第10話;夏休み……さぁ、ここから変わろう
今日から夏休みに入る。思春期真っ盛りの高校生二年なら友達、彼女彼氏と色んな事をするだろう。海やプールに行ったり、夏祭りに行ったりと案外少ないけどそういった事をするたろう。
俺、眉桷圭一も二年になってから友達らしきものが出来た。だから、皆でプールか海に行ったり、街で遊んだり、夏祭りに行ったりとする………と思う訳も無く夏休みに入ったら溜まってるラノベや漫画、アニメとかギャルゲーを消化しないといけないから忙しいんだ。
「兄さん、夏休みの間はそっちに泊まるからよろしく。じゃあね~」
そう言ってソラは電話を切って。俺は呆然とした。
いや、まぁ、良いんだけどね。優花も来るからどうせ十八禁ゲームは出来ないし………夜こっそりやろうと思ったのに………
「はぁ」
諦めの溜め息をついて目の前の原稿に目を向ける。
今は夏コミに向けての同人誌作りをしてるが全く進んでおらず。随分前から書いてるが良い案が全然浮かんでこない。
ある人がこう言った。
作家は締め切りをサボってなんぼだ――――と。
素晴らしい言葉じゃないか。これこそ作家の鏡と言える人だ。
「それって、現実逃避ってやつですよね?」
「ぐはぁ!」
優花から胸をえぐる様な鋭いツッコミを受け、力無く机に凭れかかる。優花は夏休みに入っても毎日俺の家に来てくれる。
まぁ、自分から言ったことだから追い出すことはしないけど、毎日来られるのも少し心苦しくなる。
もしかしたら友達と遊びに行くのに俺に家政婦を頼まれたから行けないなんて言っていたら俺は頼んでおいて心苦しくなってしまう。
「優花、その、なんだ。空いてる日ってあるか?」
「え。あ、はい! 私はいつでも空いてます!」
「お。おぉ、そうか………」
俺が言うからって空いてると嘘をついてる訳じゃないよな? いや、優花でも流石にそこまではやらな………………
今までの優花を思い出す圭一。
うーん、どうしよう。やりかねないんだけど!?
「ゆ、優花? それは本当に空いてるのか?」
「はい! あ、もし襲うのでしたら事前に言ってくださいね? 準備しますから」
「いや、襲う気はさらさらないけど………」
これじゃあ、分からないけど本当に用事はないのかな? なら、一つ誘ってみるか。
「優花、明日か、まぁ、いつでも良いや。どっか出掛けないか?」
「え」
優花は持っていたおたまを落として驚きの表情で固まってしまった。
「えっと、どうかした?」
「い、いえ。話的にそう言われるのは分かっていたんですけど。いざ言われると少しびっくりしますね」
いや、少しの驚きじゃないだろ。そんなに俺が誘うのは変か?
優花はカタカタ、と身体を震わせて愕然とした顔をしてる。
「で、何処に行きたい?」
そして、また拾い上げたおたまを落として愕然とした顔で俺を見てくる。
「まさか………偽物? いや、そんな分けない。匂いだっていつも通りだし、髪の長さだって変わってない、顔立ちもそのままだし………本物?!」
気持ち悪い速度で俺の分析をして最後は本物で驚くのか。
「次そんな反応してみろ。出掛けるのは無しにするからな?」
「へ?! あ、ごめんなさい!」
俺もそこもで鬼じゃないから許すが、次やったらどうしてくれようか。
俺が暫く睨みを利かせていると「うぅ、ごめんなさい」と謝って来たから直ぐに頭を撫でて「こっちも悪かった」と別に謝るところはなかったが自分なりに罪悪感を感じて謝った。
「………」
「どうかしました?」
「いや、何も………」
優花は首を傾げていたが直ぐに昼飯の準備でキッチンの方に行ってしまった。
(最近の俺、なんか変だな。いや、変過ぎる)
何が変って全部が変だ。優花を撫でたくなったり、優花を抱き締めたくなったり………キスをしたり、と何でそんなことをするんだ? いや、理由は明白だが今はそれから目を背けよう。
目を背ければ俺はいつも通りで居られる。それが自分も優花をも苦しめることだとしても俺は目を背け続ける。
ピンポーン―――ピンポーン―――
チャイムが鳴る音が聞こえ多分ソラだと思い俺が出よう、とすると優花が既に出ていてソラと出会していた。
「えっと、空助君?」
「あー、兄さん。やっぱり帰るね」
「いや、帰るな」
気を使ってなのか帰ろうとするソラを止めて中に入れた。
「兄さん、やっぱり僕帰るよ?」
「帰るな。いらん気を使うな」
ソラは申し訳無さそうにしてるが今は帰ってもらっては困る。
優花は友達の前では決して変な行動はしない。だから、ソラが居れば俺の身の安全が保証される。
「ねぇ、前に彼女ないって言ってたけど、水野さんは彼女なの?」
「え。あぁ………その、なんだ」
答えに困る質問をしてくるソラ。ここで彼女ないと答えると「じゃあ、何で居るの?」って聞かれ更に答えるに困る。
だからと言って彼女と答えるのも嫌だし。じゃあどう答える? それはそれで思いつかん………
意地でも優花を彼女って呼ぶのは嫌だ。そこは俺の意地を嫌でも通す。つまりプライドが高い俺は付き合っているとは言いたくないんんだ。
そんな俺の気を知ってか優花がお茶を持ってきてくれて、
「空助君、外、暑いよね~」
そう、言いながら空助の前にお茶を出して、俺の前にもお茶を出してきた。
ソラはそれを少し飲み、
「で、二人は………」
パタり、とソラは倒れてしまい俺は何が起きたか分からなく愕然としていた。
優花だけは平然としていて「よいしょ」と言いながらソラをベットに運んだ。
「はぁ、助けてあげたんですから、今度のデートで何かプレゼントして下さいね」
「え。あぁ、分かった」
「麦茶、飲まないんですか?」
「今は、喉が渇いてないから後で貰うわ」
「そうですか」
優花はキッチンの方に戻って行き。俺は目の前の麦茶を見て息を呑んだ。
(ソラ、大丈夫かな………)
ソラを心配してソラを見るとぐっすり寝てるだけであとは何もなかった。
多分、睡眠薬を飲まされたと思うけど、本当に大丈夫だよな?
「はぁ、大丈夫ですよ。睡眠薬を少し入れただけですから」
「そうか」
また俺の考えが分かったのか後ろからそう言われビクッと身体が反応した。
(こいつ………どうやってそんなの手に入れたんだ? それに、好きな相手の弟に飲ませるか? 普通………)
圭一はその日だけは優花に逆らうことはしなかった。
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