第4話 理解者

生きてきた日々を思い出す。生きている時間は長い分、思い出の数も多い。その思い出のフォルダーに家族というフォルダーは薄い。何故結婚しなかったのか。聞かれても言い訳しか言う事が出来ないだろう。後藤が結婚して、後藤の妻が子供を授かった。後藤は子供を授かる前は筋トレしたいとは言っていない。ロサンゼルスに行きたいという言葉が口癖だった。旅行業者が作っている様な冊子をよく読んでいた。だが、後藤が結婚して子供を授かってからは、ロサンゼルスに行きたいとか言わなくなっていた。考えが変わってしまう程、結婚とは影響力が大きい。今の考えは子供がいつか大きくなって、近所の公園で一緒にキャッチボールしたいから、丹精込めて大切に育てているらしい。後藤は育休を使って、一流の野球選手の原石を大切にしている。岸が結婚式の数週間後、俺が事実結婚した事を会社に言った。俺はもういい歳だから、結婚式を開くつもりもないし、結婚祝いもいらない旨を伝えた。これ以上、私立探偵事務所『ミステーロ』のスタッフ全員に負担を掛けたくないし、仕事に影響を及ぼしたくない。そんな事を言ったのが約3年前だ。約3年前に言った事が嘘になる。今日する事を私立探偵事務所『ミステーロ』のスタッフ全員に伝えている。でも、私立探偵事務所『ミステーロ』のスタッフ全員が何故か笑顔だった。何故笑ったのか、ワシより少し年下の安藤あんどう智代子ちよこに聞いてみた。

「家族の為に一生懸命な所を初めて見たからみんな嬉しいですよ。仕事ばっかり熱中していた三島先輩が家族想いだなんて天変地異が起きたみたいです。私も若い時に結婚していなければ、三島先輩と結婚していたのかな」

「からかわないでくれ」

「からかっていませんよ」

「家族思いなワシはおかしいか?」

「いいえ、おかしくありませんよ。今までよりもかっこいいですよ」

「今までのワシはかっこよくなかったって言う意味か?」

「そうじゃないですよ。誰だって、いつでも成長出来るって事ですよ」

「この歳になっても、人はまだ成長出来るんだな」

「そのようですね」

この歳になったら衰える事の方が多い。でも、成長し続ける事もある事が知れて良かった。

〈分かりました。お名前を聞いていいですか?〉

イヤフォンから声が聞こえた。この声でふと現実に戻される。今は多田野翔太と娘を見ていないといけない。ワシが成長出来ていない事は、1つの事に集中しすぎると周りが見えなくなる事だ。今日の朝、娘を乗せて運転した時、娘に注意された。まともに運転出来ない父親をどう思っているのだろうか。考えたくなくて、ディスプレイを見る事にした。多田野翔太はすぐに座って胸の内ポケットからメモ帳とボールペンを取り出していた。その時に左手の薬指は何も付いていなかった。結婚指輪が付いていたら、この作戦は失敗に終わる。娘は多田野翔太の構えた態勢を見て、大きな深呼吸をしてから言葉を発した。

〈私は芦田きさと申します〉

娘が名前を言うと多田野翔太の顔の表情が変わった。

〈もしかして高校の時、同じクラスに同じ名前の人がいたんですけど…〉

多田野翔太が娘の事を覚えている事にたった1人しかいない会議室に笑顔が溢れた。これで作戦は進めれる。娘は左手首にある黒いゴムをポニーテールの様に髪の毛を整える。そして、多田野翔太の表情がまた少しずつ変わる。

〈そう3年生の時、一緒のクラスだったよね…多田野君〉

娘は多田野翔太からまだ名前を聞いていないはずなのに先に言ってしまった。多田野翔太に変に思われないか心配だった。高校の話題で思い出した事がある。それは履歴書の学歴欄だ。娘と同じ大学を受験した事は知っていたが、それ以外の情報は無い。さっき多田野翔太から渡された履歴書をじっくり見る。すると驚いた事がある。それは、高校卒業後の事が何も書かれていない。嫌な予感がした。実は、大学を2浪しているのではないかと思った。もし、これが事実だったら、娘の発言次第で多田野翔太の機嫌が悪くなるかもしれない。ワシは手汗を拭く為にハンカチをスボンの右ポケットから取り出した。ハンカチを机の上に置いたまま娘を見守る事しか出来なかった。手汗が止まらない。たった1人しかいない会議室は恐怖で満ち溢れていた。


