諸々の挨拶と交易の準備

 新年を迎え話し合いを終えた後、稲葉山城の養父へ新年の挨拶をしに訪ねた。

 義祖父である西村勘九郎正利と養父西村新九郎利政に新年の挨拶をすると、最近木曽川を利用して津島で儲けていることを指摘される。

 領地が軌道に乗ったら、上納金渡しますと暗に伝え、その場は治まった。

 豊太丸(斎藤義龍)と戯れることも忘れない。義兄として、好感度をしっかり上げておかないといけないからね。


 京の実家については、以前より話していたが、父である近衛稙家へ使者を出すことにする。

 先年、比叡山を飛び出して勝手に還俗してしまったが、父稙家に安否の報告とご機嫌取りに贈り物をする。

 白粉もある程度の数が出来上がり、公家に配っても問題ないような器も津島で手に入れたので、白粉や関刀、幾ばくかの銭を黒田重隆に持たせて、京へ向かうよう命じた。

 京へは多羅尾光俊、馬路宮内、馬路正頼にも同行してもらい、公家への対応を経験してもらう。

 父稙家宛の手紙には、色々お願い事を書いたので、対応してくれるとありがたい。


 また、黒田下野守には、京へ行った後、雑賀へ向かってもらう。雑賀衆との伝手を作り、話し合った通りに、水軍を借りたいからだ。

 雑賀衆は応仁の乱以降、傭兵として活動しているので、銭を払えば雇えるとあって、兵を育てる時間と費用が減って都合が良い。雑賀の傭兵も上手く活用したいな。


 馬路宮内と馬路正頼には、父稙家に楠木正成の赦免を請う旨を書いたことを伝えると、喜んでいた。

 すぐには無理かもしれないので、何度も請う可能性が高いので、期待しないで欲しいと伝えると、関白に頼んでくれるだけで嬉しいとのこと。

 京の都での用件が終わった後は、伊勢楠木氏の親戚を回りたいとのことだったので、許可をした。


 そして、今、わしは津島に来ている。

 黒田重隆と多羅尾光俊は京へ向かわせてしまったので、今日のお供は大島甚八だ。津島の大橋家にて、織田弾正忠と会う約束をしているのだ。

 先年、弾正忠と友になってから、何度か津島の大橋家で会っている。

 すっかり仲良くなった弾正忠に話を切り出してみた。


 「弾正忠よ、其方の領地で海の港は持っておらぬか?」


 「いきなり何じゃ。一応、蟹江城が勢力下にあるから蟹江湊があるが。一体、何をする気じゃ?」


 「海を利用して、遠国と交易したいんじゃが、伝手は持っておらんか?」


 「遠国と交易したいじゃと!?それは面白そうじゃ!

 しかし、わしにある伝手なんぞ、伊勢湾に影響力の強い佐治水軍ぐらいだが、佐治水軍は遠国に行くなんぞ聞いたことないぞ。

 伊勢湾は交易が盛んだから、遠国まで行かんでも稼げるからな」


 「やはり、遠国まで行ける伝手はないかぁ。」


 「津島は河湊だからのぅ。桑名やら伊勢ならおるかもしれんがな。清兵衛に頼めば紹介してくれるかもしれんぞ。」


 「いや、商人だと彼等が儲けるための品物も積むじゃろ?しかも、彼等の商売が優先じゃ。

 わしが求めておるのは、こちらの都合の荷を運んで、こちらの都合の荷を持ってきてくれるもんが欲しいのよ」


 「御主、何を考えておるんだ?わしにも噛ませろ」


 困った表情やら好奇心に溢れる表情と表情をコロコロ変え、問い詰めてくる弾正忠を上手く躱しつつ、共犯者にしたててやろうと唆すのであった。取り敢えず、佐治水軍を紹介してもらうかな。

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