雑賀孫一重意②
雑賀孫一重意
俺は美濃へ行って、西村庄五郎と会ってから、雑賀へと帰って来た。
西村庄五郎は、まだ幼い顔付きたが、身体を鍛えているのか、体つきは良かった。狩衣を着て、所作などは洗練されており、高貴な生まれを感じさせられた。
しかし、何と言えば良いのだろうか?
俺の勘なのか、不気味なのだ。何か異質なものを感じざるを得ない。まるで、この世の人ではないような。
しかし、西村庄五郎に付いていけば、大きな利を得られるかもしれない。
薩摩まで行きたいとの話であったが、更にその先の琉球まで行きたいという。琉球と交易するには、島津から琉球渡海朱印状を貰わねばならないが、雑賀衆は貰えていない。堺や博多等の大商人たちに高額で渡しているからだ。
しかし、島津家は元々は近衛家の被官である。西村庄五郎が琉球渡海朱印状を貰える可能性は高いだろう。
ましてや、島津は内乱中であり、薩摩の最有力者である島津日新斎は、西村庄五郎との関係を薩摩統一に利用しようとするだろう。
薩摩の内乱も米が育ちづらい不毛の土地での、耕作地の奪い合いの体もあるから、美濃と尾張の米を、薩摩支配に活用することも出来るだろう。
西村庄五郎と組めば、琉球との交易に絡める可能性は高い。
西村庄五郎は若いながらも、なかなか侮れない人物であることと、琉球との交易の可能性があると話したら、多くの郷の長たちが食いついてきた。
特に、水軍が主の湊衆の長が一番食いついている。それだけ、琉球との交易が魅力的だと言うことだろう。
合議の結果、雑賀衆として、西村庄五郎に水軍を貸し出すことに決めた。
しかし、貸し出す船の数より多くだす。多い分は、我々雑賀衆の分の船だ。西村庄五郎と織田弾正忠だけに儲けさせるのは悔しい。我々もおこぼれに預かりたいのだ。
西村庄五郎は近いうちに戦をしたいとも言っていた。
どこと戦をするつもりかは分からないが、こちらが懇意にしている勢力が敵でなければ、兵を出しても良いと思っている。
相手が紀伊守護の畠山などだと困る。他の長たちも同じ考えのようだ。
兵を出すかは、西村庄五郎から依頼を受けてからにしようということで落ち着いた。
根来衆からも兵を雇う可能性もあるということなので、その時は根来衆にも声をかけて欲しいと言っていた。
なので、根来衆の僧兵の長である津田監物と話をしておくことにした。根来衆も相手が根来寺や畠山家でなければ問題はないようだ。
交易については話さなかったので、何も聞かれなかったが、美濃や西村庄五郎について、色々聞かれることとなった。
さて、尾張へ水軍を送り出すとするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます