第十二話

ふと、窓口で働いてる時の事を思い出したんよ。


窓口でお客様を見ていると、綺麗な人や格好が良い人が多くなったなぁ~と感じ、それが何でか?考えた事があったんだ。


昔と違い、食文化が多様化したせいか?外見を素敵に見せたりする技術が発達したせいかわからないけど、自分がどう見られてるかわかっていて、それを良くするすべを知る人が多くなったのかな?と言うのが考えた結果だったんだ。


ただ、例外はあるもんで、そう言う事をしなくても、誰が見ても美人、美男と言える容姿を持つ方。


窓口でいろいろな方を見てるつもりではいるけど、そう言う方は年に一度見るか見ないかなんだよな。


そう言う方が見れた日には、性別関係なく「なんかイイモノ見させてもらったわ~今日も一日頑張れるぞ!」なんて、妙に気合いが入った気がするんだよ。


もしかしたら、窓口の俺もあ~なってたのかな?って、道行く野郎どもを見て思ったんだ。




ぼーっとして壁や柱にぶつかる


隣の女性につねられても動じない彼氏さん


ベビーカー押すお父さん!お子様泣いてハッとしてるし


一部女性の方もうっとりしてるよ




一人や二人ならわかるけど、十中八九ってこういう事を言うんだって勉強になったよ!うんうん


えっ?今から下着売場や女性服回るから、適当に回ってて?周り大丈夫かな? ま、まぁ、俺がいても仕方がないし、俺は俺でやる事があるからまあ~そこら辺いろいろやるか。


ん?息子や、何ゲームセンターに行こうとしてるのかね?


「今日はやることきっちりやったから、遊ぶのに文句は言わせないよ!」

「って、おまえさん言うようになったねぇ~。それじゃ、軍資金あげるからいっといで~」


勇気も成長したなぁと感心しながら送り出し、俺はイデアの日用品を買いに走る。スポーツ用品店で、大きいボストンバックを買い、タオルや歯みがき等、最低でも一週間は暮らせるくらいの品物を買いこんでおかないとなぁ。


こんな事があってどうしようか?って思ってたんだけど、まさかこんなところで、息子が学校で貰った旅行のしおりが役に立つなんて思っても見なかったよ。何を用意するかの基準があるって本当に楽でいいわぁ。


で、いろいろ周って最低限の日用品を買い揃えて、車に荷物を積んだところで息子と合流したんだけど、息子も満足したようで良かった良かった。とりあえず待ち合わせ場所は決めておいたんだけど、まだ二人ともいないな。女子二人の買い物だからきっと当分かかるんだろうなって思い、二人してアイスクリームをペロペロなめながら待ってると、ぴろん♪とライン音が鳴ったんだ。


何気なく見ると


「助けて」の文字。


慌ててアイスを口に押し込み、当たりをつけて行き先を探っていると、何やら人だかりが見えた!


真ん中にいるの、カミサン?


イデアをかばって必死になんか言ってるよ!


「ですから、こんなにこられても、うちの子が怖がるだけですよね!」

「そこを何とかお願いいたします!」

「うちが最初に声かけたんで、何とかうちだけでも!」

「こっちだって目はつけてたけど、大元通さないと行けないから声かけられなかっただけだから!」

「奥様、こやつら排除致しますか?」

「!!!!ダメ!そんな物騒な事言わないの!」


・・・・


・・・


な、なんぞ、この女の戦いは・・・


バーゲンセールのオバチャン並みに怖いぞこれ。


何が起こってるかわからないけど、15人くらいの殺気だった女性達に囲まれてるカミサンとイデアのほうが怖いよな。


早く助けないと…


でもよ、


う~ん?どうしよう?


昔だったら「あっ!」とか言って気をそらして逃げたかも知れないけど、今は無理だなぁ・・・イデアはともかく、カミサン背負って逃げれないし・・・


うん、こりゃダメだなぁ。


「勇気、インフォメーションセンター行って『母さんと友達が知らない人に囲まれてて、怖いから助けて下さい』って言ってきて。父さん、ちと母さんのところに行ってくるわ」

「うん、わかった!」


よし!腹くくった!息子を避難させたから、いっちょ行ってみるか!手を振って近寄ると、一瞬獲物を刈るライオンのような目で、カミサン達を囲んでいた女性達がこちらを向くが、気がつかないふりして近づく。


「まーくん、怖かったよぉ」


そう言うカミサンは、安心したのか?その場にへたりこんでしまった。イデアが慌ててカミサンを抱えてくれたのを見てほっとして思ったんだけど、俺、かなり怒ってるかも?



でも、冷静に・・・冷静に・・・・



「何ですかあなた!」




あ"?!





「私はこの女性達の夫であり、保護者ですが、




か?」


その瞬間、周りの女性達が黙り混み、雰囲気が変わったけど、俺、空気読めないし、読まないから知らない。なんか、そろそろ逃げそうな人間が見えるけど、


「今逃げたら、もっとひどい目にあうよ。い い の ?」


「ここの店の人間は、俺の家族を囲んで怖がらせるのが仕事なんか?」


そう言うと、でも・・・とか、だって・・・とか聞こえるけど、大事な事は二回言う。俺は空気読めないし、読まないから!


「でももだってもへったくりもないんじゃい!」


「あんたら、俺の家族を囲んで怖がらせた!」


「俺の家族がなんかしたんかい! 遠くから来たイデアに、楽しく買い物させて、ちょっと美味しいもの食べさせて楽しい思いで作ってあげたいって思って来ただけなんじゃい!」


・・・


・・


誰もなんも言わないな・・・・反省してないんかい!


「責任者出せ!なんて生ぬるいこたぁいわねぇ!!!おまえら全員ぶん殴らせろ!!!!!!!!!!!」



「「「旦那ストップ!!!!!!!!!!!」」」


すぱーん!!!


あ、うるさっ! 痛っ!


す、すまんカミサンや・・・ぜえぜえ言いながら片手に靴持って、絶叫して、頭はたいて、必死に止めてくれたんだな。


ありがとな・・・


あ、丁度警備員の方来てくれた。


俺が一番頭冷やさないと行けないなぁ~


取り敢えず、カミサンもイデアも無事だったし、良かった気もするけど、女性に言っちゃいけない事沢山言っちゃったし・・・ちと怒られてくるわ。


最後に、囲んでた女性達にも一応な、


「状況が状況だったとは言え、酷いことを言って申し訳ありませんでした」


そう言って、警備員に連れられる俺と、付き添って移動する我が家族。


みんな、本当にごめんなさい。

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