第5話 友達と一緒に
小高い丘の上に建つちょっとお金持ちぐらいの屋敷に黒野華凛は暮らしている。
彼女は悪魔の力に目覚めていたが、今でもそれを両親には内緒にしていた。友達の二人にはばれてしまったが、言わないと約束してくれたし、やはり出来るだけ言わない方が良いと華凛は思っていた。
悪魔は世間では良く思われていないことの方が多いのだから。
事件のあった翌朝、昨日のことがニュースになっていた。ニュースは犯人グループの残党が廃坑に立てこもり、通報を受けた警官が乗り込んで逮捕したと報じていた。
調査の結果、犯人のグループは悪魔を騙っているだけの人間と分かり、仲間割れの末に炭鉱を爆破、警察は逃げた壮平の行方を追っていると伝えていた。
華凛はいつものように両親とテーブルの席について朝食を食べながらテレビを見ていた。
ニュースを受けて、両親は安心した吐息を吐いていた。
「事件に悪魔は関わっていなかったんだな」
「困るわね。人間に悪魔を不当に貶めるようなことをされちゃ」
事件には本当は悪魔が関わっていたのだが、それは言わない方がいいと華凛は思っていた。
それにもう一つ華凛が思い始めていたことがあった。それは……
考えようとしてもう学校に行く時間が迫っていることに気付く。
急いで朝食を食べ終え、華凛は速やかに学校に出かける準備をして玄関に向かった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつものように見送る両親と玄関で言葉を交わし、華凛は今日も学校に向かう。
いつもなら地域のグループで集合して登校するところだが、今日はその前に屋敷の門のところで待っている二人がいた。
「お待ちしていましたわ、華凛さん」
「悪魔と登校、登校♪ 楽しみ」
お嬢様の優雅な笑みを浮かべる陽菜と跳ねるように喜ぶ雅だ。
華凛はいつもの朝にはここにいない二人の姿に、不思議に思って訊ねた。
「どうしたの、二人とも。二人は別の地域の班じゃ……」
「それなら話は通しておきましたから大丈夫ですわ。今日は仲良しのグループで登校すると申し出ました。班長の方からは好きにしていいと了承を得られましたわ」
「本当に好きにして良いわけじゃないと思うけど。学校の決まりなんだし、怒られるよ」
「今日だけ、今日だけですから」
「うん、まあ今日だけならね」
「えへへ」
華凛が了承すると、雅が嬉しそうに腕を取って隣にひっついてきた。
陽菜も困った子供を見るように笑みを浮かべ、隣を歩きだす。
三人で学校への道を歩いていく。
華凛には最近思い始めてきたことがあった。それは、悪魔が人間を困らせるという話だったが、人間も悪魔を結構困らせるということだった。
でも、悪い気分ではなかった。朝の空気は気持ちよく、幸せの気分を運んでくれる。
「華凛さん、昨日は帰ってから何をされました?」
「別に何も」
「何か悪魔らしい儀式とかは?」
「それは雅ちゃんの方が詳しいよね」
「任せて。いろいろ試したいことがあるの」
「では、今日の放課後も集合ですわ」
「わたし達の約束の場所に」
「あはは、お手柔らかに頼むよ」
今はこの関係を続けよう。青い空の下を三人の少女達は仲睦まじく歩いていった。
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