私は月だ。私が生まれた時はまだ新月だった。不思議な色の球の輪郭が見れた。そこには青色で、緑色で、灰色だ。好奇心が旺盛な私が三日月は半月になっている。恒星に近づく事が出来た。不思議な色の球は同じ絵柄をずっと回っている事が分かった。でも、灰色は形は不特定で、たまに渦巻きの形もあった。半月は満月になった。不思議な色の球を1面見渡す事が出来た。1番暖かい時は眠たくなって、目が覚めると満月は欠けていた。そして、気がついた。月は恒星の光がある事で存在を確かめる事が出来る。月は自らで光を発する事が出来ない。私は日に日に恒星から離れる事で半月になった。私は恒星が存在していたからこそ、自分の存在について知る事が出来た。満月は恒星の光が最大の面積を受けている状態で、新月は恒星の光が最小の面積を受けている状態なのだと知った。私は死んでいく。艶やかさを失っていく。私は暗い闇を怖がった。死ぬ前に恒星にまた会う事が出来たら嬉しかった。それか、恒星が近づいて欲しい。私の思いは伝わらない。私は死ぬ事しか出来なかった。


日食は多くの年月をかけて出来る状態である。その日食がまた起きるのは遠い未来だ。地球が太陽に公転していて、月が地球に公転している。日食は2つの公転で太陽と月が最も近い状態を表す。1度離されてもまた近づく。そして、また日食が起きる。それを人は奇跡と言った。その奇跡は人に恩恵があるのかないのか分からない。でも、人において言えば、離れた人とまた会う事になると苦しむ人も出てくる。その中の1人が多田野翔太だ。

「よく覚えていましたね。芦田さんとこんな場所で会うなんで奇遇ですね」

「高校のテストの掲示板によく隣だったから覚えていたの」

まさか、私立探偵事務所『ミステーロ』で芦田と会うとは思わなかった。初めて会ったのは高校3年生だった。その時、学級委員に俺と芦田が選ばれた。その事も作用して大人っぽかった。そもそも、俺は文系で、芦田は理系であまり関わる事は少なかった。高校を卒業してからも俺はいろんな事があって、同じ高校の人と関わる事が怖かった。


私の存在を多田野君に思い出させる為にいろんな情報を話す。2年間はお互いバラバラだった。でも、高校の最期の1年間が一緒だった事実は変わらない。そして、今何をしているかも知りたい。どんな事を言われても私は真実を知りたい。私は妄想しか出来なかった。妄想の世界では、全てが私の自由だ。でも、妄想は最終的には現実に戻る。妄想は自分を苦しめる。今は、瞼を閉じても開いても多田野君がいる。多田野君の本当の声が聞きたくて、私は受け身だった。


その会話は危ない方向に進む事は目に見えている。芦田がもし、今何してるって言われたら俺は詰みだ。俺は逃げ切ってやる。このトークから大学の話をさせない為に。その為、俺と芦田の高校の時の事を考える。そして、俺がこのトークの主導権を握る。

「そう言えば、俺と芦田さんは3年生の時、学級委員でしたっけ」

「そうそう、みんなやりたくなくて、何故か私と多田野君になっちゃったんだよね」

俺と芦田は3年生の時にクラスが一緒になった。担任の先生は名前は忘れたが男性だった事は覚えている。担任は男に力仕事をさせて、女に器用な仕事をさせた。だから、学校のイベントではとても助かった。文化祭とかで芦田は率先して、ごく一般的な教室を楽しいパーティー会場に変えてくれて、クラスのみんながとても喜んでくれた事を今でも忘れない。この性格の人はどんな会社でも求められる。芦田は今、ストーカーで悩んでいる。今度は俺が助ける番だ。


私と多田野君は3年生の時にクラスが一緒になった。担任の先生は田中たなか一茂かずしげという男性だった。田中先生は家庭科の先生で私の1番目のお父様と仲が良かった。2人の先生は昔からこの高校にいた。性別役割分業意識に賛成な田中先生は私に器用な仕事をさせた。何故なら、私の1番目のお父様は私が力仕事を好まない事を知って、それを田中先生に話したからだ。文化祭とかで私は教室を楽しいパーティー会場に変えた。その時の多田野君の笑顔を忘れる事が出来ない。また、笑顔にさせたい。ずっと笑顔にさせたい。

