5.修行

そして、シーラは王妃さま&レイの最強タックルから急遽花嫁修業ならぬ、コンフォート国流のメイドとしての実地訓練を受ける羽目になってしまった。

シーラはユーデン国でも、レイから花嫁修業とか言ってはお茶会でのマナー講座やら掃除の仕方について実地練習させられていた。だが、それは王族として、民衆にも理解を得やすいように庶民の暮らしを学ぶ一環であり、長い時間を割いてまで実地練習をされることはなかった。

シーラは次期女王のため、花嫁修業よりも政治経済学、女王学というユーデン国を女王として統べる教育を受けてきたのである。とはいっても、たまに剣の練習を気分転換がてらに抜け出していたシーラだったが。

だが、自分からシンに対して作戦に参加する際に、自分から「一緒にやる!」と言ったシーラだ。

そして、与えられた任務はメイドとしての潜入活動。

今回は一般庶民の仕事として、しかもメイドとして帝国がいる前でシーラ本人だとバレずに活動すること。


そのため講師陣ならぬレイ、そして王妃様もつい熱が入り、気がつけば正午過ぎに王妃様の間を訪問したはずが、すでに夕刻の時間帯になっていた。シーラは部屋のテーブルにあるロウソクに火をつけて、そのままテーブル上でで俯きながらばてていた。

き、きつい。ユーデン国でもっとレイ単独の花嫁修業もっと真面目に受けてればよかったわ。

あの時は、レイが赤ぶち眼鏡かけて鬼教師に扮して教えるんだから、いよいよ変な世界へと目覚めたの?と思ったけど、なんてことはなかった。

レイはただ、お姑役として私をいびることに純粋に楽しんでいた。それから毎日のように芝居がかかったように「これはなんざます。こんな出来では先が思いやられるざます」とか厳しい指導がはいるもんだから、こっちも意地になって、頑張ったのだった。

そして、シーラは今回も前回と同じように本気出して真面目に取り組んだのだが、さすが王妃として勤めている王妃ルナは、レイが気がつかないぐらい厳しくメイドとしてだけじゃなく、淑女としてもシーナを指導したのである。

「シーラ様、タライを持つときは腕まくり厳禁でしてよ?ああ、運ぶ時も背筋は上に引っ張られるように頭は真っすぐ!ですわ」


このメイド業って、ユーデン国での稽古なかったら、絶ーー対、あたふたしてたわ。王宮の働きも楽じゃないわね。そう、しみじみ思っていたシーラだった。

そして、テーブルの上で揺らめくロウソクの炎を見つめながら、シーラはメイドたちならぬ元女スパイたちが話してくれたことも思い出していた。



「え、シン王子ですか?確かに自室で調査結果をお伝えしましたが、私達女スパイは行動するときは二人で行動が基本ですし、報告も二人で行っていますわ。」

「それに、シン様は最近朝早くから公務をこなしては、夜遅くまでカルファト様たちと帝国の動向を調べていましたから」



シーラは揺らめく炎を見ながら、そんなことを聞いては”私も頑張るしかないじゃない”そう思っていた。

シーナは王妃やレイから注意されたことをメモしてはしっかり夕食後の小さい室内で復習していた。

「ええっと、掃除は天井のホコリ、照明のホコリ落として、上から下へと落として……。汚れには液性をみて、炭の洗剤など種類を変えて落として……と。」

そのこともあり、シーラは気づかないうちに他の王族の姫や貴族令嬢よりも自分で身の回りを行うことが出来ていたのだった。




そして、ここコンフォート国にシーラ達が馬車森の中で拾われて馬車で来てから数日が経過していた。

やっとのことでメイド修行を終えたシーラは、レイと共に疲れた身体で借りている小さな王宮の一室へ戻り、その両隣にシン王子、レイが就寝することが当たり前になっていた。

しかし、あとでシンを回収しに、いつものようにカルファトが来ては「バレちゃいますから、我慢、我慢。お隣はレイ様もいらっしゃいますし、王子業務に専念してください」

「兄上たちがいるであろう!」

「シン王子の業務は今回多いんですから、はいはい」と綺麗な衣服の襟首を掴んではズルズルと引きずっていた。

意外と力持ちのカルファトに引きずられたシンは、諦めて「わかったから、俺を子猫のように運ぶのは、やめろ」そう言って、カルファトの手から離れていると、回路の途中でまさに部屋へと戻るレイと出くわした。

