第9話;死にたい先輩

「なぁ、俺死にたいんだがどうしたら良い?」


今日も圭一は源二先輩に呼び出されて脅しが来ると思っていたら全く違うもの過ぎて呆気をとられていた。


(いきなりどうした? 意味が分からん)


何故そんな事を言うのか全く分からないのだが、先輩の死んだ目に絶望仕切った顔を見たらこりゃあ何かあったなって思い大人しく話を聞く事にした。


「あはは、優花にお前を脅してる事がバレてな。それで優花にこっぴどく怒られてなぁ、大嫌いって言われちまったんだよ」


それは、また変だな。何と無くは優花に言ってないのは分かったがそれが優花にバレるとは思ってなかった。

それから、絶望仕切った先輩からどう言う経緯でバレたのかと訊いた。


要点を絞ると、まずいきなり圭一さん私の事言ってるでしょから優花の怒声が始まりそれを訊いた先輩はバカなのかそれを俺を脅してる事だと思ってしまいそのままベラベラっと全部喋ってしまった様だ。


自業自得――――それしかない。そんな先輩に俺は呆れに呆れてため息をついてから「ごめんなさい」っと声を掛けた。それに先輩は首を傾げて「別にお前のせいじゃねーよ」っと誤解をしてくれてとても助かった。


いや、その、話を訊く限り俺のせいだ。いや、まぁバレても良いんだ。それに半分以上自業自得の先輩もあるから謝る必要は無いんだが先輩を見てると哀れで謝りたくなった。


まず怒られたのは昨日だと言う。そして今までバレずに居れていた。そこから考えられるのは昨日、学校を抜け出して来る優花を怒ったのが原因だ。


多分、優花の方でも俺がいきなりあんな事を言われたから先輩から何か言われたのかと勘違いしたんだと思う。


それが色々と混ざりに混ざって最終的に今の二人になったんだと俺は思う。


まぁ、大抵が自業自得なんだが――――


「優花に大嫌いって初めて言われて。俺、俺、うぁぁぁぁぁ!!」


ガチで大泣きする先輩に顔を引きつらせつつ。本当なら助ける気もないのだがそこに若干だが俺のせいもあるので仕方なく先輩と優花の仲直りの手伝いをすることにした。


「で、何かありますか? 仲直り出来る方法とか」

「そんなものない、今回が初めてなんだ……………あはは、優花………」


これは、根本的な所からやらないといけないのか。


まずは絶望仕切った先輩を元気ずけるのが先か。先輩場合はもう立ち直らせる方法は幾つか思いつから簡単で良いのだが、もしかしたら更に落ち込むリスクもある。


先輩を元気つける方法は至って簡単だ。優花と会わせれば良い。訊くだけでは難しいと思われるが俺なら簡単だ。だって、優花は俺の家に絶対に来るから。

俺が連れて行けば先輩と優花は会えるがその場合気まずい空気が流れるのも絶対だ。先輩と優花がちゃんと話し合いしてくれれば良いが、大嫌いまで言った相手と話し合いをしてくれるか分からない。

