第10話 カノンちゃんのヒミツ



 どうやら、俺はこの妖精みたいに可愛い女の子とセックスをしなければならないらしい。

 そうすることで、彼女は救われる。


 待てよ、そもそもなんで伝説の勇者を欲しがるんだ?

 自分の大事な処女を投げ打ってまで成すことなのか?

 まぁ、別次元の話だもんな、事情なんて俺には理解できないだろう。

 そういう世界なんだ、あっちは。


 そういえば、向こうの世界の俺は死んだって言ったっけ。

 なら、こっちの世界にもカノンの分身がいるってことだよな。

 ……絶対可愛いんだろうな。


 耐えきれない暑さに目を開ける。

 目の前にいる女の子は、こっちを向いてすやすやと眠っている。

汗を書いた額がキラリと光る。

一瞬だけビクつくが、流石に二度目の罠にはかからない。

いちいち驚いて飛び跳ねてるわけにはいかないからな。

 

まぁ、ちょっとくらい、髪の毛とか触っていいよな?寝てるしな?

サワっても...いいよな?


あれ、左手が動かない。

 手に何か引っかかっている。

 左手をゆっくりと布団から出すと、それに対応するようにカノンが動き出す。


「これって……!」


 カノンの右手が俺の左手とひっついて離れない。

 それもそのはず、俺の一本一本の指に容赦なくカノンの指が挟まってる。

まるで恋人のそれのように結んであるのだ。


「……これは……やられたわ、カノン」


 顔を赤らめると、右手を出して頭を撫でた。

 柔らかい髪。

 いい匂いがする。

 風呂に入った後なのか、すっごく甘くて美味しそうな匂いがする。

 ……これが女の子なんだ。


 そういえば、俺って風呂入ってないよな。

 カノンが起きる前にシャワーでも浴びさせてもらうかな。


 ゆっくりと起き上がる。

 カノンの絡まる指を解いてから、カノンを乗り越えてベッドから出る。

 ピンク色の壁紙がとても似合う。

 やっぱり、お嬢様なんだな、そう思いながら俺は部屋を出ようと足を踏み出す。


 なんだか腰回りがきつい。

 それに、ポジションが悪い。


なんだか、パンツがパツパツなんだが。

え、これって、パンツ食い込んでね?


 冷や汗をかきながら、ゆっくりと自分のズボンの下に目をやってみる。


さわさわ。

ブーメランパンツ?

なわけねぇだろ!

おいおい、待ってくれよ!!


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 俺はあまりの衝撃的な姿に心の底から悲鳴をあげる。


「……なによ、朝っぱらから。あ、おはよー。頭痛は治ったかしら?」


「頭痛とかそれどころじゃない! こっちの方が頭痛くなるわ馬鹿野郎!」


 俺はベルトを外すと、ストンとズボンを下ろす。


「なんで、パンティー履いてんだ俺!」


 俺が履いていたのは、ピンク色のリボンがついた可愛らしいパンティーだった!

 女用で考慮されてない股間は、もっっこりと俺の突起を強調されてるぞ!


「仕方ないでしょ。リュートが当分起きないから、仕方なくよ。当たり前じゃない、男物のパンツなんて家にないわよ」


「そりゃわかるけど、パン……! てか、なんで俺パンティー履いてんだよ!」


「何度も言わせないでよ、だからあなたが……」


「違うって! 俺のパンツを脱がせたのかよ!?」


 顔を真っ赤にしながら恥ずかしさを露わにする。

 こんな美少女に、こんな美少女に見られるなんて……!

 卑猥だな、最高かよ! じゃなくて!!


「当たり前じゃない。風呂に入れるでしょ、ヨダレまみれだったし。汚いままベッドに寝かすのも嫌だし」


「でも……! あれ、なんか俺の体甘い匂いがするぞ!」


「当たり前じゃない、シャンプーとボディーソープを使ってあなたのことを綺麗にしてあげたんだから」


 キョトンとした王女様は、なにを気にしているのか全くわからない。


「ってことは、お前……! そん時、一緒に……裸……!」


「え、そうよ。私も裸じゃないと石鹸が服についちゃうじゃない。なにをそこまで狼狽えてるの?」


「カノン! 俺のその……見てないよ、ね?」


 顔から火が吹きそうになりながら、最終確認を行うが、カノンの顔を見るとなんとなくどう答えるかはわかっていた。


「見たわよ。どうせそのうちエッチするんだから一緒よ。てか、あなた、デカすぎ。なんか自信なくなってきたわ」


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 起きてればよかったぁぁ!!!!


 はじめての異性とのお風呂が、まさか気絶している時だったなんて!

 内心、彼女とのはじめてのお風呂、期待してたのに!


「ほんと、ニホンジンってそんなことばっかり気にして。私は男の子を実際何回もお風呂に入れてきたわ。今更それを見ても、なんとも思わないわよ」


「カノンそれ、子供だからだろうがよぉ!」


 頬杖を立てながら寝そべるカノン。

 パンツがだんだん膨らんでいくのをみると、少しだけニヤける。

 そして、何かに気づいたリュートは後ろを向いて股間を確認した。


「カノンのエッチ!!」


「はっはー、私のは見せないぞ、流石に恥ずかしいからナッ!!」


「カノンのエッチ! エッチ!」


 あまりの恥ずかしさに、俺は逃げ出した!

とりあえず、カノンにこのもっこり具合を見られない場所に避難だ!


俺は部屋から出ると、右に走り出す。


「え、ちょっと待ってよ!」


 カノンは飛び起きると、部屋の奥に向かう俺を止めようと追いかける。


「ねぇリュート! そっちに行かないで!」


「ついてくるな! 俺はこれ以上……うわぁ!」


 盛り上がったレバーが腹の前で上下する。

 辱められた俺が向かう先は、電気の付いていない暗い部屋。


 てか、広すぎだろ!

どんだけ広いんだよぉ!


「ねぇ、お願い! 止まって!!」


 俺は追ってくるカノンから身を隠そうと奥のドアをあける。


 さぁ、入ろう!


 と、ドアを開けると、そこには男性には理解できない空間が広がっていた。

虹色に光り輝く空間を見ると、流石の俺も度肝を抜かれたよ。


「なっ……! これはぁ……!」


 詠嘆の声を上げると、間も無く後ろを振り返る。


「カノンさん……マジで?」


 カノンは、頭を抱えると、その場で崩れる。


「……見たわ……ね?」



 つづく。

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