第2話生駒山千光寺

7月10日に、期末テストが終わった。和弘の提案で、男子2人と女子2人で、生駒山の千光寺に、3泊4日で、勉強をしに行った。

女子2人は、市倉栄子と豊島京子だった。もう1人の男子は、同じクラスの水野忠だった。


『元山上口』駅で降りて、歩きだった。なかなか着かなかった。みんなは、イライラしていた。途中、道がふたまたに分かれていた。右に行くか左に行くか、和弘と忠が議論しだした。


栄子が声を荒げた。

「優柔不断はだめだ。右へ行ったらいいでしょ。行き止まりだったら、引き返せばいいのよ」


みんなは右へ行った。千光寺に着いた。


男子2人は、離れに泊まった。

女子2人は、本堂に泊まった。


昼間の勉強は、一緒にした。

「ねえ、和弘、ここのところ教えてよ」

「俺もわからないや、忠、教えてやってくれ」

「いいよ」


2日目の昼、和弘の提案で、お寺の周りを探検した。

このあたりは、山岳信仰の修験道の修行の場であって、摩崖仏が有ったり、幅5メートルの川の底に10センチ四方の石が30センチ間隔で並べてある所があったり、また、滝に打たれる所もあった。


探検の帰りに、離れに4人で寄った。みんなで、とりとめのない話をした。

「和弘は誰が好きなの」

「栄子と京子」

「いいわね」


「京子は誰が好きなの」

「言えないわ」


「そんなの、つまんないわ。言いなさいよ」

「嫌よ」

「つまんない子ね」


「そう言う栄子は誰なんだよ」

「田中龍二」


「水野君は」

「栄子」

「やったあ」


女子2人は、帰って行った。

3日目の夜、女子2人が離れに来た。

「今日で、お別れね」


「名残惜しいね」


「京子は、いったい誰が好きなのよ」

「言えないわ」

「言いなさいよ、和弘なの」


「うん」


「これでカップル成立ね」


「このことは、この4人の秘密よ。誰にも言わないでね」


和弘は、このころ、押しつけがましい栄子が嫌いになっていた。京子の方が好きになっていた。千光寺に行って、和弘と京子は、とても親密になった。お互いに好きあうようになった。


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