第14話 二人目の仲間
「ごはん……そうび……おうち……」
魂の抜けたような様子で呪詛を繰り返し続けるレアと一緒に、俺は長い帰り道を歩き終えた。
「ま、まぁ本来のクエスト報酬はあるんだし、無駄足じゃなかったんだから! な? ギルドに行って換金して貰って、ご飯食べようぜ! あ、今日は俺が奢るよ!」
あまりの落ち込み様に可哀想になってきた俺は今夜の夕食代を持つ事を決めた。
そうしてレアを連れてギルドに戻ってきた俺達の目に飛び込んできたのは、優雅に寛ぐ先程のウサ耳さんだった。のん気にテーブル席でお茶を飲んでいる。
「あああああああー! あんたぁぁぁぁぁ! 確保ーーー!!」
俺が声を掛ける前に飛び掛かっていったレアは、小柄ながらなんとも鬼気迫る勢いでウサ耳さんを組み伏せていた。
「あんたクリスタル返しなさいよ!! あれは私のクリスタルよ!!」
……どさくさにまぎれて10:0にすり替わっているぞレアよ。そんな彼女を尻目にウサ耳さんは、
「あーもう無いんですよあれー」
どこかわざとらしそうに言った。
「もう換金したの!? じゃあそれを渡しなさい! さあ早く! 何処に隠し持ってるの!」
「えーっと……ここニ?」
そういって自分の胸をさすウサ耳さんに、レアはワナワナと震えだした。
「まさか……」
「使っちゃいましタ。ステータス不安だったんですよネ~」
ウサ耳さんの爆弾発言に、レアは今度こそ全身の力が抜けて倒れこんでしまった。それこそ先程のドロルのように。
「ありゃー……これはさすがに悪い事しましたネー……」
そんなレアの様子を見てウサ耳さんはある提案をしてきた。
「わかりましタ! こうなれば不肖このフェリル・ヴェスタゴール、体でお返ししまショウ! アナタ達の冒険のお手伝いをいたしまス! クリスタルで強化されたこの身デ!」
そんなことを言いながら俺に腕を絡めてきた。……立派なモノがあたってるんだが。
俺が平静を装いながらも内心ドギマギしていると、さっきまで水をかけられたドロルの様になっていたレアが復活してきた。
「あんたなんかいらないわよ! 信用ならないわ!」
「まぁまぁそんな事言わずニ! これでも腕に自信はあるんですヨ~?」
俺を挟んでそんな問答を続ける二人。ふと俺は王城での事を聞いてみる事にした。
「なぁ……フェリルさん、でいいのかな? 前に王城で俺を助けてくれましたよね?」
「フェリル、でいいですヨ。これからパーティーメンバーになるんですかラ」
「ならないわよ!」
レアのツッコミが飛ぶ。
「うーんとですネ……
む……? 確かに話してはいないが……。そうか王城に侵入してたんだもんな。何かのっぴきならない事情があったに違いない。大っぴらにはいそうですとは言えないか。
「なぁレア。いいんじゃないか? 手伝ってくれるって言ってるんだし、フェリルは前に命を救ってくれたんだ。悪い人じゃないと思う」
「悪い人だからクリスタル盗っていったんでしょ! ……なによレン、貴方おっきいほうがいいの?」
何を言ってるんだコイツは。
「そうなのですかレン殿? どうしてもと言うならそっちの方法で体で返してモ……」
「ダメに決まってるでしょこの発情ウサギ!!」
「孤」の無くなったレアを含む俺達の周りには騒ぎの見物人が集まってきていた。
コイツの周りにも人が増えてきたな。クリスタルの事はともかく、仲間が増える事に関してはそんなに嫌がっていないレアを見て、俺は微笑ましくなった。
そんな俺を挟んでのレアとフェリルの攻防は、ギルド職員がいいかげん止めに来るまで続いた。
「まぁまぁ! 旅は道ずれ世は情けと言うではありませんカ! これからよろしくお願いしますネ!」
――こうして俺達のパーティーに新たな仲間が加わったのであった。
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