第6話 泣き虫でも友達を守れますか? 2

 最近の小学生は近所の公園で遊ぶことはないのだろうか。学校から帰ったら携帯ゲーム機をインターネットに繋いで、全世界のプレイヤーと対戦をしたり、タブレット端末の動画サイトで好きな動画でも見ているのだろうか。それとも親に勉強を強いられているのか。


 オレンジ色の日光に照らされた公園はがらんとしていて、なんだか私を寂しい思いにさせた。


「要するにティアはヒューマノイドで、五指と戦うソルジャーの適正者を探すためにシズク高校に来たってこと?」


「うん……ごめんね今まで隠してて。それでルイにはこれからエビルマシン達から町を守って欲しいんだ」


 いつも陽気なティアが今は俯いて目を合わせない。


「そんな、やだよ。今日死ぬ思いしたのに、これからも戦えなんて……」


「ルイならやれるよ! いや、これはルイにしか出来ない!」


「そんなの分からないでしょ!今日は偶然勝てただけで、これからはもっと強い敵が出てくるかもしれない……」


 あのリトルとかいうヒューマノイドは明らかに手下とは雰囲気が違った。戦わずともわかる……あいつは強い。しかもティアの話によればあいつと同格かそれ以上の敵が5人もいる。


 一度は勢いに任せて戦ったけど……これからもなんて、そんな勇気は私には無い。


「ティアはさ……私のことどう思ってるの?」


「え……?」


「私のこと……ロボットと戦う道具だと思ってるの?」


「そんな事ないよ!ルイはボクの友達……」


「友達に命をかけて戦えって言うの!?」


「それは……」


「私たちの友情なんて見せかけだったんだ。私がソルジャーの適正者だったから……使えると思ったから友達ごっこしてただけ」


「違う!ソルジャーの事は関係ない!ボクはルイが大好きなんだから……!」


「ロボットのティアには、友情なんてわかりっこない!どうせそれもプログラムなんでしょ!」


 ティアには悪いけれど……もう怖い思いはしたくない。


「ごめん、ティアのお願いは聞けない……」


 ティアを置いて私は1人で家に帰った。久しぶりに帰り道を一人で歩いた。



 家に着いたら自分の部屋に行き、そのままベッドに倒れ込んだ。私の心には色々な思いがあったが、散らかりすぎて逆に真っ白だった。


 一度瞬きしているうちに朝になっていた。時計の針は10時を指している。


「寝ちゃったのか……今日が休みで良かった」


 自分が思っていた以上に疲れていたようで体がダルい。


 やることが思いつかず、とりあえずテレビをつけてみる。ニュースでは昨日駅で起きた騒ぎの話題でもちきりだった。


「昨日、シズク駅で起きた発砲事件ですが、現場から飛び去った戦闘型ヒューマノイドの行方は分かっておらず、保安部隊は創作を続けています」


 こんなものを見ていたら昨日の記憶が蘇ってきそうで嫌な気分だと思いチャンネルを入れ替えようとする。


「今入った情報です! また戦闘型ヒューマノイドが再びシズク駅に現れました!」


 リトルめ、来たのか!?また来るとは言っていたけど、こんなに早くとは……それも1人で。


「上空からの映像です! 保安部隊が出動し、エビルマシンを取り囲みます!」


 保安部隊は5年前のロボットによる一揆の後、エビルマシンから人々を守るべく編成された部隊で、対ロボット用の武装を持っている。


 そうだ、私が行かなくても保安部隊がいる。


「保安部隊が攻撃を開始しますが……そんな、ヒューマノイドは攻撃をものともしません!」


 戦闘型ヒューマノイドであるリトルがここまでの性能とは……リトルは保安部隊を軽くあしらうように再起不能にした。


「全滅です……保安部隊、全滅。なんということでしょう……ん?あれは?」


 モニターにはリトルに立ち向かう人影が映っていた。


「少女です! 高校生の少女がヒューマノイドを食い止めています!」


 間違いない……ティアだ。私が戦わないから、あの娘が戦ってるんだ。自分は戦闘に不向きとか言っておいて……


 テレビのモニターから目を逸らすと、スクールバッグからはみ出たソルジャーの仮面が見えた。


「そう言えば、昨日返すの忘れてたな……」

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