ある高校生と、誰かのお話。

いよ

三年前と三年後に。

「三年。か。」


「なに?急に?」


「いや、なんとなくね。三年ぶりだから、

節目というか。三年ってなんか、感慨深いなぁって。」


「そうね。三年…節目ね、例えば?」


「ん〜考えてみると特になにもないな。」


「じゃあ三年後、

あなたは何をしているかしら?

もしくはどう?三周年っていい方もできるわ。」


「どうかな、

あと詩を二年半書き続けたら詩人三年か。

バンドを二年続けたら結成三年目になるね。

ってことはあと二年で卒業か…

卒業…か、別れの季節も『三』だな。三月。

でも三周年ってほど大それたものはないな。」


「三年…三月…ね。」


「三月…変化の季節。

誰かの三年目が多そうだな。

別れて出会って…」


「そうね。

三周年もね。」


「なんだ。

やたらと強調するな。」


「あら?

記念日は大切にしなきゃ。」


「別れの記念日もか?」


「なんでそうなるのよ。」






「別れ…か……。

なぁ、話を少し、聞いてくれないか?」


「いいわよ。」


「僕はね、別れが嫌いなんだ。

だから三月が、春が嫌い。

別れるたびに思うんだ、コイツ以上のヤツはいない。

でもな、そんな意地も出会いの前には敵わないんだ。

どうしてかな、もう嫌になってくるな。」


「ふーん。感慨深いって、そういうことね。 」


「ふーん。ってなんだよ、薄情だな。」


「そうかしら…」


「そうなんだよ。」


「じゃあそうね、今あなたに、どうしても別れたくない人はいるかしら?」


「どうだろうな…

いや、よ。」


「ふーん。」


「だからなんだよ、そのふーん。ってのは、薄情だな。」


「諦めたの?」


「………」


「そうなのね。」


「あぁ…

でも。もういいよ。」


「なによ、それ。

ほんとに別れたくなかったの?」


「どうしてそうなるのさ。」


「だってそうじゃなきゃ、

もういいよ。なんていわないわ。」


「……そうか。」


「そうよ。」


「そう…か。」






「なぁ、なんで時は進むんだろうな。

なんで僕らは出会うんだろうな。

なんだよ、何年目って。

時って…

いらないよ。

別れるんなら。

いや。

いらないのは

別れのほうかな。」


「なによ、諦めてないんじゃない。」


「そうかもな。」


「私。嫌いじゃないわよ、あなたのそういうところ。」


「そうか。」


「そうよ。」







「…じゃあ、私はそろそろ行くわ。」


「あぁ。」


「また会いましょう。」






「なぁ、次会うのはいつになる?」


「そうね。あら、ちょうど今日別れてから、三年後みたいだわ。」


「また、三年か……。」


「そうみたいね。」


「ふーん。」


「あら、あなたも案外、薄情じゃない?」


「どういうことさ。」


「さぁね。

………そうだ、

会えるといいわね『居た』って人に。」


「そうだな。

いや、

ん、

いや、

そうだな。」


「なによ。」


「いや、なんでもないさ。

ほら遅れるぞ、早く行きなよ。」


「なによ、あなたが呼び止めたんじゃない。」


「あぁ、そうだったな、ごめん。

ほら、遅れるぞ。」


「そうね、じゃあまた三年後かしら。」


「あぁ…」


「…………やっぱりあなたも。薄情じゃない。」




「…………。

なぁ。

まだ…。」


「なに?」


「……まだ『居る』んだよ。

『居た』ってやつは。」


「へぇ…何よ急に。」


「いや…でもな。

そいつももう少しで、

また。

『居た』人になる。」


「ふ〜ん。」


「ふ〜ん。

って…なんだよ、薄情だな。

ほんとに、薄情だな。」


「あら、

臆病なのね

……

でも。

嬉しかったわよ。」


「なんだそれ。

薄情な上に意地も悪いな。」


「あなたには負けてられないだけよ。」


「それは僕が負けてるってことか?」


「そうじゃないわ。」


「どういうことだよ。」


「互角かな

…と思っていたんだけどね。

今ので少し変わったわ。

まだ私の方が勝ってるみたい。」


「それは悪かったね、まだ子供だから。」


「あら、いいわよ。

わたしは案外嫌いじゃないわ。」


「ふ〜ん。」


「なによ。」


「いや、なんでもないさ。」


「そろそろ行かなきゃ。」


「あぁ、そうだな。」


「じゃあまた三年後ね。

またこの場所で。」


「そうだな、

三周年の日に。

またここで。」


「あら、なんの三周年かしら。」


「告白から。」


「ふ〜ん。」


「また、ふ〜ん。かよ。」


「いや別に、嫌いじゃないわよ。

そういうの。

だけどね…」


「だけど?」


「そう、ね…



















じゃ、初めてのキスから三周年の日にまた、ここで、ね。」


「なんだよそれ。

勝てないじゃないか。

まぁでもいいか、

出会いに負けない別れも、

見つけられたし。」


「そうね。

まぁ、私としては、

あなたには負けられないってだけだけどね。」


「またそれか。

もういいさ、敵う気がしないよ。」


「またそれよ、

でもまぁ、次会うときには

負けてみるのもいいかもね。」


「なんだそれ。」


「ふふっ、じゃあね。また会いましょう。」


「あぁ、じゃあな。絶対ここで、また会おう。」

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ある高校生と、誰かのお話。 いよ @iyo_CoCoNuts

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