第3話 近所の人の話

 介護孤児その3 近所の人の話

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 「アンタのお父さん、アンタが好きやったから嫌われたくなくて、あの歳で、あんな寒い東北にまで行ったんやで」と、よく近所の人に言われた。

 父が死んでからも、父の死を後で知った人に東北へなんか行かなかったら良かったのに。と言われ続けた。その度に私は切れ味の悪いナイフで皮膚をそぎ取られる思いをしていた。けれども仕方がなかったのだ。

 あのまま同居を続けていたら、おそらくノイローゼになり、耐えられなくなって、ひょっとしたら父に手をかけていたかもしれなかったからだ。もしくは自殺

か…。父と別居すること。とにかくそれが、当時の自分の精神状態を正常にするための唯一の方法だったのだ。

 父は結局、向こうに七年居た。私は兄に絶対同居はするなと言ったのだが、

バブルがはじけ商売がうまく行かなくなり始めた頃から、父親の住む住居の家賃が勿体ないからという理由で同居を始めた。案の定トラブルが始まった。

 ノイローゼは兄ではなく兄嫁の方に起きた。他人の親が四六時中家にいるのだ。

ストレスが溜まって当然である。

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