第二幕 二月

なんということだろう......まさか、電車の中で寝過ごすとは思わなかった。車内を見てみれば、もう人は殆ど乗っておらず、既に降りる駅から三駅も四駅も過ぎてしまっている。仕方ないけれど、次の駅で降りて折り返しの電車を待つしか無いらしい。

『ーー ーー』

萎れた声が駅名をアナウンスで繰り返す。車掌もだいぶ疲れているみたいだった。

車窓から見える景色は平坦な田んぼが続き、ついさっきまで紅紅と顔を出していたであろう太陽は山の奥に沈んで、夜の帳が落ちていた。

程なくして、車体はゆっくりと止まり、開けるのボタンが緑色に輝いた。温まり切った人差し指でボタンを撫でるように押すとプシューという音と共に自動で扉が開く。

冷ややかな外気が火照った手足や頬に心地よく雪崩た。

降りるや否や電車は動き出し、終点へと行ってしまった。

無人駅だからか、この辺りには街頭が余り立っていなく、非常に薄暗い。そして、鼻先に当たる冷たいものを感じて、雪が降っていることに気づいた。

息が白く染まる。冷え込んで来た。

向かいのホームに行かなくては。

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