第11話「悪い奴って長生きしない?」

 肉のかたまりが歩いている。その肉は生意気にも衣服を身につけていた。

 ゴードン帝国最強のアスラ艦隊提督トップラスである。

 彼はふたりの供の者を引き連れて、ドシドシと仄かに光る灰色の廊下を歩いていた。

 脇をつき従うその男たちは、それなりにがっしりとした体格をしており、見るからに屈強そうなボディガードといった感じだ。だが、主人があまりの巨体のため子供のようにしか見えない。

 そんな彼らがガリーの執務室にたどりついた。トップラスはもどかしそうに扉が開くのを待って、開くがはやいか室内へと飛び込んだ。彼の重さで周囲がゆれたように感じられたのも、あながち気のせいとも言えないだろう。

「これはようこそ。トップラス提督どの」

 ガリーは立ち上がり、少々しらじらしく手を広げた。

「待っていたぞ。さあさあ、こちらへ」

 彼はトップラスを自分の座っていた椅子に座らせようと身体をずらした。

「ガリー総督。そんなことよりもナオト・パレスはどこだ?」

 トップラスは椅子のことなどまったく眼中にないらしく、すぐさま室内をキョロキョロと見回した。

「見てのとおり、ここにはおらんぞ」

 ガリーはとぼけた顔をしてそう言った。

「今、別室にて傷の手当てをしているところだ。私としては捕虜の傷の手当てなどする必要もないと思うが、まあ確かに死なれては困るので、貴殿の言うとおりにしておいたぞ」

「そうか、そうか」

 トップラスは至極満足そうにうなずいている。

「それでは、はやく連れていってくれ」

「いいだろう。動けぬので部屋まで出向いてもらうことになるぞ」

 ガリーとトップラス、そして従者たちは執務室をほどなくして出ていった。



「この部屋だ」

 ガリーがある部屋の前で立ち止まった。

「ここか!」

 トップラスが待ちきれぬといったふうに足踏みをする。

「だが、トップラス」

 トップラスの出鼻をくじくように、ガリーは言った。

「最初に言っておくが、やつは拷問のために目をやられている。室内は多少暗くなっているが、足もとには気をつけるんだぞ」

「おお。そうか。すまんな。よく教えてくれた。ふむ、気をつけよう」

 彼は心ここにあらずといった感じである。

「いくぞ」

 両脇にひかえる従者に声をかけると、彼はゆっくりと一歩前に進んだ。

───シュッ───

 扉が軽い音とともに横へとスライドした。

 確かに室内は薄暗かった。

 トップラスはそろりと一歩を踏み出す。男たちは油断なく目を光らせながら、そんな彼の後ろにつき従った。

 だが、それほどの暗さではないようだ。

───シュッ───

 その時、彼らの後ろで扉が閉まった。

「………」

 トップラスは身じろぎもしなかった。

 彼は目的のもの以外、まったく頓着していないようだ。おそらく、ガリーが一緒に室内に入ってきていないということにも気がついていないのだろう。

 そしてトップラスは目をこらした。

「おお……」

 彼は感嘆の声をもらした。ようやく求めるものが目に入ったからだ。

「ナオト・パレス」

 トップラスは一瞬なぜか残念そうな表情を見せた。

 どうやらナオトが、いまだに枷をはめられ、鎖につながれて壁に張りつけられているのを想像していたようである。

 部屋のちょうど中央にベッドが置いてありその上にナオトは寝かされていた。それ以外には何もないようである。

 仰向けになっている彼の身体には何もかけられておらず、ビリビリに裂かれた衣服も今はもう新しいものに着せかえられていた。

「ふむ……」

 トップラスはあたりを見回した。見たところ、彼が自艦のスクリーンで見た部屋とはちがうようだ。おそらく、ナオトが拷問を受けていた部屋は、こことは別の場所だったのだろう。