「そう言えば本題に戻るけど、ストーカーはいつからか教えてくれない?」

「あっ、ちょっと待って」

私の自己紹介はまだ途中だ。今の私の情報を伝えれてない。私は鞄から可愛い名刺入れを取り出した。名刺入れに入っている名刺の数枚のうち1枚を多田野君に渡す。その名刺を見ると多田野君は驚いた顔をしていた。その新しい表情も見る事が出来て良かった。


芦田は自らの鞄から可愛らしい名刺入れを取り出す。名刺入れに入っている名刺の数枚のうち1枚が俺に渡された。その名刺を見ると俺が入りたかった大学の名前が書かれていた。

「今さ、大学に行って生物学を勉強しているから、ほぼ毎日行かないと生物の管理が出来ないんだよね。不思議な生き物から毒を持つ生き物までいるから、いろんな発見が出来て楽しいけどね」

「そっか、芦田さん理系でしたっけ」

芦田は理系だった事は覚えていたが、生物学を勉強しているなんて思ってもいなかった。それを知り、まるで薔薇の様な見た目の名刺入れが、その名刺を荊棘の様に俺を傷付けている。そんな事も知らずに芦田はまたその荊棘を俺に強く押さえる。芦田の頭から鬼の角の様な物が見えた気がした。その角は鋭い。闘牛の様に体に刺されたら、死んでしまうだろう。芦田の顔が俺に近づく。手にも凶器が突き刺さっているのに、まだ傷をつけようとしていた。闘牛は俺に向かって突進してきた。


多田野君が文系で、理系だった私と関わる事は少ない。確かに得意な事は違う。他にも、多田野君とは違う事がある。特に違っているのはお金だ。持っているお金が格段に違う。私の様な貧乏人が高級品の様な多田野君をむやみに触れる事はいけない事なのかも知れない。その感覚はショーケースに入っている7カラットの指輪を見ている感覚だった。触れる事が出来ないと分かっていても、触れたくなる。ショーケースに入っている物が人に近づかない。でも、人は違う。人には手足がある。ショーケースを拳で叩き割ってでも、会いたい人は会うだろう。運命は私の味方だ。2人が赤い糸で交わっているのなら、どんな障害物も超えていけるだろう。多田野君の事をもっと知りたい。私の感情の暴走は止まらない。

「多田野君は今何しているの?」

1番聞きたい事を聞いてみた。会えた事だけでも大儲けなのに、この質問が多田野君の声で聞く事が出来るなんて、出血大サービスだ。多田野君の唇が動いた。


1番聞かれたくない事を聞かれた。悪い予感は的中だ。俺は左腕に付いている腕時計を見ながら芦田に伝える。時計の針は止まる事も左回りになる事もない。そして、ゆっくりになる事もない。自分の唇はひび割れしていない。なのに、痛く感じた。息が乱れて、無理やり口を大きく開く。さらに痛みが増す。自分の唇がこんなに痛く、重たいとは思わなかった。


ワシは昨日、とてもシャンプーをして来たが、汗まみれになった。この歳で唯一元気なのは髪だけなのに汚れてしまった。今の状況だったら、髪の毛がない方が良かった。スキンヘットという髪型にしたいと思った。胸が苦しくなって、スーツの右ポケットに入れている薬を飲む。薬局に売ってある動悸や息切れを改善する為の薬だ。この薬を服用しても気分が落ち着く様子は見られない。薬はすぐには効かない事は知っているが、こんな時くらいは即効性のある薬であって欲しいと思った。気分は最悪だが、視力と聴力だけはまだ生きている。

〈俺もやりたい事があって、私立探偵事務所『ミステーロ』を約1時間前に来て、バイトになる為に面接を終えて、合格したからこうして芦田さんの悩みを解決する為に仕事しているんだ〉

バイトする事がワシには理解出来なかった。お金は人より多く持っているはずだ。

〈へーそなんだね。でも、多田野君は社長の息子でしょ。バイトなんてしなくてもいいんじゃないの〉

ワシも気になったがその事を質問出来る娘は凄く肝が据わっていると思う。嫌味に聞こえてもおかしくない事を娘は聞いた。多田野翔太は娘を嫌うかもしれない。でも、これを聞かないと何も始まらない。ワシがさっき、面接で聞いたかもしれない事をもう1度聞く。


