第十三話
警備員さんに連れられ、応接間に通された俺ら一行。
「いやぁ今回は大変でしたね。息子さんに助けを求められて正直驚いてしまいましたが、怪我などなくて何よりです。」
「いえいえ、こちらも悪いので・・・本当にすいません。大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ないです」
こちらを気遣ってくれる警備員さんに謝りながら、質問に答える俺ら。あれだけ大声あげたからてっきり怒られるかと思ったんだけど、状況をわかってくれたのか?事情をしっかり聴いてくれて本当にありがたいよ。
きっかけは二人の買い物。
カミサンは、最初、イデアと一緒に下着売場に行き、数点品物を購入したあと、洋服を見ようとしてお気に入りのショップと、イデアの要望に近いお店を探そうとして、結構歩き回ったらしいんだ。
その途中で、とあるお店の店員さんから、モデルとして店の洋服を着て写真を撮らせてくれないか?と頼まれたところ、他のお店の店員たちも集まりはじめ身動きが取れなくなってしまって俺が見た状況になったらしい。あまりに相手が必死だったから正直怖かったんだけど、イデアを怖がらせたくないという思いから必死に断ってたってカミサンが言ってるのを黙って聞く。
その後俺が状況を説明したんだけど、正直、カミサンから助けてと言われ止めに入ろうとしたんだけど、頭に血が上ってしまい失礼な事を言ってしまったという事だけ。説明の必要もないですねと改めて謝ると、警備員さんは微妙な顔をしてるの。
俺らの話を聞きながら何かメモをとっていた警備員さんだったんだけど、責任者の方に連絡をとっているのか?電話口でいろいろ話しているんだ。表情を見ている限りでは悪いことが起こるような感じではないんだけど、責任者が来るって事でなかなか解放されなくて困ったんだ。
で、それから1時間ほど経ち、緊張よりもお腹が空いたと言う気持ちが勝って来た時、スーツ姿の男女2人が現れたんだ。
で、開口一番。
「「この度は誠に申し訳ありませんでした。」」
だって。
いや~びっくりしたよ!本当にいきなり土下座だもん。
思わずこちらがびっくりしちゃってさ、しばらく固まっちゃったんだよ!
で、ちょっとした沈黙のあと、
「はっ、そ、そんな顔をあげて下さい。旦那が大声上げちゃったのも悪いので、一方的にそちら様が悪いって訳じゃないですから」
「妻の言う通りです。すいませんでした」
「「いえいえ、どう考えてもこちらの管理不行き届きですから!!!!」」
そんなやりとりがあったあと、お互い話していくうちに打ち解けてきたので、こちらも息子やイデアが退屈してしまっている事を理由に、今回はお互い謝って終わりと言う流れにしたんだ。
だけど、それでは気が済まないと担当のお二人が折れてくれない。
どうしようかと思ってたら、トントンとノックの音がして、一人のお年寄りが入ってきたんだ。
年は80才くらいかな?白髪頭に口髭があるけど、とても穏やかな表情をされていて優しそう。黒系のスーツがとてもお似合いの、老紳士って言葉がとても似合うダンディーな方だなぁ~って見ていたらね
「ご、ご隠居!」
その姿を見た担当のお二人が慌てて立とうとしてるのを手で止めて、ご隠居と呼ばれたご老人がこちらに向かって頭を下げたんだ。その姿が本当に自然で思わず見とれちゃったんだ。それだけその行為がとても自然で、洗練された動きだったんだよね。
「この度はお客様に不快な思いを与えてしまい、大変申し訳ありません。当モールの会長として、深くお詫びいたします」
そう言われた言葉を聞きながら、こんな大きい会社の会長さんなんて、なかなかお目にかかる事がないと思ってたから、目の前の担当さんには悪いけど、良い経験が出来たなぁと思っていたら、カミサンが俺に肘うちしてくるのよ。
なんか話せ!の合図と思いながらも、なかなか言葉が出なくて戸惑っていたんだけど、ようやく言葉が出た俺。
「いえ、担当さんには誠意ある対応をしてもらいましたし、妻もイデアも怪我がないのでこちらは大丈夫です。」
「いえいえ、こちらとしては迷惑をかけた人間が何もしないままお客様をおかえしする訳にはまいりません。もし宜しければ、お食事を用意させて頂きたいのですがいかがでしょうか?・・・少しお待たせしてしまったようですし、そこのキミ。何か食べたいものかあるかね?」
「バイキング!!」
「「こ、こらっ!勇気!」」
「いやぁ、素直で実によろしい!では行きましょうか」
思わず反応してしまった息子を見て頭を抱える俺らと、してやったりという顔をしている会長さん。さすが年の功、こりゃ叶わないなぁ~。
「子供は正直が一番ですな」と、カッカッカッと笑いながら言う会長さんに、恥ずかしいやら、嬉しいやら・・・言葉に出来ない恥ずかしさを感じながらすいません・・・と謝る俺らがいました。
マジ!やった!!!と無邪気に笑う息子と、いまいち状況について行けてないイデアの顔を見て、本当に申し訳ないけど御厄介になってしまおうかな?と思った俺。なんとなくカミサンを見ると同じような事を思っているのか?仕方がないという表情をしてたんでお言葉に甘えることにしたんだ。
で、会長さんのあとについて出口から出ようとしたら、会長さんが何やら見覚えのあるレジ袋を持ってるの。
「まいにちえがおで しあわせはこぶ コンビニ アルテミス」
へっ?マジスカ!
「すいません!会長さん!そのレジ袋、コンビニアルテミスのものですよね!」
「あ、ああ。夜中にドライブしてたら見かけないコンビニ見つけてな、珍しいもの結構売ってたから買って見たんだが、それがどうかしたのかな?」
「実は私達、そのコンビニ探してるんですよ!申し訳ありませんが、それは何処にあったのでしょうか?」
思わず詰め寄ってしまった俺らに一瞬驚いた様子を見せた会長さんだったんだけど、コンビニがあった場所を教えてくれたんだ。でもその場所はさっき確認した場所だったからきっとないだろう…会長さんには申し訳ないけど、手掛かりになりそうな情報がつかめなくてがっかりしていたら、会長さん、とんでもない爆弾を投下してきたんだ!
「そういえば、知らないコンビニとは言えなかなか面白そうなくじ引きがありましてな、年甲斐もなく10枚も引いてしまったんだ。皆様はこういうものは興味がありますかな?」
「「「ま、マジスカ!!!!!!!!!」」」
コンビニの袋から出された商品の山を見て、俺らは思わず絶句しちゃったよ!
これってイデアと同じなのか?本当にどうするのよこれ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます