読書しない感想文

竹内緋色

『ダサい』の起源、語源。これは都市伝説でしょうか?




 読書感想文、など思えば四年以上書いていない。まあ、読書をして感想なんて、実は普通は出てこないんじゃないかな、などと思うのである。

 心の中に何かがあって、その心の中に灯った何かは言葉にすらできないもので、それを言葉にしろというのだから義務教育というのは中々に無茶苦茶を言ってくれる。いやまあ、きちんと書いたこともなのですけれども。

 何から書けばいいのか。私は自分が足りしかできぬし、そもそもその作品を読めば誰だってある程度同じ感想がでるのではないかと思う常日頃。なら、私は他の人が書かないような感想文を書こうと思う。

 まず、この作品との出会いを書かなければなるまい。そこから全ては始まったのだ。

 あれは、海外での傭兵活動を終え、帰国した時のことである。国外で傭兵なんてものをやっているから当然公安に睨まれる。故にこの国では私はニートなのだ。はい、嘘です。

 そんな中、ダラダラと書店に入り、たまには何か頭のいいアピールでもしてモテる男を演出したいなーと思いなんか頭のよさげなコーナーを死んだ魚のような目で眺めていた時、ちらと目に『都市伝説』と映ったのだ。仕事柄都市伝説に出くわすことが多く、これから先どんな都市伝説が待ち受けているのか心しないといけないという義務感からこの作品を手に取った。

 一分目からつい、引き込まれてしまった。なにせ、あのシルバニアファミリーの呪詛について書かれていたのだ。それも、巻き込まれた当事者の如く詳細に。とある団地で3つの家族が突如として動かなくなり、その家庭には例外なく遊びかけのシルバニアファミリーが残されていたという怪事件。作者はそのシルバニアファミリー事件を『ダサい』というキーワードから解き明かしていく。このシルバニアファミリーの呪詛は『ダサい』という言葉が生み出された一万年と二千年前から続いているというのだ。

 こういう根拠のない説というのは月刊ムーを読んでから信じなくなっていた私ではあるが、この作品に関してはかなり現実的に、科学的根拠に基づいての検証がなされている。

 まあ、中身は読めば分かるから省くし、なんかあらすじ書いちゃダメ、って教師に言われた記憶もある竹内緋色なのである。

 読書を何故、するのか。それは他人を自分の思考の中に落とし込むためである。口で文句を言われてもあまり気にしないが、小説などを読めば意外と素直にっ気入れてしまったりした経験などはないだろうか。私はこの作品を通して、時代をめくるめく人々の思いを実感した。私たちの踏みしめている大地には長い間苦しみ、そして喜びを感じてきた先祖の呪いと願いが染み渡っているのだ。人々がそれぞれの時代で何を想い何を感じ、『ダサい』という言葉を紡ぎだしてきたのか。それは読み手によって変わるものだろう。私が感じたのは祈りである。呪いは祈り。どうしても敵わない現実に対する願いの結晶。『ダサい』という言葉には時代を駆け巡るクロニクルが秘められているのだ。

 愛し合ってるかい?

 最後に、この作品はシルバニアファミリーの呪詛の被害者に配慮した書き方をされている。被害者と真摯に向き合った結果だろう。淡々と書かれた文章からはあまり窺い知れないかもしれないが、都市伝説の被害者のご家族から話を聞くということはとても難しいことなのだ。被害者家族が心を開いてくれたということは作者である大木奈夢さんの事件を解き明かしたいという真摯な情熱がご家族に伝わったからだということを忘れてはならない。

 この作品がもっと世に広まればいいと私はそう思いました。


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