第3話
私は普段、reflowという花屋で働いている。
現在24歳の私は就職して二年が経つけれど、いまだに毎日新しい発見があって花屋の店員という仕事は飽きることがない。
現在はバレンタインデー近くということで、『花と共に愛を伝えよう』というフェアを行っていて、普段はブーケをご所望のお客様がいたら店員である私たちが作るのだが今はブーケを一定の金額を支払っていただきお客様自身の手で作ってもらうことができる。そのフェアは好評で今日は5人ほどのお客様がブーケを作っていった。
カランコロンとドアが開くベルの音がする。
「いらっしゃいま…」
一緒に勤務している美里さんと綺麗なお辞儀をしようとしたらそこに立っていたのが隼人くんで動きが止まる。
「…よお」
「どうしたの?」
美里さんは私と隼人くんが知り合いだということを察して我関せずに一歩下がる。
「…それ、作りに来た」
彼が手で指さし示したのはフェアの花束作りを進める手づくりのカード。
花束、作りに来てくれたんだ…。
「ありがとうね」
笑顔を向けながらも心の中では薄暗いことを考えている。
今、午後三時だよ?
貴方が言うように本当に親が社長をしている建設会社に勤めている会社員ならきっとこの時間には出てこれないよ。バカな世間知らずの若頭さん。
「何の花にする?誰に渡すの?」
彼がその花束作りをするための、赤と白のチェックのテーブルクロスがかかっているテーブルの側に椅子を置き、ふと疑問に思ったことを尋ねる。
「…」
隼人くんは何も返事をしない。
聞こえなかったのかな?
「ねえ。誰に渡すの?」
「…椿に」
うつむいて顔を赤らませて言う彼はとても恥ずかしそうだった。
予想外の返事で私も反応に困ってしまう。
「えーと、じゃあ花はどうするの?」
「椿の好きな花でいいよ」
私の好きな花。
また記憶が蘇る。
春の盛りの公園でまるで子供のように貴方と芝生の上で転がりまわって遊んだ。
『俺の好きな花は―』
どうしたらいいんだろう。貴方と離れて2年経つのに想いが溢れて零れ落ちてくるよ、キース。
「私の好きな花はね。水仙だよ」
『水仙ってちょっとキャメリアに似てるよね。意外と毒気あるところ』
『何ですって?』
『その毒のせいで俺はもうキャメリアから離れられないよ』
『じゃあ一生そのままでいてよね』
キース、貴方今どうしてるの?
camelia ay @ayamiayami
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