 トップラスはそう思いながら、ナオトに近づいていった。

 従者の男たちは入ってすぐに入口付近の場所で待機姿勢をとっていた。彼らはそれぞれ主人に、そして室内に目をこらし、不測の事態にそなえている。

 ベッドの上に寝かされたナオトは死んだように目を閉じていた。トップラスはそれを覗き込む。

「まさか死んだんじゃないだろうな…」

 だが、ナオトの胸が上下しているのを確認すると安心したようである。

「おい。お前たち。この男を連れていくぞ」

 トップラスは扉の横に立つ従者に声をかけながら、その巨体をゆっくりと後ろに向けようとした。

 その瞬間────

「わっ?」

 いきなり室内のあかりがついた。暗がりに目がなれていた彼らは、一瞬なにも見えなくなってしまった。

「な、なんだ?」

 トップラスはさほど大きくもない目をしばたたかせた。

───ビィン…ビィン……

 そのトップラスの耳にかすかな音が聞こえた。それはレーザー銃の音であると、彼にははっきりわかった。

「う……」

 ようやく視力を回復した彼は呻いた。

「な…んと…」

 彼の目は信じられないものをとらえた。

 さきほどまでベッドに寝かされていたナオトが、起き上がってトップラスを見つめていた。しかもその手にはレーザーが握られている。そして、銃口はまっすぐトップラスへと向けられていた。

