第12話;現実の恋愛はやはり俺には難しい

優花とは付き合わない──いきなりの告白のカミングアウトに優花は頭がついて付いて行けてなかった。


「いや、え? それはどういう意味ですか?」

「そのまんまの意味だろ。俺は優花とは付き合わない、これはお互いの為でもあるからな」

「お、お互いの為なら! 圭一さんはいま、好きって言ってくれました。だったら、付き合うのがお互いとっての為になります!」


圭一の言葉に反発する様に早口で言う優花。


「おい、いつお前を異性として好きって言った? 俺が言った好きが友人として好きだったらどうする?」

「………それは」

「………………ごめん、意地悪言った。俺は優花が多分、異性として好きなんだと思う。すまんな、こんなあやふやで。こんな気持ちになったのが初めてでさぁ、まだ良く分かんないんだ」

「いえ。その、ごめんなさい。もう単刀直入に聞きたいんです。どうして?」


その言葉に圭一は沈黙する。


今まで三次元の女の子を好きになったことなんてない。だから、この気持ちが異性として好きなのかも良くん分からん。でも、これだけは言える。優花と居ると楽しい。なんだか何時もあるイライラも無くなるし、優花と居たいと思ってしまう。

分からないけど、俺はこれが『好き』の感情だと思ってる。


でも、な。俺は優花と付き合わない。さっきも言ったがこれは二人の為でもある。


考えてみろ、オタクと美少女だぞ? 釣り合うはずがない。それに、彼女にしても良いが、その場合俺は多分、彼女そっちのけでラノベとかに行ってしまう。まぁ、優花がそれで嫌がったり納得しないってのは分かってる。


「優花、俺はお前そっちのけで違う物に走るかもしれないんだぞ?」

「はい。それでも良いです。圭一さんと居て良いなら何でも」


相変わらず、重いなぁ。でも、それだけ好きで居てくれてるってことだもんな。少し嬉しい。


「でもな。これから言うことは先に言っとく、

「意地?」


圭一の言葉に優花は首を傾げる。そして、圭一がじっっと優花の目を見つめると、優花は少し頬を赤くした。


「俺は今まで一人で良いって思ってた。その生き方はこれからも変わらない。俺は一人で良い。それだけだ」


優花は意味が分からないのか少し首を横に傾け疑問げな顔で居る。


ずっと、今まで一人でやってきたんだ、それはこれからも変わらない。

オタクと分かりバカにしてくる奴ら、気持ち悪がる奴ら、沢山居た。それで一時期は少し中二病になりかけた。


まぁ、こんな説明は良いんだ。何を言っても結局、意地で終わってしまう。



俺は一人で良い。誰の助けも借りない。


そんな俺の意地とプライドが優花と付き合う事を許さない。


だったら、そんな意地とプライドは捨てろ? 無理だ。今まで同じ生き方をしていて今さら捨てるってのは無理がある。


それを全部、優花に説明した。俺の意地とプライドを───


「今までお前にやったことは謝る。通報するなり好きにしてくれ。お前がするなら受け入れる」

「そんな事はしません」

「じゃあ、諦めて帰ってくれ」

「それもしません」

「っ………だったら、なんだって言うんだ、俺はお前と付き合えないって言ってるだろ? それも自分勝手な意地やプライドで! そんな相手嫌いになれよ。もう、なってくれ」


お願いをする様に圭一は言う。でも、顔は悲しそうにも見えてまだ悩んでる顔をしている。


「圭一さん、私としましょ、エッチなこと。それをしてくれたら、諦めて帰ります。最後に貴方に愛して貰ったて」

「嫌だ。俺が罪悪感で耐えられない」

「なら、責任をとりましょう。相思相愛なんですから私たち」

「………」


もう、優花が何を言ってるか分からない。俺はそれが嫌だから付き合わないって言ってるのに何でそうなるんだ?……………


「意味が分からん。俺はお前と付き合わない」

「だったら、圭一さんの方が意味が分かりません。好きなのに、やっとお互いに好きになれたのに、付き合わないっておかしくありません?」

「だから、意地って言ってるだろ。こんな男はさっさと捨てろ」

「無理です」


きっぱりと断言して言う優花に肩を落として呆れる圭一。


「捨てろ」

「無理です」

「捨ててくれ」

「嫌です」

「もう! いい加減諦めろ!」

「嫌です!」


二人はここが道のど真ん中だと分かって居ないのか大声で叫び合い息を切らせていた。


「はぁ。良いですか? 圭一さん。圭一さんだって大切な同人誌を捨てろって言われたら嫌がりますよね?」

「まぁ、そうだな」


好きな物を捨てろって言う方がおかしい。そんなの無理に決まってるんだから。


「だったら、です。好きだから、圭一さんが何よりも好きだから諦めるなんて無理です」

「はあ?」

「意味分かんないって顔をしてますね。でも、それを言ったら私も圭一さんが言ってることは理解出来ません。お互い好きなのに付き合えないとか………。まぁ、今はそんなこと良いんです、私も意地を張ります。絶対に圭一を離す気はありません」


分からない。どうして、そこまで俺に執着するのか分からない。”優花は前に言ったカッコいい自分の好みだった゛って。それだけでここまで執着するものかのか?


「なぁ、優花。どうしてそこまで俺を好きで居られる? ただ好みの男って訳じゃないんだろ?」


俺は気になり優花に聞いた。優花も包み隠す事にはせずはっきりと言ってくれた。


「はっきり言うと容姿はどうでも良いです。あ、このどうでも良いは好みとか関係無いってことです」

「そ、そうか」

「それで、私が圭一さんを好きになった理由は、覚えてませんか? 

「去年あった出来事?」


去年って何かあったっけ? 俺と優花が会ってる訳ないしな。だったら、何がある? 出会っても居ないなら何がある?


暫く考えて居ると、優花が痺れを切らしてため息をついた。


「はぁ……えっと、ですね。去年の秋ぐらいでしょうか? 覚えてません?」


溺れた子供? 去年? うーん。何かあった様な……


「すまん。思い出せない」

「そうですか。それならそれでも良いです。川で溺れてる男の子が居てそこには沢山大人が居ました。なのに、誰も助けようとはせず。その中で一人だけ助けに行った人が居ます」


思い出した訳ではないが話の展開的にそうかな、と思って言ってみた。優花はコクりと首を縦に振って頷いた。


そんなので俺を好きになるものなのか、いや、そこは良い。好きになる理由は人それぞれだ。

でも、どうしてそこまで執着するのかは分からないが……


「単にカッコ良かったんです。誰も助け様とはしないのに、その中で一人だけ助けに行って、助けた子を叱って、忽然と何処に行く姿がカッコ良かったんです。それからでしょうか? 圭一さんに会ってみたいって思い始めたのは。それから段々、圭一さんが気になって行くに連れ、好きになってしまいました」


こんなけ言われてもその出来事が思い出せない。もしかしたら嘘かって思ったが優花の顔を見たらそんなの無いってのが分かる。


俺は優花を最初から好きだったんだと思う。


オタクである俺に告白して好き、と言ってくれた優花。皆の嫌われ者の俺に唯一他人で好きと言ってくれた優花が最初から俺は好きだったんだ。


だが、それを意地とプライドで隠して考えない様にしていた。いや、考えたくなかったんだ、三次元の人を好きになることを──


だから、これからもそれを突き通す。それが、俺の意地とプライドだ。



        


あれから、話は終わることは無かった。どちらとも意地を張って決して折れることはなくその日はそこで別れた。

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