第七幕 花火

花火が空へ打ち上がった。

大きな音で私はやっとそれに気がついた。

夜空を彩る七色の光は闇に咲いては消える。様子は似ているけれど、容姿は似ていない。私と同じようであるけど、全然違う。

『そもそも、何故此処へ来たんだっけ』

人混みに溢れる会場でたった独りで佇み上を見ている。声が五月蝿く聞こえるのに、まるで聞こえないみたいに分からない。

私だけの時間が止まっているみたいだ。

周りの時間だけが進んでいる。私は何処にも行けない。

目の端で『あの人』を見つけた気がして、逃げた。二人で歩いて、楽しそうだった。私は要らない存在だった。

ずっと、花火だけが鳴り続けて、身体を振るわせる。

木の下で蹲ると、涙が溢れた。

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ひとりランチ 宮津木 こはる @koharu_niki

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