師だけでなく、大島甚六もおり、わしも狩りによく行くので、食事は肉中心になっていたのだが、栄子はそれにも驚いたようだ。
勝幡の辺りだと獣も少ないだろうから、魚が中心だったのだろう。
侍女たちは肉料理を作れない様なので、わしが作って、侍女たちに教えることなった。
わしが料理が出来ることに驚いていたが、栄子たちが来る前は、わしが作ることが多かったからな。
都では料理が出来るのは特技の一つだと誤魔化しておいた。現代風の味付けで作ったからか、肉料理も美味しいと感じるようになったようだ。
栄子と婚姻を結んだことで、弾正忠家と同盟を結ぶことが出来た。
これから忙しくなるのだが、栄子に寂しい思いをさせないよう、さっさと子供を作ることにしよう。
栄子の侍女から、栄子の月の物の時期を聞き出し、オギノ式で大体の時期を計算して、その時期には特に励むこととしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます