第2話;怖い。とにかく怖い………
そう、答えは決まっていた。断る以外に何もない。
「あの、理由を聞いても?」
「理由? 俺は二次元を愛する者だ。お前なんぞに興味は無い」
俺がそう言うと告白して来た女の子はしゅんっと落ち込んでしまった。
そこに情を入れる程バカでは無い。
それに、まずこれは悪戯にすぎない事だからだ。
多分何かの罰ゲームで俺に告白をしろとでも言われたのだろう。そこは可哀想に思うが遊びでそういったことをしてくる奴は寛容できないな。
「あの、どうしても駄目ですか?」
「あぁ、諦めろ」
友達に何か言われる事を心配してるのか女の子は涙目になっていたがそこにも情なんぞ入れない。
だが、次の瞬間驚くべき事が起きた。
「私は水野
「はあ? 何ふざけたことを言ってるんだ」
「いいえ。ふざけたことではありません。眉桷圭一四月十四日産まれ。血液型はC。ライトノベルやアニメと言った物が好きで|部屋には三個程本棚があってそこに入ってるのは全てライトノベルか漫画で。そして個人で同人も書いていてそこそこ人気もある作家さんで、好きな食べ物はタラコパスタ。反対に嫌いな物は苦い物全般。そして、好きな女の子の好みも知ってます。後は身長に体重、そうですね。家族構成とかも多少ながら知っています! 嘘だと思うなら言いましょうか?」
「いや、良い」
俺は聞くのすら怖くなり断った。この子、怖い………。
とにかく怖いと言う感情しか湧いてこなかった。
名前ならともかく他の事は引く程怖い。なにこの子………怖い。
「あの、眉桷さんの好みの女の子になるために髪も伸ばしましたし。その胸はCになりそうですがまだBですから! その、年は十五で眉桷さんが好きな年より一つ上ですが、やっぱり駄目ですか?」
「駄目だ。俺のことを知ってるならもう分かるよな?」
断る以前に早くこの場から逃げたい。このストーカーだと思う女の子から早く逃げたいんだ。
「じゃ、じゃあ、これで」
俺はささっとに走って公園を出て行った。
最後に女の子から「諦めませんよ」っと聞こえた気もするが怖くて急いで家に帰った。
☆
「ふぅ。もう大丈夫だろ」
家までもうダッシュで帰って来たからもう安心だと思い部屋まで行った。
部屋はあちこちにゴミだったり脱ぎ捨ての服だったり紙クズが散らかっている。
まぁ、何時もの状態なのでスルーしてベットに倒れ込む様に寝転がった。
「はぁ。怖かった」
もう、あれはストーカーのレベルではない。あれはもう何かだ。この世のものでは無い何かなんだ。
怖い………………それしか頭に浮かんで来なかった。
あの子は本当になんなんだ。俺に何か恨みでもあるのか? それともただ本当に俺が好きなのか―――
好きと言われても俺にはもう怖いとしか思えなく多分つぎ来られても断るだろう。
「はぁ、ほんっと今日は怖い一日だったな」
俺はあれだけ何度も断ったんだから大丈夫だろうと安心して寝不足だったからそのまま寝た。
☆
(ん。良い匂い。これはタラコの匂いか? それにパスタを茹でる匂いもする。)
グツグツ――――
グツグツ――――グツグツ――――
「!?」
俺は暫く鍋で水が煮える音を聞いていたら目が覚めてやっとそんな音がするのがおかしいっと思った。
(え。誰? 母さんじゃないよな)
母さん達には鍵渡してないから俺が出なかったら帰って行くし。他に誰が俺の部屋の鍵を持ってる?
「いや、誰も持ってない。それに、何か部屋綺麗だし………………!?」
俺は部屋を見渡すと異常に綺麗になっていてこれはおかしいと思い急いで起き上がり部屋のドアを開けに行った。
ドア開けるとそこには放課後に会った水野優花が制服では無く私服にエプロン姿でキッチンに立っていた。
俺の頭は理解の限界に達して何がなんだが分からなくなった。
「あ、起きたんですね。いま眉桷さんが好きなタラコパスタ作ってますので少しお待ちください」
「うん。110番通報するね」
もう理解するより実行した方が早いと頭が理解して急いでスマホを取りに行こうとしたら。
「そんなこと、したら、眉桷さんに襲われたって言いふらしますよ」
包丁をこっちに向けながら笑みで言ってくる水野。
俺は思わず尻もちを着いてしまい、彼女の言うことを大人しく聞いた――
「はい! 出来ました!」
目の前の机には俺が大好きなタラコたっぷりのタラコパスタがある。
だが、俺は一向にフォークが持てなかった。
いやだって、これこの子が作ったやつだよ? 絶対に何か入ってるだろ。
「あ、安心して下さい。これには入れてませんから」
「え。あ、そう………」
いまこれにはって言ったよ! 何、水なら何か入ってるってこと? やっぱり怖い………………。
「うーん。余り脅して嫌われるのはやりたくありませんが、食べてくれないと襲われたって言いふらしますよ?」
またそれか………………。それをされたら俺はどうしようもなくなる。
だって、三次元なら可愛い女の子だと思う子と根倉で態度がイラッと来る俺のどちらの見方をするかって言ったら絶対に女の子の方だよ。
それに三次元、二次元でもそうだが、男の言葉より女の言葉の方が信じられる理不尽が働くんだ。
だから、食べなきゃ俺は世間で三次元の変態犯罪者のレッテルを貼られてしまう。
恐る恐るフォークを取ってパスタを絡めとる。
それを自分の口に運んで一噛み、二噛みして――――
「どうですか?」
「う、うん。美味しい」
変な味はしない。それより塩加減やタラコの量とか俺好みの方過ぎて更に怖くなってきた。
水野は美味しいっと言うと明るい笑みで可愛く「えへへ!」っと言って一瞬だけドキッとしてしまった。
「なぁ、水野、どうやって俺の家に入ったんだ?」
俺がさっきから一番気になってることを水野の聞いた。
どうやっても不自然だ。俺はいつも厳重にして鍵もチェーンとかもする。それをしつこく確認もしたりするから多分大丈夫なはず。
もしかして、鍵を閉め忘れた? 今日はやけに疲れたし眠たかった。もしかしたら鍵を閉め忘れたかも?――――
「えっと、聞いても怒ったり嫌ったりしません?」
「内容にも寄るが、嫌うのは安心しろ。もう嫌いだから」
「なら、言いたくありません」
えぇ、本当にどうやって入ってきたの?
