クジラのかみさま




 ぼくはクジラのかみさまをよみました。とってもおもしろかったです。

 このほんはゆめをかなえるくじらをめぐってひとびとがあらそいをはじめるものがたりです。くじらはとっても大きいです。でも、そのクジラはどこをさがしても見つかりません。ゆめをかなえるクジラだということは知られているのに、ふしぎに思いました。

 人々はお船に乗ってクジラを探します。

 けれど中々見つかりません。

 クジラはとってもおりこうさんで、かくれるのがじょうずです。

 そして――クジラを一人の女の子が見つけます。

 その先に待ち受ける真実を目の当たりにした時、僕は、いえ、私は何かを手に入れてしまったのでした。

 この作品は、児童向けの皮を被った、狂気に満ち満ちた作品でした。まさか、クジラの正体があんなものだったとは。

 それぞれの願い。クジラの願い。そして、クジラに出会った少女の願ったもの。人は願いを自分のために叶える。それは愚かでとても美しい。醜くて、しかし、それを決して誰も否定することができない。そんなエゴを感じさせるものでした。

 この時代、ネットというものが身近になり、情報があふれるようになりました。そして、小さな願いもまた簡単に叶えられるようになり、決して叶わない夢に人々は手を伸ばし始める。その行き着く先のことを考えもせずに――

 誰かを傷付けてまで願いを叶えるという傲慢と、その色鮮やかな描写。

 子どもを少年へ、少年を大人へと進化させていくようなそんな作品であると思いました。

 あなたはクジラに何を願いますか?

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