第17話 泣き虫の夢は叶いますか? 1
ティアはつい先週まで駅周辺のマンションに1人で住んでいたが、今は神凪家で暮らしている。
家には無数のレーダーが設置され、肉眼では分からないがバリアも備え付けられた。それも先日のように身内が人質として拉致されることを防ぐためだ。
ティアが家で暮らすにあたって、両親には雑な理由を付けて説得したが、快く受け入れてくれた。特に母さんはティアを心底可愛がっており、一生家にいてくれと言う始末である。
そんなわけで今は4人で休日のランチをとっている。今まで私の隣の席は誰もいなかったが、今はティアが座っている。なんだか姉妹が出来たみたいで不思議な感じだ。
「流先輩どうしたんだろうね。結局あれから1日も学校に来ずに休みに入っちゃったよ」
「あの流先輩が4日も風邪なんて……」
説得が上手くいかなそうだったので思い切って仮面を託してみたが、何かあったのだろうか……? 万が一にも誤って仮面を割ったなんてことはないと信じたい。
先輩の家を尋ねてみようか……ミドルを倒すには彼の力が必要だ。もし、ミドルとリングのコンビに勝負を挑まれたら勝ち目はない。
現時点で倒した五指は1人。交戦した五指が2人。そのうち1人は確実に私よりも格上。残り2人の五指は容姿も能力も不明。この現状見てもやはり戦力の拡大は必要だ。
「臨時ニュースをお伝えします。今日11時30頃、シズク町センタービルがエビルマシンによって占拠されました」
うわ、これだ、臨時ニュースはいつも悪い知らせを私に運んでくる。
「センタービルの内部には未だ職員が取り残されており、保安部隊は救出の隙を伺っています。……今入った情報です。占拠しているエビルマシンは2体、先日シズク駅で発砲事件を起こしたエビルマシンの仲間と見られており、『センタービルの人々の命は我ら五指の手の内だ。ソルジャーよ、来てみろ』との声明を出しています」
ミドルとリングだ……いよいよ今日は私を倒す気だな。しかし、ここまで煽られたのだ、行くしかあるまい。
私とティアは急いで支度して家を飛び出した。ソルジャーに変身して、建物の屋根を飛び移りながら進んでいく。
「ティアは離れたところから支援よろしく」
「わかった」
センタービルは消防や保安部隊の車両にぐるりと囲まれており、入口正面にいる五指2人と睨み合いが続いていた。
私はその間に颯爽と参上する。
後ろから「あの時の黒スーツの女だ」「ソルジャーが来た」などと保安部隊の声が聞こえる。
「ガラクタになりたい不届き者がいると聞いたのだけど、ここでよかった?」
「ええ、ちなみにゴミになるのはウチらじゃなくてそっちだけど」
「あんたら今日こそ終わりだよ」
「2対1でよくそこまで余裕が持てるわね」
一応煽ってみたはいいものも、正直戦力差は歴然である。どうしてもリング1人の相手をするのが限界だ。ミドルに関してはタイマンでも勝機が薄い。どうやら武器を新調してきたようだ……この前とは雰囲気が違う。
「気づいたか……?ピラニアを改修してきたのだ。これならソルジャーのスーツも斬り裂けよう」
喰らえば文字通り喰らわれるという確信がどこかであった。私を両断するに足る武器がそこにあるという恐怖は否めない。
しかし、必殺武器を用意してきたのはあちらだけではない。劣勢でも勝利を手繰り寄せてやる。
「来なよ。私の拳と貴方の剣、どちらが上か試すとしよう」
「いや、暫し待たれよ。今のままでは役者不足である」
役者不足?ティアのことか?
「ルイ、高速接近反応だ!なにか来る!」
「まさか、五指がもう1人!?」
「いや、生体反応がある…人間だ!」
「まさか…!?」
直後何か近づいてくる気配を感じた。しかしそれは未知のものではなく、どこか自分に近いものを感じた。
着地で地面を割り、煙を撒き散らしながら彼は登場した。
漆黒に輝くその姿は正しくソルジャーである。
「まさか、流先輩…!?」
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