第18話 フェリルとレンの初デート!?

――拝啓、お久しぶりです。レンです。あの後無事(?)ドーターの街へ到着しました。持たせてもらったお金で冒険者登録をして、何とか冒険者やってます。


 そうそう、俺の「無」の三つ目の能力が分かりました。受けたメインスペルを覚える事が出来るラーニング能力です。最近まで気づかなかったのですが、こっちに飛ばされたときに「移」も使えるようになってたみたいです。まだ熟練度が低くて、大した距離は移動出来ませんが……。


 能力が分かったら手紙を書くと約束していたので筆を執りました。こっちで何とかやっていく間に仲間も出来たので、今度王都に行った時に顔でも見せられれば幸いです。また何かあればご連絡致します。敬具。


「ふぅ、こんなもんかな」


 俺は宿屋の自室でシアルさんへの手紙を書いていた。暫く経つが、全く連絡していなかったのを思い出して急いで書いたのだがおかしくないだろうか……?


 そんなことを考えていると、いきなり部屋のドアが開いた。


「レン殿! デートにいきましょウ!」




          §




 俺とフェリルは並んで街中を歩いていた。ヴァンパイアを倒したお金で暫く余裕が出来たので今日はクエストをやらずに休みになったのだが……、


「ほらほら! 折角のデートなんだから手でも繋ぎましょうヨ?」


「だからデートじゃなくてお前のおススメの魔道具店に武器を見に行くんだろ?」


「つれないですネ~レン殿は」


 そう、資金に余裕の出来た俺は自分の武器を買おうとフェリルの紹介する店へと連れられている。


 しっかし能天気だなコイツは。そう思いながら隣を歩くフェリルの顔を見ていると、


「どうしたんですカ? そんなに見つめて。惚れちゃいましたカ?」


「違うわ。それよりまだかおススメの店とやらは」


「もう~照れなくてもいいのニ。もう直ぐですヨ。……っとその前に」


 フェリルは近くの食料店にふらっと入っていったかと思うと、これでもかとばかりに果物や保存食品を買い込んできた。


「はい! これ持ってくださイ!」


 どさっと紙袋を俺に渡してきた。ってか重ッ! 


「こんなに買い込んでどうするんだよ」


「持っていくんでス! 買える時に買っておかないと後悔しますヨ~? ……それに必要になるだろうシ……」


 一瞬真剣な顔になったフェリルに、俺が疑問符を浮かべていると、


「女の子の荷物を持ってあげる男の子はカッコイイですヨ~! ほら行きましょウ!」


 直ぐにいつもの様子に戻った。そんな調子で歩きながら裏路地を進んでいくと、フェリルはなにやらおどろおどろしい店の前で立ち止まった。……まさかここなのか?


「おい、大丈夫かここ……?」


「問題ないですヨ。見た目はちょっとアレですが腕は間違いないでス」


 そんなことを言いながら入っていくフェリル。俺も後を続いていくと、


「あれー? いないって事はまた奥でやってるのかナ?」


 ……中には所狭しとモノが置かれてあった。何かの溶液に浸けられた物体や淡く光る鉱石、何に使うのか分からないいびつな形をした器具まで様々だ。というかココ本当に店か? 値札も何もあったもんじゃないぞ? 荷物を置いてしばらく見て回っていると奥から、


「もーまたこんなにして~。ちゃんと食べているのですか?」


 何やら珍しい声色のフェリルの声が響いてきた。


 不思議に思った俺は奥を覗くと……


「今いい所なのじゃ、ちょっと待たんか」


「そういって何時間も続けちゃうでしょ姉さんは!」


 フェリルと同じ長い耳を持った小柄な女性が、うず高く積まれた紙の山のなかでペンを走らせていた。

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