第7話;もう少しだけ甘えたい………

「圭一、何の曲聞いてるの?」


ここ最近、リリスは学校でも話し掛けて来るようになった。

俺に話し掛けたら自分の評判が下がるのにこいつは躊躇無く話し掛けてくる。


「学校で話し掛けるなっていつも言ってるだろ」

「だから、私は良いって。やっとの思いで好きって言えた相手なんだから、一緒に居たいしね」


その告白は断ったはずなんだが、意味が分からん奴だ。


「告白は断った。もう俺に付きまとうな」

「それは無理。まだ諦めないから」


優花もそうだが、こいつらは俺の何処が好きなんだよ。良いところ何て一つもない俺なんかを………………


「で、何の曲聞いてるの?」


まだ。聞いてくるか………………


無視をしようと前を歩くが「ねぇねぇ」っとしつこく付きまとってきて。


「ああ! うるさいな。何でも良いだろ。さっさと自分の教室に戻れ」

「むぅ。このロリコン」

「なんとでも言え」


その対応に腹が立ったのかリリスは頬を膨らませぷんすかしながら何処かに行ってしまった。

やっと静かになったと思い圭一も教室に帰って行った。


教室に戻ると何故か睨まれている気もするが気のせいだと思ってさっさと席に座った。


(気のせいじゃないか。たっくあの野郎………)


多分これはリリスと関わっているせいだ。


あいつはルックスよし、人柄もよし、勉強も出来て皆の人気者だとか一度あいつのファンに絡まれた時に説明された。

それで学校の嫌われ者になる俺と人気者のあいつが仲良くするのが許せない奴らが出てくるわけだ。


こっちだて好きであいつと居る訳じゃない。なのにこいつらと来たら人を妬む目で見やがって………………


嬉しいなら変わってやるっての………


心の中で愚痴を言い更に鬱憤が溜まってまたイラつきだした。


「おい、眉桷、お前リリスちゃんとどういう関係だ?」

「ああ?! てめぇらさっきからウゼェんだよ! 人の気もしらない癖に妬む様な目で見やがって、代わって欲しいなら代わってやるわ!」


圭一は鬱憤が爆発して勢い良く椅子から立ち上がり、話し掛けて来た生徒の胸ぐらを掴んで怒声を上げた。

話し掛けた生徒もびっくりして驚嘆した顔でいた。


「俺はなぁ、一人で居たいんだ。お前らと俺は住む世界は違う。俺を何とでも思えば良い。だかなぁ、俺の平穏な日常を邪魔するなら容赦しねーぞ。分かったなら行け」


俺はパッと絡んで来た男を離して。力強く掴んで居たからか男はその場に尻もちを着いてからクラス内のグループの輪に帰って行った。


(いかん、いかん。むやみに暴力を振るったら、あいつと同じになっちぃまう)


圭一は落ち着きをみせ、いまやった行為を反省をして大人しく席に座った。


反省はするが、別に謝りには行かない。仲も良く無いし謝る程の相手じゃない。


これぞ、三次元の理不尽だ。本当ならイラつきを飛ばしたのだから謝りに行くのが道理だ。だが、現実は理不尽なことだらけなんだ。謝る必要はない。



           ☆


「圭一さん~!」


俺を呼ぶ声がする。何時もなら振り向く気もないのだがふと気になり後ろを振り向いた。


白色のセーラー服に青色のスカートを着た優花が後ろから走ってきた。


「ん。なんだ。今日はポニーテールしてるのか?」

「あ、はい。今日は暑かったので。あ、圭一さんは下ろした方が好きですか?」

「いいや、そっちも新鮮で良いよ」


下ろした髪の方が断然好きだが、たまには違うのも新鮮で良いと思った。


「優花、俺の何処が好きなんだ?」

「え。そうですね。優しい所や、普段はツンとした態度なのに人が困ってれば助けてくれる圭一さんが好きです。あ、他にも色々ありますけどこれが一番ですね」


ふと思い聞いてみたら戸惑うこと無く優花は俺の良いところをあげてくれた。


「優しいか………それは間違えだな」

「いいえ。圭一さんは優しいです」


俺は決して優しくない。それをこんな前向きな顔で言われると少し照れる。


「じゃあ、逆に聞きますが、私の良いところは何処ですか?」

「うーん。人のことを付け回して勝手に合鍵を貰い、毎日勝手に部屋に上がり込むところ?」

「それ、悪いところで言ってません?」

「おう。分かったならもう辞めろ」


「いいえ。辞めません。圭一さんが私を好きになってくれるまで辞めません」


少し不機嫌ぎみで言う優花はスタスタと前に歩いて行き、俺の前に来るとクルりと一回転して、


「圭一さん、私は貴方が好きです。好きでたまらない。圭一さんをまた知って行くともっと好きになって行きます。ですから、きっと圭一さんも私を好きになってくれます!」


圭一はそんな確証も無い言葉に暫く呆然するとフッと鼻で笑い、


「そんな確証もないことを自信満々に言うな」

「いえ! 圭一さんは何時かは私無しでは生きれなくなります!」


確かにそうかもしれない。と言うかもうそうなのかもしれない。毎日飯があり綺麗になっている部屋。服も毎回コインランドリーに持って行かなくて済んだし、優花に甘えていた自分が居たんだ。

だから、無理にこいつを追い出そうしなかった。こいつが居れば毎日飯がある生活が続くから………


でも、今は少しだけそれに甘えても良いかな――――


「はぁ、分かった。優花条件をやる」

「条件?」

「お前が諦めるまで俺を惚れさせてみろ。だから、家に勝手に来ても良い、俺に好かれたいならどんな事をしても許す。まぁ、限度はあるからな? だが、入るのにも条件がある――家政婦として俺に雇われろ」


家政婦なら、ご飯も作ってくれる、掃除もしてくれる。ちゃんと給料も出すギブアンドテイクみたいなものだ。

優花は俺と居たい俺はもう少し飯がある生活がしたい。そんな二人の思いを叶えられるのはこれしかない。


「家政婦ですか。良いですよ」

「だが、期限もある。俺の所持金事情もあるから、夏休みまでだな」

「えぇ、ずっとは?」

「無理だ。俺の金銭で行くと夏休み内が精一杯だ」

「でも~、お金とか要りませんし。それでも良いですから~」


期待の目でチラチラ見てくる優花。俺は「駄目だ」っときっぱり断り優花は肩を落として落ち込んでしまった。


やはり金銭はバイトで稼いだ金からどうしても底は着いてしまう。それに、それ以上優花に甘えたら本当に離したくなくなってしまう。


「なら、覚悟して下さいね。何時でも圭一さんのここは狙ってますので」


優花ちょんっと俺の唇に人差し指を触れさせ不気味な笑みを見せた。

唇に触られた感覚がまだ少し残っており、その感覚に少し浸った。

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