第15話 最後はチーン!

緑が蘇ってきたこの地、アマリリス村の人々は浮かない顔をしているその理由‥‥‥


「あいつが戻って来たから」


「あいつ?」


村人の一人が怒りの様な物を抑えながら、僕らに言ってきます。

で、僕はその怒りは何故出ていたのか、最初は分からなかったんですが、ミリアがなにかを思い出したかの様に言って来たんです。


「もしかしたら‥‥‥ガメツ=デ=マワル」


「はあ?ガメツ?」


ミリア曰く、ガメツ=デ=マワルとはこの辺りを統治していた領主の貴族だとか。

なんでもこのガメツ、最初はこの地の人々から年貢みたいなのを納めさせていたんですが、年々この地の作物も取れなくなり、年貢も納める事が出来なくなる人々が増して来ると、このアマリリス村の辺りの人々を助けるどころか、貴族の力を使い自分は何処かの豊かな土地に逃げたとの事。

で、今回のこの辺りの土地が元に戻った事で、また帰ってきたとスマホで僕はアルベルに聞きました。


アルベル家は、ホクトリアのほぼ全体を領地する大領主。

ただ、やはりこれだけの広さがあるホクトリア。アルベル家だけでは治めることはできなく、何個かの領地に分けていたんだとか。

その内の一人がそのガメツだとか。


「そいつが戻ってきた‥‥‥」


「ああ‥‥‥」


「だったらアルベル(おまえ)がなんとかできるんじゃないのか?お前はこの辺りの大領主だろう。だから‥‥‥」


「それが出来れば苦労はしないさ」


「はあ?だって村人達が困っているんだぞ!それに証拠だって」


「証拠か‥‥‥その証拠はどんな物なんだ?そもそも人の言葉だけでは」


「だった年貢だって納めているだろ。帳簿みたいなのが残っているだろ!」


「その帳簿が改ざんされていたら‥」


「あっ‥‥だったら!」


「なあ、光。この国の貴族どもは自分の事しか考えない。いくらブレイク王が民のためにと指示を出しても貴族連中がこの有様では。光‥‥‥これがこの国の現実なんだよ。この国の貴族は腐っている。そんな連中がほとんどだ。私もなんとか民の為に何とかしている。 だがな、あの腐った貴族連中どもでも納得する証拠がないとどうする事も出来ないんだよ。すまん光‥‥‥」


スマホから聞こえるアルベルの声は悔しさと情けなさが入り混じった声に聞こえた。

スマホの向こう側のアルベルはかなり悔しがっている表情をしているんだろうと、僕は思った。


「証拠‥‥‥か」


ミリアとカイトが僕に申し訳ない様な表情をして近寄ると


「光様、私達王族にもっと力があれば」


「‥‥‥お兄様‥」


「違うよ」


「「えっ?」」


「あまりの巨大な力は最後は身を滅ぼすと言うしね。それに人の反感も買うし。今の殆どの貴族連中がそうだろう」


「‥‥‥けど‥」


僕は側にいて落ち込むミリアとカイトの頭に手を置くと、優しく撫でて


「大丈夫!僕が何とかするから」


そう、ここで何とかしないと。

堕落しきった貴族連中の話は、このガルバディだけの話ではない。アレム大国にしろ、プリム小国にしろ貴族連中は腐っている。

だからここで何とかしないと。

けど‥‥‥どうしたら。


「光‥様?」


「えっ?あっ!村長!」


悩んでいる僕の後ろから声が聞こえて振り向くと、老婆の村長が居た。


「お久しぶりです村長。て、そんなに日は経ってないんですが‥」


僕が村長に挨拶をすると、村長の後ろからヒョイと可愛らしい少女が出て来た。

僕は最初は「?」と思ったんですが、カイトがいきなり


「ミル!」


「へえ?ミル?‥‥‥て!ミルウウウ!」


そこに居たのは確かにミル。ボブショートの髪で右側を何かゴム?の様な赤いリボンで結んで、服も僕がこの地を去る時にあげた可愛らしい上下フリルが付いた赤い服を着ていた。

まさか、これほどこの服がミルにあうとは思ってなかったんですよ。


で、カイトとミルは手を取り合うと、ピョンピョンとカラダ全身で喜びをあらわしてますよ。

けどですね、そんな二人とは相対して、何か暗い顔をした人が、村長の後ろに立って居たんですよ。

で、僕を見るなりゆっくりと顔を上げると、いきなり両目から涙を流し


「光様あああ!ううううえ〜〜〜ん!」


僕に駆け寄って抱きついてきましたよ。


「ちょ、ちょ、ちょっと!‥‥‥て!サラ姉?‥えっ?どうなってるの?」


いきなり泣きながら僕に抱きついてきたサラ姉に、イレイ達は硬直してますよ。硬直。

まあ、ミレンとエレムはサラ姉を知っているので、イレイ達程驚いていませんが、あまりいい顔はしてないですよね。はい。


で、何故泣いているか聞いたんですよ、僕は。そしたら村長が


「ガメツ様にサラがもてあそばれそうになったんじゃよ」


「はあ?それって‥」


「そうじゃ。だがサラが拒み断ると、どこで知ったかは知らんが、光様がくれたカンズメを差し出せと言って来てな」


僕はこの村長の言葉に、頭の中で何かが切れた感じがしましたよ。本当にプチんとね。


「ガメツの奴!許せない!今から殴り込みに行こう!」


「ちょっと待てよ!光」


「そうだよ光。少しは落ち着いて!」


チーとマーが怒り心頭の僕を見て言いますよ。けどですね、僕はもうですねー、ガメツに一発ガツンとしないと気が済まない状態だったんですよ。


「光、今そのガメツとかの奴のとこ行っても証拠がないてことで、突き返されるだけだよ」


チーが僕の肩に乗ると、そう言います。


「そうだよ光。少しは冷静にしないと」


マーも僕の肩に乗ると言います。


「サラ姉の言葉が証拠になるじゃないか!」


僕が更に怒りながら言い返すと


「だから落ち着けって光。アルベルの言葉を思い出しなよ」


アルベルの言葉‥‥‥民の証拠ではどうすることも出来ない。

じゃあどうすればいいんだよ。動かない証拠でもなければ‥‥‥うん?動かない証拠?


「あっ!」


僕がいきなり声をあげたので、周りに居た皆んなは驚いてますよ。

特に僕に抱きついているサラ姉は。


「ひ、光様?どうされたんですか?」


「えっ?動かない証拠だよ!動かない証拠!」


「えっ?動かない証拠?」


「そう!動かない証拠さあ!」


僕は喜びのあまりサラ姉を思いっきりハグしましたよ。ハグを。

で、サラ姉、あまりの急に僕がハグをしてきたので、


「ひ、ひ、光様///ポオッ♡」


サラ姉も僕に先程よりも力を入れて抱きついてきましたよ。

まあ、その姿を見ていたイレイ達は硬直。そして‥‥‥

後はご想像にお任せします。チーン!

けどですね、あのサラ姉の大きな胸の感触。あれは天国にも昇天しそうな感触ですよ。

て、また声で出してました?僕は。

またチーン!ですね。チーン!チーン!









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