妹と同じような事を言う。でも、違うのはスーツを着ているか着ていないかだけ。でも、俺もスーツを着ている。芦田も職人もスーツの力を借りて自分の魅力を増やした。俺は職人の様な事は言えず、社長の様な言い方で言う。

「何事も調べないといけない。生き残る会社は生き残らない会社を見て方針を変えていかなければ生き残れないし、生き残る会社からも得られる事は多くある。生き残る会社になりたいならそれぐらいしないと」

「そうよね。頑張ってね。多田野君も」

この話は終局を迎えていた。目標は達成された。俺の逃げ切りでゲームセットだ。ずっと手に握っていた芦田の名刺を片付ける為に名刺入れを胸の内ポケットから出そうと手を入れる。だが、そこには何も無い。俺は焦っていてスーツの右ポケットに入れていた事を思い出した。胸の内ポケットから手を出して、スーツの右ポケットに入った名刺入れを取り出す。俺も名刺を渡さないといけないと考えたが、履歴書があるから名刺は作っていなかった。だから、メモ帳を1枚ちぎって、自分の名前と連絡先を書いて渡した。


そう思うと探偵という職業は天職だ。いろんな所に出向き、その現場の環境を知る事が出来る。働きながら、学習出来る。1番理にかなっているカリキュラムだ。さっきも思った事を再び思い出した。多田野翔太は視察としてこの会社に来た。この会社の事も生存出来る会社かどうか次代の社長にぜひ聞いてみたい。多田野翔太はずっと手に握っていた娘の名刺を片付ける為に名刺入れを胸の内ポケットから出そうと手を入れた。胸の内ポケットから手に何も持たず出して、スーツの右ポケットに入った名刺入れを取り出す。多田野翔太はどんな事があっても動揺せずに次の行動に移す。メモ帳を1枚ちぎって、自分の名前と連絡先を書いて娘に渡した。

〈これでいい?〉

〈別にいいよ。携帯で連絡先交換しようよ〉

〈今の時代は携帯が主流ですもんね〉

娘は多田野翔太の連絡先を知る事が出来て嬉しそうだった。連絡先があるだけで2度と娘から離れない。離れてもまた会える。娘は多田野翔太が描いたメモ用紙も共に名刺入れに入れて持って帰る。

〈これでいつでも連絡できるようになったけど、そろそろストーカーの話を詳しく聞かしてもらっていい?〉

やっと娘がストーカーの話をする。ここは娘の見せ場だ。


やがて、芦田の手から薔薇の様な名刺入れはカバンに封印された。俺の名刺入れもやっと元の家に帰る事が出来た。メモの紙を芦田に見せてお互いの連絡先はデジタルに表示された。再び仕事の話を戻す。芦田が俺の依頼人第1号になる。俺の仕事はこれから始まる。


私は今ならなんだって出来る。2年間の空白はこの日の為の準備期間だった。この日の為に生きてきた。ここで失敗するなら死ぬ事と同じに思えた。

「私が大学1年生になった時、田中たなか愛梨あいりって人と友達になって、その子は高田たかだたけるの彼女になるの。私と愛梨ちゃんでカフェに行った時、愛梨ちゃんは高田君に気がついていたかは分からないけど客の1人に高田君もいて、その事は今も言えてなくて、その時はカフェで解散したけど、家に帰る時に高田君が私についてきたの。なんか、2人の間に入って悪い事したなって思ってて、謝ろうとして後ろを振り向いてもいなくなってた。高田君が私について来る事がこの2ヶ月で5回もあって、どの時も話す事が出来なかったの」

私は全て予定通りに言う事が出来た。後は多田野君がどう受け止めるかだ。


俺はそんな事で芦田が探偵に依頼した事にびっくりした。

「芦田さん、こんな事言いたくないんですけど、この依頼は受けられない。だって、あまり分からないけど、私立探偵事務所とかって金額とか高いと思うんだ。その金額に見合う問題なのかなって思うけど、芦田さんだけで解決できないの?」