「レイ、今から戻るのか?」

「あれ、カルファトに、シン王子まで。また、お嬢の部屋近くをうろついてたんですか?」

「な、違う!お前がいない間はシーラが心配だったから、いてやったんだ」

「やっぱりうろついてたんじゃないですか」

そう言うと、「そういえば、聞きたいことあったんですけど、シン王子、ちょっといいですか?」そう言ってレイはシンとカルファトを誰も使われてない部屋へと入るよう言った。そしてレイは、周囲をキョロキョロ見回し、周囲に誰もいないとわかると、「ちょっと、聞くけれど、シン王子はお嬢のどこをすきになったんですか?」

「なあ、そんなこと聞くな、恥ずかしい!」

「あれ、普通ですよ。男同士でも好きな子は誰で―。とか、普通、普通。なあ、カルファト」

「ええ、普通です。むしろ、シン様がそこまで秘密になさることが変というものです」

カルファトも乗って頷く。

純朴なシンは、悪い大人たちの悪知恵により、とうとう白状した。

「ユーデン国に初めて訪れたときに、他の貴族の子供達と一緒に遊ぶことができなくて、、兄上たちも揃って風邪をひいてて来れなかったから、暇を持て余してたんだ」

うんうん、それで?レイ、カルファトはは頷き、相槌を打って、話を聞いた。

「そしてら、シーラが、貴方も一緒に遊ぼうよと言ってきて」

うんうん。それでそれで?

「最初は照れ臭くて、嫌だと拒否したんだが、それでもあきらめずに粘って、笑うシーラの顔が可愛かったのが、俺の初恋だって、おい、お前ら、お前らの恋の話は聞いてないぞ、俺は」

シンの告白を聞いて、「とんだ純朴野郎だな―シン王子は。はー寝よ寝よ」と言っては自分の寝床へと向かうため扉へと進むレイと、「言わないで上げてください。可愛いんですから」と言いつつ、自分の仕事場へと戻るため扉へと足を進めるカルファトであった。

「俺のコイバナ言ったんだから、お前たちも言ってからにしろ!」

「こんなおじさんたちのコイバナなんて興味ないですって」

「お嬢際が悪いぞ、れい!」

ともあれ、平和に、シーラ達が定例会議までの間、コンフォート国での日々は過ぎていった。


そして、定例会議がもうそろそろ開かれるというとき。

いよいよ各国の重鎮の大臣や宰相、国王がここコンフォート国を訪れ、会議中は滞在するため各国重鎮たちの部屋確保のため、シーラとレイは移動しなくてはならなかった。

今度借りることになった部屋は、王宮から少し離れているが小さな塔の二つの部屋。

レイが「私達だけで人目を気にせず過ごせるようにという配慮から、コンフォート国国王が離れの塔をお借りしていただけましたわ」ということで、私達は王宮の庭を荷物を持ちながら移動していると、ふと、シーラは塔の裏に生えている赤い草花が眼についた。花弁が輪生上に咲いており、満開に咲き乱れているその植物の姿は遠くから見ても綺麗だった。

あれ、何の花だろう。見たことない綺麗な花ね。

シーラが思っていると「お嬢ー。止まってないで、歩いてくださーい。まだやることが山のようにあるんですから―」

レイが叫んで後ろを振り返っていたので、シーラはもうそこの風景から意識はそれていたが、シーラ達の動きを、じっと見つめている黒い人影があったのだった。


シーラ、レイたちはユーデン国から持ってきた自分たちの荷物を部屋の廊下に置くと

「さあ、いよいよ掃除です!制限時間は30分!これまでの修業の成果、頑張ってくださいね!」

「任せといて!」

もうノリは軍隊感覚である。

シーラのメイド修行もいよいよ大詰めだった。

レイと王妃の講師陣は、最終チェックとしてこの新しい隠れ場所の、使われてない室内を制限時間内に掃除するというものであった。王妃様がさすがに人気の少ない場所へと煌びやかなドレスで移動されるお姿は目立つので、残念ながら「存在がバレてしまいますので」と言って、ご遠慮させてもらった。

