第40話 泣き虫は美しくないと思いませんか? 4
斑賀先輩は彼らの一切を話した。
「そうだったのですか。で、わたくしを止めに来たと?」
「ええ、やっぱり貴女を止めるのはアタシ達の役目でしょ?」
斑賀先輩達はサマンサの家族のようなもの、戦うのは辛いはずだ。しかし今、彼らは家族として責任を負う覚悟をしてここに立っている。
「もう終わりよ、サマンサ。『不死鳥の門』は動かない……諦めなさい」
「嫌です」
サマンサは食い気味に返す。
「まだ……まだ終わりません。一度や二度失敗がなんです? 大勢が立ちはだかったからなんです?この程度でわたくしは諦めません」
「何を……! 貴様とてわかっているはず、
「お黙りなさい、ミドル! 今回は感情物質が足りなかったんです! もっと沢山集めればきっと成功する! 今度は日本中の人間から集めてやる……それでもダメなら世界中から……!」
「サマンサ……!」
彼女はもう、現実を見ようとしていない。可能性という名の呪いを背負っているんだ。このまま放置しておけば永遠に失敗を重ね続けることになる……どんな犠牲を出そうとも。
「しょうがないわね……皆、やるわよ」
「承知」
「やっぱり、こうなっちゃうのね……」
「仕方ねぇか」
斑賀先輩達は構える。
「戦うのですね。わかりました、受けてたちます」
「行くわよ!」
4人は一斉に動いた。その初動を見ただけで彼らの本気が伺える。4人は一瞬でサマンサを囲み、仕掛ける。人間の戦いとはかけ離れた高速戦闘が繰り広げられる。この息付く暇もない打ち合いは戦闘型ヒューマノイドならではと言えよう。
流石のサマンサも五指4人はが相手では苦戦を強いられざるを得ない。サマンサは攻撃により柱に打ち付けられる。
「やりますね、しかし、これはどうですか?『トルネード』!」
サマンサの変化した腕から竜巻が発生する。この技は眼前を無差別に巻き込めるため多人数の相手する時に効果的……故に今の戦況にピッタリだ。
「リング、リトル、お願い!」
「おっけぇ!『弾丸輪』!」
「よっしゃあ、改良した小型ミサイルの出番だぜ!」
2人が発射した炸裂弾とミサイルは竜巻の根元に命中し、その爆発で竜巻をかき消した。
「いいわよ2人とも!」
流石は斑賀先輩、指示が的確だ。生徒会長をやるだけあって仲間の統率力は高いようだ。
戦法的には主な近距離戦闘をミドル、その補助と司令塔を斑賀先輩、中遠距離からのサポートをリングとリトルと言った感じか。
ほぼ完璧なまでのチームワークだ……これではサマンサは手も足も出まい。
攻防は続き、遂にミドルがサマンサの左腕を斬り落とす。
「これで更にこちらが有利になったわ。サマンサ、そろそろ諦めたらどう?」
「冗談を言わないでください。しかし、確かに腕を持っていかれたのは宜しくないですね。仕方ありません、右腕をやられる前に切り札を出しましょう」
「切り札?」
サマンサは袖からフェイスマスクを取り出した。
「それは!?」
それは私達が見慣れたものに似ていた。説明されなくとも外見でわかる。紛れもなくソルジャーの仮面だ。
「リーベのお坊ちゃんが使っていた試作型か……!?」
「ええ、改良して隠し持っておきました」
「馬鹿な、ヒューマノイドがそれを扱えるわけが……!」
「さぁ、それはどうかしら」
サマンサは不敵に仮面を装着する。すると、瞬く間に光が辺りを支配した。
「まずい!リトル、止めて!」
「あいよ、ミサイル発射!」
光の源を目掛けてミサイルが飛んでいく。爆発と同時に光は消え、かわりに爆煙が舞う。
皆が着弾地点の方を見る。命中していれば粉々になる威力だったが……
数秒経って、静まり返ったフロアにハイヒールの音が響いた。ゆっくり音は近づいてくる。
煙が晴れてきて、装いを新たにした彼女の姿が見えた。
「なるほど、これがソルジャーの力ですか」
サマンサは健在だった。そして、彼女が身に纏う漆黒のスーツはソルジャーのそれであった。
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