 そのとき───

「観念しろ、トップラス」

 聞き覚えのある声が後ろからした。急いで振り返るトップラス。

「!」

 そこにはガリーが立っていた。

「うぬう……」

 ガリーの足もとには、トップラスの連れてきた男たちが転がっていた。彼はそれに目をくれてから、こんどは悔しそうにガリーへと視線を向け、ねめつけた。

「こ、これはどういうことだ。ガリー総督」

 彼はチラリと後ろのナオトへ視線を走らせた。

「この男はナオト・パレスなのだろう?」

「その通りだよ。彼はまさしく銀河連邦宇宙探検センター地球本部新総裁ナオト・パレスだ」

 ガリーは楽しそうにそう言った。

「ぬぬぬぅ!」

 トップラスはガリーのその様子を見ていきり立った。今にも唾棄しかねない雰囲気だ。

「貴様! 裏切ったのかっ!」

 吐き捨てるようにそう言うトップラス。

「裏切ったのはあなたのほうでしょう」

 品のいい声がした。言わずと知れたナオトである。

「なにぃ?」

 物凄い勢いでトップラスは振り返った。彼の姿からは想像もできないほどの素早さだ。

「私が裏切っただとぉ?」

 彼はナオトをにらみつける。

「ちがうとは言わせませんよ」

 ナオトは静かにトップラスの視線を受けとめた。

 相変わらずレーザーはトップラスに向けたままである。表情はいつものようにぼんやりとしていたが、喋る言葉は辛辣だ。

「あなたは上官であるガリー総督を陥れたのです。自分がアスラ艦隊のトップに立ちたいがためにね」

「なんだと?」

 トップラスの額に脂汗が浮かぶ。

「いったいなんのことだ……?」

「そうなんだろう? トップラス!」

 ガリーが吠えた。

「ち、ちがう!」

 すると、トップラスの態度が豹変した。

「ちがうんだ!」

 彼は地響きが立ちそうなほどいきおいよくその場に倒れこんだ。そして土下座した。

 見ると、その巨体が小さく見えるほど縮こまっている。

「なにが違うというのだ。トップラス」

 そんな殊勝な態度の彼を見ても、ガリーの目はあくまで冷たい。

「貴様はこの私を騙し、帝王様の不興をかわせ、このような明日をもしれぬ惑星へと追いやったのだぞ。それを違うなどと、たわけたことをほざくのはたいがいにしろっ」

「わ、私は悪くない。私は悪くないのだ」

 トップラスは震えながらそう言った。

「まだ、そのようなことを言うか!」

 ガリーが怒り狂った。

「この場で貴様のことなど、くびり殺してやってもいいのだぞ!」

「ひぃぃぃぃぃ────!!」

 トップラスは短い手で自分の頭をかかえこんだ。

「私のせいじゃない、私のせいじゃないんだぁぁぁぁ─────!!」

 彼は悲鳴を上げた。

「あれは、あれは……」

 そう呟いたかと思うと、次の瞬間、彼は叫んでいた。

「帝王の命令だったのだ────!!」



 部屋は不気味な静寂に包まれていた。

「うううう……」

 相変わらずトップラスは床につっぷしたまま、震えて呻いている。

 その彼にレーザーを突きつけているナオトの顔は、まったくの無表情だ。

「………」

 黙ったまま、床でうごめく肉のかたまりに視線を向けている。

「な……」

 すると、ガリーの口から言葉がもれる。

「なんだとぉ?」

 信じられないといったふうに目を見開いている。

「そんなバカな……」

「うそじゃないっ!」

 とたんにトップラスが顔を上げて叫んだ。

「!」

 ガリーは彼を凝視した。

「貴様は知らなかっただろうが、皇帝は貴様を恐れておられたのだ」

「帝王様が私を……?」

 ガリーは戸惑いを隠せないようだった。

「そうだ」

 そんな彼にはかまわずにトップラスは矢継ぎ早に喋りはじめた。

「偉大なる帝王様は、貴様も知ってのとおり大変な御高齢だ。それなのにただのひとりもお子様がおられぬ。あんなに数多くの妃がおられるというのにだ。だが、生まれてきたとしても子供には不幸しか待っていなかったろう。もし、ひとりでも和子が生まれていたら、果してその子は成人できたかどうか………」

 彼は非常な恐怖を感じているのか、身震いする。

「帝王様は恐ろしいお方だ。あのお方は密かに、おのが身体を機械に変えてでも生き長らえ、いつまでも帝王の座にしがみつこうとなさったのだ。それほど権力に執着なさっておる。だが、それに異を唱える者もいた。お子がおられぬのなら、だれか有望な者を次の皇帝にと進言する者もでてきたのだ。そしてガリーよ。その次期皇帝に貴様が推挙されたのだ」

「なんと!」

 ガリーは驚いた。

「私のような軍人ひとすじの男が皇帝などになれようはずがない」

「帝王絶対主義とは言うがな。すべてのゴードン星人がそうとは限らぬということよ」

 トップラスはだいぶ落ちついてきたらしく声にも悲愴さはなくなっていた。いまだ、床に座り込んだままではあったが。

「現にこの私も帝王が一番などと思ったことなどない。というのも、現帝王は恐ろしいとは言っても扱いやすいただのおいぼれだからだ。私にとって、あのお方はうまく利用し、己の私腹を肥やすための道具でしかない。だから、貴様が皇帝になってもらっては大いに困るのだよ、私としてはな」