「ひどく残念ですが、シーラ様。試験頑張ってくださいね!」と王妃様直々に応援んのお言葉を頂いたシーラであった。

「では、始め!!」

シーラはまず初めに室内の窓を全開に開けて、最初から一室に置かれていた埃だらけでやや太陽光により黄色く変色した家具を廊下へと出すことに取り掛かった。そして、復習どうりに上の天井から叩きと呼ばれる、長い棒の先にたくさんの動物の長毛がついたハタキで埃を落として次に椅子の上に立って、雑巾で壁を拭き次は床、家具といった順番で掃除していった。

大まかな流れだが、床は木材の溝に沿って拭くなど細かい点が多く、また、時間内に磨き上げなければいくら綺麗にできても時間内にできなければ失格とレイに言われていた。

「はい、あと10秒」タイマーである砂時計はほとんど落ちており、あと少しで約束の30分になろうとしていた。

シーラも大まかな掃除は終わっており、ラストスパートをかける。

「9,8,7,6,5,4,3,2,1,0.そこまでです」

レイに言われた瞬間、シーラはそのまま床にへ垂れ込んでしまった。

「つ、疲れたわー。あー頑張った」

本来床に直に座り込むこと自体、王族、貴族でははしったないことだが、もうシーラは疲労感で、レイ以外に人の目もないことからその場で休みたかったのであった。

レイはそんなシーラを知りながら、掃除が行き届いてるかチェックしていた。そして、シーラに振り替えると、

「合格です。よく頑張りましたわ、お嬢様」

と、にこやかに言った。

「やったーー!」

シーラがそう喜んでいると「次は、お洗濯、洗剤見極め試験ですわ。さあ、がんばしましょう」

ううう。ホントに休む暇ないんだから。

シーラは重い足取りで次の試験へと挑むのだった。


そして次の朝。

シーラ、レイは2部屋別々の部屋のベットから起床し、朝晩配られる元スパイのメイドから食事を受けっとていた。

そして朝食を食べ終えると、また二人はいつもの恰好、シーラは王妃様と会ってからはメイド服、レイは衛兵の服に着替えて王宮内を歩いていた。

「ユーデン国でもお茶会のマナー講習はうけてましたから、実際に定例会議に出席する方にバレずにメイドとしてお茶配りしましょうか」とレイが言ってきた。

「難しそうね。わかったわ。今日も合格してやるわよ」

昨日は、シーラは実技の「掃除」「お洗濯」分野で合格を勝ち取ったのである。

「では、次は王妃様にバトンタッチしますわ」沿うや否や、どこからともなく王妃ルナがひょっこり出てきた。

「わ、王妃様!?いらしたんですか」

「わたくしはいつも陰で見守っておりますわ」

……隠れるのがお好きな人である。

「シーラ様には実際にお客様にお出しするこのメイドの場所でお茶会の準備をして頂き、今現在庭にいらっしゃるお客様にお茶をお出しすることですわ」

シーラが案内された場所は、各国のお茶が置かれており、いい匂いがする場所であった。簡単なスープ、軽食も出すことができる様にパンやパンの間に挟む野菜、包丁、今日王宮の庭で採れたのであろう果物もあった。

だが、一番多かったのが食器だ。淵に緑色の唐草模様が描かれた。大小、中くらいのティーカップと、他にも幾何学模様がカップの底に描かれた物もあり、お出しするお客様によってティーカップやお皿を使い分けているとシーラは試験前の講義で王妃、レイから習っていた。だが、やはり現場を知るということは、感覚が違う。

こんなに種類があるのね。うちのキッチンもこんな感じ?

