船頭衆

 瀬田左京に人だかりが何なのか観てくるよう指示をする。


 瀬田左京が戻ってきたのだが、一人の小汚ないが体格のがっしりした男を連れていた。


 「殿、あの人だかりは、木曽川上流の水運を担っておる船頭たちとのことです。

此方に連れてきましたのは、船頭たちの元締にござります」


 紹介された船頭の元締が跪いて挨拶をする。


 「御殿様に御目通叶い、恐悦至極にございます。

 左京様からご説明いただきました船頭の元締にございます。

 こちらの中井戸村に2000も兵が集まっておられるので、木曽川上流の船頭たちが、何があったのか不安に思っているので、罷りこした次第です」


 「ほぅ、船頭たちが不安おを抱いておるとな。

 では、応えよう。わしらはこの中井戸村の南にある高山に城を築くつもりじゃ。

 高山に城が出来れば、木曽川の流通を把握することが出来るとともに、東美濃に睨みを効かせられるからのぅ。

 木曽川の流通を押さえられるのは困るか?」


 木曽川の流通の話をした時に、元締は顔を青ざめさせていたので、問うてみた。


 「わしら船頭にとって、木曽川の流通を押さえられてしまうのは困ります。

城が出来たら、更に税を取るおつもりでしょうか?」


 「更に税をか・・・。それも良いな」


 わしの返答に元締は更に顔を青ざめさせる。


 「しかし、税を取るより良い案がある。

 わしは、この中井戸村に湊を作ろうと思っている。

 湊を作れば、木曽川流域より内陸から物資を買い集め、集積し、下流へ運び売ることが出来るからな。

 そして、湊が出来れば、舟も集まり、より効率的に船を運用することが出来る。

結果的に、我が領地は更に栄えることになる。」


 わしの話に、船頭は唖然としている。


 「元締よ、わしに従え。そうすれば、木曽川の物流において様々な恩恵を与えてやろう。

 しかし、従えないと言うのなら、其方等の生業に支障が出るかもしれんなぁ」


 微笑みながら元締に従うよう勧告すると、元締めは再び顔を青ざめさせる。

 ここで従えば、湊や舟の運航に様々な便宜を図るが、従わなければ、舟の運航を妨げたり、税を多く取るなどの不利益を課すかもしれないと言う意味は伝わったようだ。


 「殿様に従わせていただきます。どうか御便宜を御図りくださいませ」


 元締は跪き、従う旨を表明した。

 てっきり、仲間内で話し合うかと思ったが、それなりに発言力があるのか、早めに決断しなければより不利益になると思ったのか、すぐに意思表明をしおった。


 こうして、木曽川上流の船頭たちを従えることに成功した。

後は、周辺の領主たちと渡りを着けて、下流に売れる物資を調達しなければならないな。

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