「おのれぇ……」

 ガリーはトップラスをにらみつけた。

「ふん」

 そんなガリーを鼻であしらうトップラス。

「貴様はゴードン帝国にとって有史以来の英雄なんだとさ」

 彼の顔はまさに不服そうだ。

「貴様を信奉する者たちはそう言っておるぞ。どうやらそういう世俗的なことには関心がなかったらしいな。その様子では」

 彼はにらみつけるガリーの目をにらみかえす。

「私に言わせれば、貴様などただ人がよくて戦うことしか能のない、愚かな奴としか見えてなかったがな」

「うぬぬぬ……よくもぬけしゃあしゃあと言えたもんだな」

 ガリーの顔色が変わる。あまりの怒りように、彼の頭から湯気でものぼりかねないほどだ。

「くそくらえだ!」

 トップラスはあざ笑った。

 さきほどまでの態度とはまるで違う。自分の置かれた状況というものをまったく考えてないらしい。

「だから、帝王から貴様を陥れろと勅命が下った時に、ひとつ返事で承ったのだ。そしてその見返りとしてアスラ艦隊提督の座を拝命したということだ」

「なんということだ……」

 ガリーは相当なショックを受けているようだった。

「私は帝王様を心の底から尊敬していたのに……あのお方が私にくださった数々のねぎらいの言葉はうそだったというのか……?」

「うそにきまっているだろうが」

 トップラスは事も無げに言う。

「帝王は非常に貴様を憎んでおったぞ。我が帝位を狙う簒奪者だ、とな」

「しかし……」

 ガリーは目を鋭く光らせて言った。

「だからといって貴様の罪は許されるものではない」

 意外にも、彼の口調からは心で渦巻いているであろう憤りは感じられない。どうやら、自分の憤怒を押し込めることに成功したようだ。

「帝王様のことは信じたくなかったが、どうやら貴様の言うことは真実のようだ。私自身の手で裁いてやりたかったが、貴様のことは地球人にまかせようと思う」

 ガリーはそう言うと、ナオトに目配せをした。

「とりあえず……」

 ここにきて、ずっと黙ってふたりの会話を聞いていたナオトが口を開いた。

「トップラス提督。あなたにはここで監禁されてもらいましょう。あなたの処遇は、あなたが葬り去ったケンイチ・ケレス総裁の愛娘に決めてもらいますから」



 それからしばらくののち、別室でのこと。

「パレス総裁……」

 ガリーが思い詰めたようにそう言った。

「ガリー総督。やめてください、その総裁というのは」

 ナオトが照れたように顔を赤くした。

「では、きみも私のことを総督と呼ぶのはやめてもらいたいものだな」

 彼の表情が多少なごむ。

「レナンドと呼んでくれてけっこうだ」

 彼らのいる部屋はガリーの執務室とは違うようである。他のあまりにも素っ気ない部屋とは違って、ここは、わりあい居心地のよい空間であった。

 壁は灰色ではなく、明るいクリーム色をしている。それになんといってもここには窓があった。ただ、外の異常なほどの太陽光線から室内の者を守るために特殊な色ガラスがはめられているらしく、外の風景は黒っぽい色ガラスを通してしか見えなかったが。

 窓のそばには華奢なテーブルが置かれてあり、その上には可憐な花が花瓶にいけられ飾られていた。だが、よく見るとそれは本物の花ではなく、本物そっくりのホログラフィーのようだった。確かに、この惑星では花など手に入ることはないだろうから、それはしかたのないことだろう。

 彼らはそんな部屋の中央に設置された座り心地のよいソファに相対して座っていた。

「わかりました」

 ナオトは破顔した。

「ではレナンド。あなたに確認しておきたいことがありますが、この惑星は危ないのではないですか?」

 彼の言葉につらそうにうなずくガリー。

「お察しのとおりだ。この惑星はもう間もなく巨大化した太陽に飲み込まれてしまう」

 彼は神妙にうなずくナオトを見ながら話を続けた。

「実は、私にはある特殊な能力というものがあって、当初はそのためにこの惑星へと派遣されたのだと思っていた。ま、派遣といっても、実質的な左遷だったがな」

「特殊な能力……ですか?」

 ナオトが不思議そうに聞く。

「感応能力というものだ」

「超能力ですか!」

 驚いてナオトは目をまるくした。

「そう大したものではないのだ。心が読めるというものではない。この惑星の住人はきみも見ただろう?」

「ええ。あのキノコの形をした生物ですね」

 ガリーはうなずいた。

「ロンギュス星人は言語体系がないのだ。彼らはテレパシーで相手と話をする。私は彼らの思考がわからないまでも、何を感じ、何が伝えたいかくらいの心の動きはわかるのだ」

 ガリーは彫りが深く、見ようによっては厳めしい顔をやさしそうに和らげた。

「当初の私はくさっていたよ。おのれのせいではなく、トップラスのやつの失敗を私になすりつけられ、その責任を取らされてこのような荒廃した地獄のような惑星に飛ばされてしまって……何も手につかなくてね。自堕落な生活を送っていたものだった。そんなある時、ロンギュス星人の清くて美しい心に触れたのだ。そのことによって私は立ち直った」