「つぎに、お客様ですが、昨日、定例会議のためはやくにご到着されましたので

当国のお庭を鑑賞されております」

「ずいぶん早い訪問ですね」

「金髪、灰色の瞳の男性の方。高身長で好きな色は緑、食べ物はブルーベリーのパイケーキ、お菓子はここの隣の料理人に言えば渡してくれるわ。あと、ご趣味はチェスね」

「なんだかやけに詳しいですけど、その方の国とお名前を教えていただけますか?」

そのとき。チリ―――ン。

王族がメイドたちを呼ぶ際の鈴が鳴った。王族たちは用事があると鈴で呼んで食事などを持ってきてもらうなどしていた。

「あら、ごめんなさい。お客様がお待ちだわ。じゃあ、後はお願いね。行って、お茶をお配りするだけの簡単な試験だから。」

「はあ」

王妃様はそう言いながらウィンクすると、王妃様は砂時計をさかさまにして時間を測った。

とりあえずシーラはいわれたままワゴンの上に必要な物を棚から探してはワゴンに乗せていった。

その間にもチリーンとなり響く鈴。

え、また鳴らすの!?せかっちな王族ね。呼ぶのが早すぎるわよー。

シーラは大慌てで準備を行い、お客様が待つお庭へとティーカップとポット、お菓子を乗せたワゴンを王宮の庭へと引いていったのだが……。

げえええええ!!!な、お、お父様!!!!!!と、カルシス様!!!!???

てっきり一人だと思っていたが、庭にいるのは二人ー、それもシーラの父親、ユーデン国の国王と、その父親の隣にはなんとコンフォート国の王、カルシスがいたのである。

カルシスは、シンの父親でもあり、第一、第二王子の父親でもあった。

コンフォート国の三兄弟王子と言えば、ここカルディア大陸でも評判の美麗衆目な若者たちとして若い女性の憧れでもあったが、その父親であるカルシス様はポヨンポヨンとした身体がまあるい二頭身体格と、白い口ひげを生やしており、片目だけ眼鏡、モノクルをかけているのが印象的な人物であった。

以前王妃の間で、レイと一緒にご挨拶に伺おうとしたとき、あいにく公務があるとかで、シーラは結局まだご挨拶できていなかった。

そのカルシス様が、我が父親と、緑色の芝生が生えたのどかな場所でゆったりと会話してチェスをしているのである。

二人は性格が合うのか、よく定例会議の際には隣同士並んでいたり、チェスをしたりしていた。

そして、シーラの父親は定例会議にはもちろん欠かさず出席している国王で、いない間のユーデン国はシーラと宰相に任せていた。だが、こんなにも早くコンフォート国に到着していたことはシーラには知らされていなかったのだ。

いつの間に…って、、、さっき王妃様が言ってたわね。

”昨夜到着したお客様”と。

今の私は前髪で両目も隠してるし、娘だと気がつかないと思うけど……、もしかして帝国を親に見立てて、バレずにメイドの仕事をできたら合格ってこと!?

そんな試験、無茶苦茶よー。けど、いま引き返しても不合格になるだろうし、頑張って変装で乗り切るしかない!?

本当はシーラの父、国王はわざとコンフォート国に行くように仕掛けたことはレイとシンは知っているが、シーラにはまだそのことは知らされていなかった。

シーラはまだ、国王に黙って出て来たと思っているのだ。

国王はメイドに扮するシーラに気がついてチェスの盤から視線を離して言った。

「おや、君が私のお茶を持ってきてくれたのかい?ありがとう」

ユーデンの国王はにこやかにシーラならぬメイドに言った。

「はい、お、遅れまして申し訳ありませんでした」

父親にバレるのではないかという緊張と試験中ということでなんとか礼儀正しくメイドとして言ったが、ひやひやものだ。

王妃様ー、どうりでおお客さま情報が詳しいはずよ。友好がある私の父じゃないの!

そんなシーラの心中のなか、国王はメイドが反省していると思ったのか

「じゃあ、お茶を入れてくれるかな」

「はい、ご準備いたします」

シーラの父親は娘に気がつかないのか、再びチェスの盤に目線を戻し集中していた。どうやらチェスで気がついていないらしい。

国王二人は庭の塀の隣には貴族の子供たちがいるのか、ときおり子供たちの遊び声が聞こえてくるのだった。

シーラはポットから二人分のお茶を淹れ、お客様、父の鉱物であるブルーベリーパイも二つ、テーブルの前へと置いた。

「ご注文は以上でしたら、これで失礼いたします」

このセリフを言ったら、メイドは後ろに控えて立って、また用事を言われるまではその場で待機である。

これで交代の時間になったらメイドの試験は合格なはず!!さあ、お父様、気づかないで「後ろに下がってて良い」と言って!

