F


 この世の最も愛する人と一緒に生きられればと思う。人生のうちにそんな人と出会い、結ばれ、子を育み、一生涯をともに生きたいと思う。


 幸福に生きられればと思う。そういう人生を歩めれば、人並みな幸せを手に入れられるのだと思う。それがいかに難しい何題だと分かっていても。


「…………」


 隣にはわたしの最も近く最も遠い人物が小さく息を立てている。あなたと一緒に生きられればと思う。難しい事だとは分かっている。


「…………」


 わたしも寝息を立てるフリをしようと思う。あなたの体温を感じ、明日を待とうと思う、少なくとも、今日だけは世界は合致しているから。


                (了)




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短編】昏と揺【完結】 月山 馨瑞 @k_tsukiyama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