 ナオトはニコニコしながら聞いている。

「それなのに……」

 ガリーの声が一変する。

「惑星の調査を進めるうちに、大変なことにぶちあたってしまった」

 彼の表情は険しい。

「私は、さいさん本星に打診したのだ。ロンギュス星人の移民を。どこか安全で、彼らが住むことのできる惑星を探してほしいと。だが、それはどこか途中でもみ消されていたらしい。それともトップラスの奴の仕業か…」

 彼の唇がゆがむ。

「といっても、トップラスの話が本当だとすると、たとえ帝王様のところまで私の言葉が届いていたとしても、果して私の願いを叶えてくださっていたかどうか……あやしいところだがな」

 ガリーは目を閉じた。指を組んで頭をうなだれる。

「私は一体、これからどうしたらよいのだ」

「………」

 ナオトはそんな彼をじっと見つめてから、おもむろに口を開いた。

「どうです。レナンド。ロンギュス星人たちとともに銀河連邦に亡命しませんか」



「亡命ですって?」

 ノアが叫んだ。

 ようやくノアたちは用事をすませてガリーとナオトのいるところへやって来ていた。

 実はミューズ艦の軍人たちは、トップラスが乗艦してきた巡洋艦を占拠し、すべての乗員を武装解除していたのだ。ノアたちはここぞとばかりに好奇心まるだしで、軍人さんたちの手伝いとばかりに自分たちもその作戦に参加していたのだ。

「それよりも、ノア。ケガはなかったかい」

 ナオトはノアに逢うやいなや、彼女の身体や顔を眺め渡した。

「もう! やめてよ!」

 ノアは叫んだ。

「イヤらしいったら……大丈夫よ。このノアさまを見くびるんじゃないわ」

「ノア……」

 そんなノアにナオトは淋しそうな表情を見せた。

 だが、反対にホッとした人物がいた。シンゴである。

「やっぱりノアらしい反応だ」

 彼はあれからずっとノアの様子がおかしいと思っていた。しかも、ここにやって来て最初にナオトの姿を見た時の彼女の態度を見てさらに変だと思ったのだ。

 というのも、ナオトの傷を見るやいなや、血相かえて彼を傷つけたホルダーに食ってかかったからだ。

(たとえ夫人との間にいざこざがあったとしても、それでもケレス総裁は立派なのだ。ナオト博士では役不足なんだよ)

 そう心で思うシンゴは、すでにもうノアの父親きどりである。

(彼女の相手は僕の認めた男でなけりゃ…)

 ひとりでうなずくシンゴであった。

「それよりもどういうことよ」

 そんなシンゴの心など知るよしもなく、ノアはナオトに詰め寄った。

「亡命って?」

「いや、それがね……」

 ナオトがかいつまんで話すと、ノアは納得したようにうなずいた。

「あら。そうなの」

 彼女はガリーに顔を向けた。

「あなたも大変ね」

 彼女は情け深い表情を見せると言った。

「でも安心なさい。私たち銀河連邦にまかせとけば、ロンギュス星人の住める惑星なんてチョチョイノチョイよ!」

「チョチョイノチョイ……?」

 ガリーは困惑の表情を見せた。

「…………」

 ナオトはそんなふたりを見て苦笑した。

「それより、ノア」

 横からシンゴが声をかけた。

「どうするんだよ。お父さんのカタキは」

 ヨリやサヨ、タカオにケイタが彼の言葉にうなずく。みんな好奇心に満ちた目で彼女を見つめていた。

「ああ、そうだったわね……」

 みんなの見守るなか、ノアは考え込んだ。

「ふふん……」

 彼女の瞳が輝く。

「いい考えがあるわ……」

 ノアはひとりほくそえんで呟いた。

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