シーラは強く願ったが、

「ありがとう。ところで君、どこか田舎出身かな?チェスも一区切り終わったし、私達二人と毎日おしゃべりもなんだから、お話につきあってくれないかな?」

と言って来た。

たしかにチェスの盤をみると、もう終盤にかかっており、シーラの父親の勝ちであることは間違いなかった。

ガク。一介のメイドが断れるわけないし、お父様の世間話長いのに。

シーラは心の中で涙を流しながら国王と話をすることになった。

「コンフォート国のカルシス様も子供がいるが、私も君みたいな娘がいてね。これが飛んだ跳ねっかえりで、講義の合間をを抜けだしてはと講師から追いかけられるんでね、どうしたらいいかと思うかね、君は」

国王が言う娘とは、もちろんシーラのことである。

「さ、さあ。姫様も遊びたいお年頃なんじゃないですか?」

「遊ぶ内容が女性らしければいいが、王宮兵相手に武道を磨いてるんだから困りもんだよ。しかも反抗期か、最近はろくに最近のことも話したくないみたいでなあ、調子はどうだと聞いても別に。の一点張り。父親のことをさけてるんだよ」

「私の息子たちも全然相手してくれないから寂しいなあ」

……。それはレイがどうせお父様に学習状況を報告しているだろうから話すことなんてないし、女性である以上父親に自分の恋の相談とかできるはずがないのだ。

って、そんなこと言えないし……。

「みんなどこのご家庭でもその様な感じらしいですよ。気にし過ぎないほうがいいかと」

ひきつった笑顔でシーラは答えた。事実、シーラがユーデン国王宮の貴族令嬢たちと手紙をやり取りするのだが、「父親ウザい」「誰か良い人いたか聞いてくるから、会話のたびにしんどい」と書かれている。

最近では花がついた小枝を添えた羊皮紙に括り付けて、羊皮紙自体に香水をしたためることが流行している、そんな手紙に、乙女の愚痴がつづられているとは思いもよらないだろう。

その父親代表として国王の愚痴も続いた。

「そうは言っても、親子の会話で愛を固めたいんだがなあ。わかってくれないから、おじさん残念なんだよ」

おじさん二人はうんうん。と頷くが、シーラにとっては

いや、そこが暑苦しいのよの一言であった。

「妻を先立たれて片親で生活しているから、不憫な思いをしていないか心配だからな……。ついつい、口をはさんでしまうんだ」

………。

隣にいるカルシス様も黙って父が話す言葉を聞いていた。

「妻とそっくりな娘を見ていると、いつかこの娘(こ)も、同じく短命の生涯になるのではとな」

シーラの母親は28歳という、あまりにも若くで生涯を閉じている。病気ではなく、突然死する者も多いので、片親が子供の面倒をみることも多かった。

「娘も使命を持って生まれてきてしまったから、誰知らずと狙われやすいから鍛えたら、いや、強すぎる娘になってしまった。ハハハハ」

使命……。女王のことかしら。

「いやあ、長話すると喉が渇くなあ。あ、それと、君、チェスできるかな?次は相手してくれ」

げ。チェスしたら試験が長引くじゃない。

「いえ、私は、あいにくチェスを知らないので……」

「まかせなさい。私が教えて進ぜよう」

「うん、ぜひとも君、教えてもらいなさい」

ニッコリ笑う国王達だった。


結局、3回もチェスの対戦を行ったところで王妃様のお呼びがかかり、国王である父親からは気に入ったから、ここに滞在する間は君に注文することにしようと会いr難くもないことまで言われて、ようやく離れることができた。

「どうしてもっと早く声かけてくれなかったのかしら。父の愚痴まで聞かされて一番キツイ試験だったわ」

シーラ達は既に王宮を離れ、自分たちの部屋がある塔へと戻っていた。

「まあまあ、試験は合格貰えましたでしょ?王妃様から」

「そういえば、レイは私が試験受けている間、どこにいたの?」

「秘密の花園ですわ」

……。何となく、長年付き添ってきたからわかるのだが、あえて何も言わないシーラだった。

多分、またあっちに行ったんだろうけど、もう体力ないし、早く寝よう。

シーラは諦めが早かった。



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