「もう、ピッキングとかじゃあ、怒らないから、言って」
「………………なら、その、ここに来た時に大家さんに会って眉桷さんのお嫁さんって言ったらすんなりと合鍵を渡してくれました」
俺は勢い良く机に頭をぶつけた。
「ふぇ!? だ、大丈夫ですか!」
水野はそんな慌てた声で心配してくれるが俺の頭はお嫁さんと言う言葉で埋め尽くされていた。
大家さん。俺はまだ十七です。結婚はまだ出来ないんです。ですから、お嫁さんなんてありえないんです。
また大家に会ったらキツく言っておこうと決意した。
「あの、やっぱり眉桷さんは私は嫌ですか?」
「あぁ、見た目ならまだしも、中身が一番無理だ。それにお前が俺を知ってるなら分かるだろ。俺は二次元しか愛さないって」
「はい。でも、私は諦めません! 眉桷さんを絶対に振り向かせてみせます!」
何で、諦めないんだ――――?
何で、こんなキラキラとした真剣な眼差しで居られるんだ――――?
俺には無理だ。一度挫折したら俺は立ち上がれない。メンタルが弱いと言うのか、ただ自分が本当に無理だと思うと二度同じことはしなくなる。
「はぁ。なぁ、何で俺が好きなんだ? 初対面だろ」
もう一つ気になっていたこと。初対面なのに好きと言われ家にも勝手に入られる。そこまでするのは本当に執着心がないと無理だ。
だからっと言ってこいつとは本当に初対面だ。だから好きになられる理由がない。
「それは、その、一目惚れだったんです。こんなの漫画や小説の中だけって思ってたんですけど、私はしちゃいました」
「一目惚れ?」
「はい。あれは、眉桷さんの学校の文化祭の時でした。お兄ちゃんが居たりしたので友達とその文化祭に言ったんです。それで私は見ました。ベンチに凛とした佇まいで座っている眉桷さん………………圭一さんを!」
「あ、うん。それで?」
良く分からないがそれだけで俺を好きになったのか――?
「あの、少しつり上がった瞳、女の子みたいに白い肌で背も高かったし、その、好みだったんです。私の」
まぁ、そうだよな。好みでもないならここまでするわけもないし。
はぁ、好かれたくないものに好かれてしまった―――
「圭一さんはカッコいいんです! 私にとって圭一さんしか居ないんです。お願いです。何でもしますから私と結婚して下さい」
この際もうお付き合いから結婚に変わってることにはツッコまないでおこう。
何でもか――――
それはどんなことをしても良いと言うこと。炊事、洗濯と言った家事や性的なことも全てが許されている言葉だ。
見た目もよし、胸はCに近いとか………もうやることは決まった。
俺は水野に向かって歩いて行き。隣に座った。
水野は俺が来ると俺の方を向いて少し頬を赤くしていた。
「水野、ギャルゲーのヒロインなら俺は直ぐに落としただろうな」
「本当ですか! てことは、私と結婚してくれるんですか!」
「いや、だから、ギャルゲーのヒロインならって言ったろ。三次元のお前なんぞに興味なんてない」
「そ、そうですか」
しゅんっと落ち込む水野のはまぁまぁ可愛いが三次元だからマイナスだな。
「だから、なんだ。男に軽々しく何でもするなんて言うな」
俺はそう言って水野にでこぴんをしてもといた場所に戻った。
そして、水野はしなくても良いと言ったのに皿洗いや朝ご飯の準備までして家に帰って行った。
「あ、圭一さん」
一応石段の辺りまで見送りに来ていたら水野が戻ってきて。
「は?」
スッと腕を首に回してきてそのまま水野は顔を近づけて唇にキスをしてきた。
「えへへ。圭一さん、私は本気ですから………………ね」
「え。あ、あぁ」
もう訳が分からなくなった圭一は適当に返事を返して呆然とした様子で自分の部屋に戻って行った。
「あはは。寝よ」
受け入れるのすら嫌で俺は何も無かったかの様に眠りに着いた。
ほんっと、三次元は理不尽過ぎる――――
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