8.定例会議



そして、いよいよ定例会議が始まった。貿易のお互い利益が均一になるように租税を見直したり、運河を経由しての国同士の船が衝突した際の法令案などを時間配分に従って議論していったのだ。

その間、シーラ達はメイドとして各国のテーブルの食事準備やら、定例会議の合間の休憩にティーカップに紅茶の配給と、何かと忙しくしていた。

そして、シーラは、メイドたちの各国の使者の噂話に耳を傾けて情報収集に精をだしていた。

「ねえ、聞いた?帝国の宰相、他の大臣たちに賄賂渡して、のし上がったらしいわよ」

「私は、皇族を支配するために何人も密偵抱えてるって。」

「え、ほんと?キュリーダ卿専門の軍隊があるって私聞いたわよ?」

と色んな噂が囁かれ、シーラ改め、ハイネは「そうなの?それで、それで?」と聞いてみるのだが、女スパイでないメイドたちは決まって、

”それ以上は知らないわ。ま、帝国の宰相様はあんなオーラ出してちゃ、何かやってそうよねー”と言うだけで、どれも噂の信ぴょう性は低かった。

全然、帝国の話が集まらない……。

キュリーダ―卿って、本当に人と最低限喋んないし、一般のメイドたちも怖がって噂は気になるが、できる限り、メイドを呼ぶ鈴が鳴らない限りは、あの部屋から出てこないようであった。

シーラは、キュリーダ―卿に会った時のことを思い出していた。


重鎮たちが会議している間、レイは甲冑のようにただ立っているだけで、もしもの時のために衛兵として待機していた。そして、定例会議中に出席している重鎮たちの小言の中に誰か帝国に関することを話してないか情報収集する為でもあった。

しかし、のちにレイは、衛兵として会議中立っていた、そのときのことを「ヒマ過ぎよーもう。おじさん達会議中に熱弁するけどさあ。」と、シーラに愚痴っていた。

「立派にお仕事してるんじゃないの?」シーラは聞いてみた。

定例会議なんて、大陸中の偉い人たちが来て会議するのだ。難解な難しい課題だって、解決できるように頑張って協議するはずだ。

それなのに、レイが暇ということを、シーラは疑問だった。

「そんなんじゃないわよ、お嬢。あなたもアレを、会議の様子を見ればわかるわよー!」

と言う。実際、シーラ達、メイドが定例会議が開かれる大広間の会議場に入るのは、会議の休憩中か、会議開始、終了後の準備、片づけのときである。

そのため、シーラは定例会議の周りをサポートしているだけで、会議の中まではみれてないのだ。

だが、レイの言うとうり、他のシュレイアやサスティス、父であるユーデン国王にもレイが言っていた「会議がヒマ」だということを話すと、一同、同じように「仕方ない」ということだけだった。

「なんで会議がヒマなのよ?」シーラは聞いてみた。

「考えてみろよシーラ。たとえば、あそこの席で休憩しているおじさん」

サスティスが指さすのは、隣国の外交大臣だ。

「あそこの国は、今年雨量の災害があったろ?」

「え、ええ」

「雨量の災害で農作物が高くなってんだ。だから、貿易取引で税金がアップされると、元から高い値段の上に税金も高くなったら我が国の商品は買ってもらえなくなる」

………てことは。

「だから、貿易の租税を上げる問題で、反対してんだよ」第二王子サスティスが結論を教えてくれた。

「まだ、あんぞー。反対にあの外交のおっさんの、隣国の隣国は逆に豊作だ。だから、租税が高くなると自分の国の商品が高く売れて儲けれるからな。賛成側なんだ」

………。なるほどね。

「大変だぜー。あの二国間の仲裁に入るの」

「あー、確かに。災害で苦しんでいる民のために、税金を下げてやろうという慈悲はないのですかなと言ってなー。すると、反対に我々の民だって豊作になるよう頑張ったんだ。その努力をあなた方の国は踏みにじるのか!とか言って、決闘しそうだったもんなあ。テーブル乗り出してにらみ合いする二人の大臣押される若者にはきついよ」

………大変なのね。

「結局は自分の国の利益を守るために、災害で被害あったから租税を下げて欲しいとか。反対に、他の国は我々は昨年、国境の治安を護るため他の国よりも大勢の金を寄付した。そのためにも我が国の農産物を沢山買って頂かなくては。とか、ばっかり。飽きるぜー」

とシュレイア、サスティスもお疲れのようだった。

どうりで、レイが”お偉いさんの残り少ない残りの髪の毛を、ひたすら数えるしかすることしかしてなかったわー”と話していた理由がわかったシーラだった。

シーラは呆れながら兄弟の話を聞いていたが、まあ、そうゆうもんよね。会議って。

「けど、キュリーダ―卿もやっぱり変な感じだよな」

第二王子サスティスが呟いた。

「ああ、それ俺もは思うなあ」第二王子もサスティスに同意した。

「?何が変なの?キュリーダ―卿のどこが変なのよ。見た目どうり怖そうな人じゃない」

「違うよ。見た目じゃなくて、俺たちが言ってるのは、キュリーダ―卿の会議中での発言なんだよ」

サスティス達がいうには、キュリーダ―卿は議題が上がると、羊皮紙片手に、帝国としての意見を述べるのだが、他の国から反対意見が出て、帝国としての意見を述べるよう言われても、「明日、回答します」とだけ、発言し、ほとんど発言しないという。そして、必ず羊皮紙を持って弁論をすると。

「けど、反対意見を言われても、その場では良い、言い返しの言葉が見つからないから、翌日回答を答える国も多いから、別に帝国側だけが目立つ。って、訳でもないんだ」

「たしかに、あの帝国なら、怪しく見えるわね」

「そうなんだよ。けど、父である国王に言っても、キュリーダ―卿は定例会議中は、いつもあんな感じだと言うんだ。そりゃあ、俺たちよりも参加したことある父上たちは見慣れちゃってるだろうけどな」

「頭が切れる、帝国を自分一人で動かしているという宰相にしちゃあ、反論する発言を翌日に言うなんて、行動が遅くみえるんだよなー。あんな広大な土地を持ってるんだから、すぐに処理しないと、仕事が山のようになるにきまってるぜ」

「サスティス、お前はもっと自分の仕事をした方がいいと思うぞ。あと、お前の山のような未処理の仕事は決して多すぎてないからな?お前が遊び過ぎてるんだ」

「あーーー、やっぱし?」第二王子は苦笑いしながら兄の言葉を聞いていた。

そして、シーラはこのシンの兄たちの言葉がとても印象にのこったのであった。

結局、レイも情報は無し。カルファトも、シンも会議中真剣に参加することしかできなかったようだし。パーティーまでには、帝国の考えてることがわかるのかしら?


そして、シーラ達の空元気とは裏腹に、不幸の連鎖は続いた。王国内の王妃専属、女スパイの一人が殺されたのであった。

「どういうことだ?これで、二人目だぞ」

再び、作戦を知っているコンフォート国夫妻、ユーデン国王、レイ、カルファト、そしてシン、シーラ、第一・第二王子も再び集結したのであった。

「これ以上死人を出さないためにも、ベテラン勢だけ残して、若手の密偵は下がらせているらしいのですが、敵は会議中でも動いている……ということでしょうか?」王妃は息を潜めて言った。だが、この問いに答えられる者はいなかった。あまりにも帝国に関する情報が少ないのだ。予測が難しかった。

結局、大きな変動はなかった作戦だが、いよいよパーティーの最終戦へともつれ込むしかないようであった。










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