第26話 憧れのマイホーム!
「おー……」
「わぁ……!」
「……」
「中々いいじゃないですカ!」
俺達四人は新しい家の前で四者四様のリアクションをしていた。俺は驚き、クレアは感嘆、レアは茫然、フェリルはハイテンションだ。
難航すると思われた俺達の物件探しは意外にもすんなりいった。
というのも物件探しに訪れた不動産屋のオーナーが、幹部討伐の立役者の俺達パーティーを痛く気に入ってくれたからだ。何でも討伐記念バブルのおかげで色々とやっている事業が潤っているらしい。
そんなこんなで俺達にかなり好条件の物件を紹介してくれた。こじんまりとしたお屋敷と言うことだったが、四人で住むには充分な大きさで小さいながら庭もあり、ギルドからも程よい距離で立地も良い。何処からどう見ても立派な洋館といった感じだ。
冒険者向けの物件の候補もあまり無かったし、予算の七割程度にしてくれるというので俺達は即決して現物を見にきたのだ。
「私、冒険者になってパーティーで一つのお家に住むのが夢だったのです!」
目を輝かせて喜ぶクレア。
「……でもいいのでしょうか? 私はそのメタルドロルを倒した時にはまだパーティーに入ってなかったのですが……」
「いいに決まってるだろ。キルケの報奨金も使ってるんだし、それにクレアはもう俺達のパーティーに欠かせない存在なんだから」
正直キルケはクラレが居なければ倒せなかっただろう。俺が素直な気持ちを伝えると、
「レンさん……」
クレアが少し潤んだ瞳でこちらを見ていた。何だか気恥ずかしくなっていると……、
「さぁさぁお二人さン! こんなところで突っ立ってないで中を見て部屋割りを決めましょウ!」
グイグイくるフェリルに押され、俺達は中へ進んでいった。……と、後ろを見るとレアが屋敷を見つめたまま突っ立っている。
「おーい? レア? 何やってんだ、早く中を見に行こうぜ」
「え……? え、えぇ、行きましょ……」
……どうしたんだコイツは? ぎこちない足取りでお屋敷に向かってゆくレアを俺は不思議そうに見つめていた。
屋敷の中はそこそこに手入れが行き届いており、少し掃除してベッドを運び込めば直ぐにでも生活できるレベルだった。風呂も広々としており、一体この屋敷は何用に作られたのかと頭を捻ってしまうレベルだ。
「よし! 皆文句無いな! ここに決めて契約してくるぞ」
異存なく決まったので、俺は不動産屋と契約、フェリルはベッドの手配、レアとクレアは屋敷の掃除という役割分担になった。ベッドは皆で見に行かなくてもいいのかと聞いたが、市販されているベッドは全部ほぼ同じらしく人数分を届けてもらうだけと言われた。
そんなこんなで俺達の新生活への準備が始まった。
――残り3回
§
――夜
「ほぅ、それであそこに越してきたというわけか」
荷解きも終わり、各自の部屋にベッドを運び入れた俺達はギルドで夕食をとり、帰りにサイルさんの店に寄っていた。
「しかしお前達が魔王軍幹部を倒していたとはのぉ……。道理で外が騒がしいと思ったわい」
これだけ街がお祭り騒ぎになっているのにずっと家に居たのかこの人は……。
「この人がフェリルさんのお姉さん? はじめましてクレアと申します」
そういえばクレアは初めてだったな。……するとサイルさんはクレアの事をじっと見つめている。
「金髪碧眼にクレア……? お主、コンフォート家の者か?」
「!! は、はい……」
「そうか……。フェリルよ、いい仲間を持ったのぉ。コンフォート家の癒しの技は国でも随一じゃ。大事にするんじゃぞ?」
「言われなくてもクレアは大事な仲間よ」
なんと。そんなに有名な家柄なのかクレアは。しかし何やら揉めたとか言ってたし……触れないでおこう。
「よし! 引越し祝いじゃ! そこらへんに転がっておる物なら一つぐらい持っていってもよいぞ!」
「……っつってもなぁ。この前
「わがままじゃのぉ。お主らはどうじゃ?」
そう言ってクレアとレアに振るサイルさん。
「私も特には……というか使い方も良く分からないものばかり……」
確かに武器かどうかも分からない物のほうが多い……。
「これは何?」
そう言うレアの手には何やら桶の様な入れ物があった。
「おお、それは『振』の魔道具じゃ。中に水を入れて話しかけると、その振動を水面が記憶するのじゃ。次に衝撃を加えたときに記憶した言葉を再生するという代物じゃぞ!」
「何に使うんだそれ……」
「失敬な! ドアの近くに置いておいて、誰か来たと同時に『今日は休みじゃ』と言わせる役目で活躍しておるのじゃぞ!」
……この店は商売する気ないなホントに。
「……じゃあこれ貰って良い?」
「あぁよいぞ」
「おいレア、そんなのでいいのか?」
「うん。皆が使える日用品の方がいいでしょ?」
まぁレアが良いならいいんだが……俺は妙におとなしい今日のレアの様子に何も言えなくなった。
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