そこで、優花が先輩を完全無視したら多分先輩は二度と立ち直れなくなる。


まぁ、俺が多分言えば優花は許すだろうがそれは根本的に違う。だから、使うなら最終手段だ。


「先輩、優花と仲直りする方法ですが」

「何かあるのか! どうなんだ! あるのか!」

「痛い! 痛い! ちょっと! 先輩痛い!」

「あ、すまん………」


おもいっきりガシッと肩を掴まれてもの凄く痛かった………。それに睨む力も何時も以上に強い気がした。


「やっぱり、お前の力は借りん」

「え。どうして?」


突然過ぎて俺は頭を傾げた。


「優花が好きな奴の手など借りん!」


いや、だったら、何で俺に相談してきたんだよ………


さっきまで落ち込んで居たのに今はふんぞり返った態度で居る先輩に呆れるしかなかった。


「じゃあ、どうするか手はあるんですか?」

「………」


また座り込んで絶望した顔をする先輩。これは確実に何も無いと悟り、溜め息をつく。


「自分ならありますけど、やりますか?」

「………」

「自分のプライドと妹と仲直りどちらをとるんですか?」


これは少し意地悪な言い方かもしれないが、この人はこうでもしないと多分乗ってこない。


「ほ、ほんとか?」


よし、乗った。これならもういけるな。


「はい。まぁ、今日家に来て下さい」

「はあ? 何で………お前の家なんだよ」


先輩はその意図が分からないみたいだが分からないなら分からないでも良いか。どうせ、時期に分かるし。


先輩は不思議がるがなんとか説得をして家に来て貰うことになった。


           ☆


家に帰って来ると優花の姿は無く少し寂しいと思ったけどこれが普通だ。俺に続き先輩も入って来てチラチラと辺りを少し見渡したら興味が無さげに前を向いた。

そのまま部屋の方に行き。


「マジで………オタクなのか」


俺の部屋を見るなり顔を引きつらせて言う先輩。先輩には座ってて貰い俺はお茶でも用意をしようとした。


「なぁ、これ」


先輩から声が掛り後ろを振り向くと、先輩は棚から一冊の本をだしていた。


「お前も読むのか? 『銀道』」


銀道はいわゆる熱血系スポーツ漫画だ。柔道部のお話で熱い先輩中心に描かれている漫画でその熱さと絵やたまに混ざるギャグが良く俺は好きなやつだ。

ちょうど柔道部の話だし、もしかして先輩も好きなのか?


「まぁ、好きですね。もしかして先輩も?」


先輩はコクりと頷き。


取り敢えず先輩は銀道を読むことにして俺もお茶を持ってきたら一緒に読みだした。


それから漫画を読んだり銀道のアニメを見たりと二人で盛り上がって行き。


「まさか、お前がこういった物を見るとは思ってなかったわ」

「オタクを舐めないで下さい!」

「なんだそりゃあ…………………なぁ、優花をどう思ってる?」


いきなりのカミングアウトで俺は動きを止めて唖然とした。

先輩をじっと見ると真剣な顔で俺を見ていて。それは心配する顔にも見えた。


これは優花を心配して言ってるんだよな。もし俺が優花の兄なら同じ様な事をしていたと思う。いや、あそこまではしないがそれに近いぐらいはすると思う。


それに一度俺は優花をふったんだ。それでもまだ端から見たら多分恋人ぽいことをしてると思う。それでも心配しない兄は居ないだろう。


「正直に前の気持ちを言うと嫌いでした。俺は一人で居たいそう思ってるのにあいつは俺にしつこく付きまとってくるし、ほんっと嫌な奴でしたよ」


こんなこと実の兄に向かって言うことじゃないけど伝えておかないと、と思い伝えた。先輩は不機嫌な顔になり黙り込んでしまった。


まぁ、怒るよな。実の妹を嫌な奴と言われ怒らない兄は居ないだろう。

俺は一発殴られる覚悟をして先輩を見た。


「じゃあ、今はどうなんだ?」

「え。あ、今ですか?」


完全に殴られると思っていたから今の言葉には本当に驚いた。


「今は、どうなんでしょうね。前だったら嫌なのに、今はあいつが居ないと反対に寂しいと思ってしまうんです。これが恋心? と聞かれると何か違いますし。ほんっと、どうなんでしょうね」


曖昧は答えしか今はだせない。だって、あいつが嫌いなのか好きなのか今の俺には判断しかねないことだ。

先輩もいまいち分からないみたいな顔をしてるがそれが正解だ。本人だって良く分かってないんだから………


優花――――を考えると不思議な気持ちになる。優花に会いたいとも思うし話したいと思う。これって好きになってしまったのかと考えるとうーん、となるからまだ答えは言えない。


「まぁ、あまり優花をもて遊ぶなよ? 本当にふるならふれ。付き合うんだったら………正直に優花に伝えろ」

「え?」


また驚く言葉が出た。今まで優花に近づくなみたいな事を言っておいてその言葉からしたら付き合っても良いと聞こえてしまう。


「俺は許す気は無いが、それで優花に嫌われたくもない。それにそれが、優花の幸せに繋がるなら甘んじて受け………いれる。もしお前が優花と付き合いたい場合は俺が柔道部でお前をしごいてやる」

「あはは………その時がもしあったらお願いします」


若干受け入れてるのか分からないけど、もし優花と付き合っても殺されることは無くなった。


そんな事を先輩と話してるとドアから来ている視線に気づきそっちを見ると、じと目でこっちをドア越しから見てる優花が居た。優花は俺達と目が合うとこっちに来て先輩の横に立った。


「お兄ちゃん。昨日の事は許してあげます。でも、もし次に圭一さんに何かをしたら許すどころか、一生口も聞きませんし顔をも合わせません」

「なんだと!?………… わ、分かった善処する」


いや、顔を合わせないは一緒に住んでるんだから無理だろ、とツッコミを入れようとしたが今は黙っておこうと心の中にそっとしまった。

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