それでも芦田は下を向きながら首を横に振る。ポニーテイルの髪が左右に揺れた。


私立探偵事務所の弱点を突かれてしまった。私立探偵事務所『ミステーロ』は良心設定で安い金額を前提に話をするのだが、殆どの私立探偵事務所は高額な金額が必要だ。ワシは咄嗟に下を向いてしまった。誰もが先ず値段を考える。社長の息子なんだから女子大生が払える金額でない事も分かっているはずだ。でも、この質問は予測出来ていた。多田野翔太が共感してくれる様にする為、娘は女優になって話をする。

〈でも、私はこうも思っているの。女子同士で話しただけなのにストーカーされるのは、高田君は女に釣られやすい性癖があるんじゃないかって思うの。だから、他の人も被害にあっているのだと思うと私が止めてあげたいの。だから、警察とかでなく探偵を使って、高田君の行動を見て欲しいの〉


本当にこんな人は世の中に多くいる。その性癖持っている人は誰にだって同じ事をする。ワシが担当する事件も殆どが自己中心的な考え方の人が犯人だ。たまに例外もいる。自分が考えた政治をする為に犯罪を犯したり、家族の為に犯罪を犯す例もある。でも、犯罪は犯罪だ。負の連鎖を未然に防ぐのが探偵の役目だとワシは考えている。多田野翔太は思うのかどうか聞いてみたかった。


確かに、その性癖持っている人は誰にだって同じ事をする。芦田の様な女性は田中にその事を伝えたくても、確信的な事がないと田中を傷つけてしまう。芦田のみんなの為という精神を持った性格は高校の時から変わっていなかった。高校の時から語尾は特徴的だった。その語尾も大人っぽさを感じる時もあった。これは自分の意見を言う時の癖だ。それが可愛い思えた時期があった。今も少し邪な気持ちが仕事を妨げる。でも、それで倒産した会社や、社会的信用を失った会社を多く見てきた。そうなった会社は信頼を回復させるには膨大な時間と実績がいる。芦田は勉強も性格もどちらも良い状態で、環境が変わっても自分の筋道を通して生きている。こんなにも近くに出来る人がいたなんて思いもしなかった。これも俺が探偵としてバイトをしようとしたから出会えたのだ。だからこそ、より近くで芦田からいろんな事を学びたい。

「分かりました。是非ともこの多田野にお任せください。あれだったら俺が払いますよ」

「ありがとう多田野君。是非とも真実を調べましょう」


ワシの目的通り、共に行動する事が決まった。事が上手に進んでワシは喜んだ。隣の部屋の出来事で喜んでいる。今考えれば不思議な感覚だった。壁という障害物があるのに、カメラという物を使えば壁がないのと同じ感覚だった。カメラも眼球で見ているのと何も変わらないのは、歳のせいなのだろうか。ワシは高校野球を見るのが好きだ。高校野球を4Kテレビで見ると自分の体が甲子園にいる感覚だった。今の時代はアナログもデジタルも大差がなくなった。ワシは隣の会議室に行き、扉のノックする。2人は扉に視線が集まる。


「多田野君、君は上出来だよ。1人でここまで導く事が出来るなんて思ってもいなかった」

「ありがとうございます」


私は私の2番目のお父様が多田野君の隣に立っている事が嬉しかった。いずれこれが何年も続く未来を想像した。

「芦田さん、絶対に解決させます」

「ありがとうございます」

私の2番目のお父様が多田野君を笑顔にさせた。私は昨日までの人生が突然変わって、生き返った気分がした。私はまた三日月になった。今度は半月になって、満月の様になれそうだ。満月からもう何も変わらない様になりたい。私は本来の私になりたい。


「困らせてすまない。私は私立探偵事務所の探偵の三島弘だ。さっきからあそこのカメラで君達の話を聞いていたが、この問題は他人が被害者になるケースも十分に起こりうる。でも、警察は事が起きてからでなければ動けない。だから、私達が未然に防ぐ」

俺は初めて職人の名前を聞いた驚きとこの問題を解決しようと賛同してくれた事に嬉しかった。そして、職人が俺に向けて嬉しい事を言ってくれた。

「多田野君、君の初めての依頼は絶対に成功させてやる」

「分かりました」

俺達探偵がいる事で、この会議室からやがて1つの悩みが消えていく。俺達探偵がこの活動を続ける事で、そして多くの悩みが消えていく。多くの悩みを解決する為に、俺達は始める。多く悩みを多く幸せに変える為に…

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